学校では評価されにくいようなオモシロが発掘される場所にしたい 岩井秀人が語る「なむはむだはむLIVE!」

岩井秀人、森山未來、前野健太によるユニット・コドモ発射プロジェクトが、7月10日に「『なむはむだはむ』LIVE!」を開催する。「なむはむだはむ」は“子供が書いた台本を大人の手で作品に昇華する”シリーズで、これまでに舞台版と、テレビ版(NHKの「オドモTV」内「オドものがたり」)が制作された。シリーズ初の“ライブ版”は、どんな内容になるのか?

また7月10日から9月にかけては、Amazon Prime Video チャンネル内日本映画NETにて「特集 岩井秀人」が展開。「なむはむだはむ」創作の裏側に迫ったオリジナルドキュメンタリーや、「ヒッキー・カンクーントルネード」「て」「夫婦」といった過去の名作が多数配信される。本特集では、そんな注目を集め続ける作家・岩井秀人にインタビュー。「なむはむだはむ」シリーズを通して、森山や前野、そして子供たちから受けた影響は? さらにクリエーションに対する現在の思いに迫る。

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 藤田亜弓

今回はバンド形式で!

──7月10日に「『なむはむだはむ』LIVE!」が開催され、その模様がAmazon Prime Video チャンネル日本映画NET・LINE LIVEにて生配信されます。今回はライブ版とのことですが、音楽寄りの内容になるのでしょうか?

「なむはむだはむLIVE!」ビジュアル

そうです。これまでは僕や(森山)未來くんの主戦場的な場所でやってきましたけど、今回はマエケン(前野)のところにお邪魔しようかなと。子供の原作を読んで「歌にしよう!」と思うものも多いし、僕は演劇、マエケンは音楽、未來くんは……ちょっと幅広すぎてよくわかんないけど(笑)、一応ジャンルの違いはありつつも、そこからはみ出しがちな人たちなので。それとやっぱり未來くんの歌が素晴らしいので、未來くんの歌を聴かせたいということも、今回の大きな目的です。未來くんに普通に「真面目に歌って」って言うと、本人の中でのハードルが高くて歌ってくれないんですけど、子供が書いためちゃくちゃな歌詞だったら、ちゃんと歌う不思議な回路の人なので。バンド形式でいく予定です。

──ミュージカルや音楽劇ではなくて、ライブなんですね。

そうですね。お話によってはクリエーションの過程でミュージカルになりかけたものもあるんですけど、“ミュージカル”って言ったときにイメージするものがマエケンだけヒドくて(笑)。まあ、できる人の審美眼にかなうものだけやっていくとどんどん固くなっていってしまうので、3人のうち誰もが得意じゃないことを、崩れ気味な感じでやってみたいなと。

──ピックアップするお話は、これまでのものと新作とが混ざる感じでしょうか?

はい。最初の舞台版でやったものから引っ張ってくるものもあれば、新作もあります。過去に上演したものは、そのままやるものもあるし、編成を変えたりバンド用に演出を変えるものもあります。

──岩井さんもバンドをやっていた時期があると思いますが、コドモ発射プロジェクトを始めたことで、楽器の鍛錬を積んだり、ということは……?

積まないようにしています(笑)。忘れないように弾く、くらいはしてますが、うまくなると演奏を意識しすぎるような気がして。もともと、子供にその場で物語を作ってもらうというむちゃな振りをしてる企画ですし、それを読んだ僕たちが思いついたことを作品にするわけだから、人に見せるからと言ってどこまでも整えようとするのは違うだろうと。どこか行き当たりばったりな瞬間、どうなるかわからない要素を毎回入れて、「事故った! どうする? なんとか次に行こう!」という部分を残しておきたいなと思ってます。

岩井秀人

つまりは、自分たちが面白いと思うものを作る

──舞台版の前年、2016年にコドモ発射プロジェクトが始動し(参照:岩井×森山×前野「なむはむだはむ」城崎でWIP開催「いいセッションだった」)、これまで約5年、断続的にクリエーションが続けられてきました。創作の手順は確立されてきましたか?

大きな枠組みとして、子供たちから引き上げた物語を僕が読んで、未來くんが動き、マエケンが好きなときに楽器を弾くという形が、一番手っ取り早いやり方だってことは3人共わかっています。だから僕とマエケンはすぐにそのやり方でやろうとするんだけど、未來くんが許してくれないですね……(笑)。それと、初めのうちはマエケンがまず発言していたけれど、最近は未來くんがまず何か言うことが多くなってきたかもしれないです。例えば未來くんが「これは能だな」って言うと、マエケンが喜んで動いて、なんとなくイメージができていく。そのせいか、年々未來くんが自分の身体よりマエケンの身体のほうが好きって方向に傾いているので、そうなり過ぎないようにしてるんですけど(笑)。

──子供たちとのワークショップでは、まず岩井さんが中心になって参加者全員で1つの物語を作り上げ、その後、子供たちが各自で物語を作っていきます。お話を考えているときの子供たちの表情も、それを聞く岩井さんの表情も、とても生き生きしていましたね。

ワークショップは楽しいですよ。最初はみんなで物語を数珠つなぎにしていくんですけど、「やっぱりそこか!」って展開もあるし、まったく整合性が取れないような展開になることもあって、でもどうやっても物語ってつなげられないことはないんです。

──これまでいろいろな子供たちに会ってきたと思いますが、印象に残っている子はいますか?

岩井秀人

タイトルになった「なむはむだはむ」を書いた、あきとくんですね。パッと見は髪が長くてかわいくて、服装も女の子にしか見えなくて、でも話し始めると男の子で。だいぶ歪みのある話を書くんですけど、僕らの中で採用率がすごく高かったんですよ。最初に出会ったときは小学校の1・2年生だったんですが、その1・2年後にあきとくんのお母さんから連絡が来て、「最近も話を書いているけど、ちょっと変わってきたので読んでもらえますか」って言われて。読ませてもらったら、ファンタジーの部分はキープされているんだけど、人と違うことを責めるキャラクターが出てきて、それに対して主人公が反論するようなテキストも織り込まれていたんです。彼は、こうやって書くことで現実に闘う準備をしてるんだなと思ったし、その一方で、ただ興奮のまま描いていたファンタジーの世界に現実世界が入り込んできているのを感じて、ちょっと怖くもあって……。だから僕の中ではよく、あきとのことは意識しますね。「あきとがどこかで見てる」って。

──子供たちが書いたお話には、現実や大人のことを冷静に、俯瞰して捉えているものも多く、そんな目線を持った子供たちが、いわゆる“子供向け”と言われる本や舞台を観て、何を感じているのかなと思ってしまいました。

そうですよね。世の中が“子供”と呼んでいるイメージと、全然違う子もいますね。なので、その射程感は大事にしてます。一番最初に未來くんと話したときも「子供向けって言いながら、子供も興味が湧かないものを作っていることが多いのでないか。そういう子供向けだけは避けよう」という話になったんです。つまりは、自分たちが面白いと思うものを作る、ってことなんですけど。

──今回は日本映画NETで配信されますので、舞台版・テレビ版とは異なるお客さんにも届きそうです。

それはありますね。僕たちもそれを期待してて。これまで全然この企画を知らなかった人が観てくれたらいいなと思います。