3年に1度のダンスフェスティバル、「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA」がこの夏、横浜各地にて開催される。バレエあり、コンテンポラリーあり、ストリートありのオールジャンルを対象にしたダンスの祭典で、予定プログラムは200超。その全貌を探るべく、ステージナタリーでは「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA 2018」を特集する。フェスティバルディレクターのコンドルズ・近藤良平と東京ゲゲゲイ・MIKEYの初対談、新作「SONAR」を手がける森山未來のインタビューと、旬なアーティストたちの生の声からダンスの現在に迫る。
文 / 熊井玲
ボーダーを超えるラインナップ
国内外の“新しいもの”が集まる街、横浜。歴史的に見ても、横浜は1859年の開港以来、鉄道やガス灯、牛鍋、アイスクリンなどさまざまな物の“発祥の地”として時代を先取りしてきた。また文化的な意識も高く、1996年にスタートした「横浜ダンスコレクション」を筆頭に、市内のさまざまな劇場で、ダンスや舞踊、舞踏作品が毎夜上演されている。そんなダンスの“下地”もあり、「Dance Dance Dance @ YOKOHAMA」は、2012年に初開催されて以来、3年ごとに規模を拡大しながら行われ、今年が3回目となる。今回は“躍動する横浜を見にいこう。”をキャッチコピーに掲げ、横浜の夜景を背景に繰り広げられる野外バレエ公演や国内外の旬なダンサー、振付家たちによるステージ、一般参加者によるダンスイベントなど、幅広い演目を繰り広げる。
また今回はフランスのリヨン・ダンス・ビエンナーレ芸術監督でもあるドミニク・エルヴュと、コンドルズの近藤良平が二人体制でディレクターを務めることにも注目だ。
インターナショナル・プログラムを担当するエルヴュは今回のプログラムが2つの軸から成っていると語り、その2軸を「マース・カニングハム、ウィリアム・フォーサイス、アクラム・カーンといった20世紀と21世紀の巨匠へのオマージュ。もう一つは、セシリア・ベンゴレアとフランソワ・シェニョー、マチュラン・ボルズ、ジャンヌ・ガロワ・カデル・アトゥといった、フランスの新世代のクリエーターの紹介です」と説明。さらに「私のアーティスティック・ディレクターの仕事のクライマックスは、日本とフランスの協働プロジェクト『トリプルビル』のクリエーションです」と述べ、日本とフランスの文化交流に、より踏み込んだコラボレーションを行うことを明かした。
一方の近藤は、過去2回のDance Dance Dance @ YOKOHAMAにも参加。今回は主宰するコンドルズをはじめ、自身の振付作品によるガラ公演を予定している。近藤は「音楽や美術の分野と同じように『ダンス』を中心に行うこの壮大な祭典を今年も開催できることは素晴らしいことです」と語り、「この地で『ダンス』という人間の根源的な営みが出現することは理にかなったすばらしい出来事であります。さあ皆さんもより身近になったダンスの世界に参加していただければと思います」と観客に呼びかけている。なお近藤は今回、童謡「赤い靴」をモチーフにしたオリジナル音源に振りを付け、オリジナルダンスを作成。「今年のDance Dance Dance @ YOKOHAMA 2018を楽しんでもらうためにもぜひ、この『ダンスの贈り物』が皆さんに届くことを願います」とコメントしている。
また「ダンスはあらゆるボーダー(境界)を超える」という視点から、ダンスのジャンルはもちろん、プロとアマチュア、男性と女性、大人と子供、障害の有無、国境などあらゆる“ボーダー”を超越した、ダンスの現在、そして未来をも展望する内容を目指す。さあこの夏は、ダンスで一色の横浜で、観よう、踊ろう、楽しもう。
-
- 出演
- 東京バレエ団
- 作品紹介
- フェスティバルのオープニングを飾るのは、東京バレエ団による野外バレエ。横浜の夜景をバックに、3作品が披露される。洋楽器とトムトムの演奏に乗せて繰り広げられるフェリックス・ブラスカ振付「タムタム」と、同バレエ団の人気作品であるウラジーミル・ワシーリエフ演出・振付「ドン・キホーテ」より第3幕、そしてラヴェルの楽曲に合わせて繰り広げられるモーリス・ベジャール振付「ボレロ」。どれも見逃せない。
-
- 出演
- レ・ロマネスク ほか
- 作品紹介
- 子供から大人まで、縁日を楽しむように気軽にダンスを楽しめる、1日限定の無料ステージ。パリで結成されたポップ音楽ユニット、レ・ロマネスクらが出演する。
-
- 出演
- コンドルズ
- 作品紹介
- 今年結成22周年を迎える、近藤良平率いるコンドルズ。学ラン姿をトレードマークにダンス、生演奏、人形劇、映像など多様な表現を繰り広げる彼らが、過去作品の名場面を集めたオムニバス形式の作品を、国内では初となる野外ステージで展開する。
-
- 出演
- 平山素子、大前光市、近藤良平 ほか
- 作品紹介
- 近藤良平の振付作品によるガラ公演。2016年のリオデジャネイロ・パラリンピックで注目を集めた義足のダンサー・大前光市と振付家・ダンサーの平山素子が出演する「intermezzo-本気のはしやすめ-」、関東学生舞踊連盟有志による「みんなのうた」、「ねこ背」ほかが上演される。
-
- 振付
- アクラム・カーン
- 出演
- デニス・アラマノス、ニコラス・リッチーニ
- 作品紹介
- バングラデシュ系イギリス人振付家のアクラム・カーンによる、子供から大人まで楽しめるダンス作品。バングラデシュとイギリス、2つの文化を背景に持つ少年がダンサーを夢見て旅する様を描いた、自身を彷彿とさせる内容になっている。映像や照明、音楽を駆使した幻想的な作品世界を楽しもう。
-
- 振付
- カデル・アトゥ、ジャンヌ・ガロワ、東京ゲゲゲイ
- 出演
- Hayate、Jona、Katsuya、Sakyo、Takashi / 東京ゲゲゲイ
- 作品紹介
- ディレクターのドミニク・エルヴュによるプログラム作品。「ストリートダンスと芸術ダンスの融合」をキーワードに、日仏のヒップホップアーティストの交流を目指す。高い芸術性で知られるカデル・アトゥ振付の新作と、若手振付家ジャンヌ・ガロワ振付の新作「リバース」にオーディションで選出された5人の日本人ダンサーが挑むほか、東京ゲゲゲイによる「東京ゲゲゲイ女学院」が上演される。なお本作は横浜で世界初演されたあと、パリの国立シャイヨー劇場などフランス13都市をツアーする。
-
- 振付
- DAZZLE
- 出演
- DAZZLE、公募ダンサー
- 作品紹介
- “すべてのカテゴリーに属し、属さない曖昧な眩さ”をスローガンに掲げ、ストリートとコンテンポラリーを融合させたダンス作品を生み出すDAZZLE。今回は若手ダンサーを交え、「命はどこから始まり、愛はどこにたどり着くのか?」をテーマに作品を立ち上げる。
-
- 出演
- バレエ・ロレーヌ
- 作品紹介
- フランス・ナンシーを拠点とする同バレエ団が、コンテンポラリーダンス3作品を引っさげ来日。今年生誕100周年を迎えるポストモダンダンスの巨匠マース・カニングハム振付の「SOUNDDANCE」、コンテンポラリーダンスの第一人者ウィリアム・フォーサイス振付の「STEPTEXT」、鮮烈な作風で注目を集める気鋭の若手、セシリア・ベンゴレア&フランソワ・シェニョー振付の「DEVOTED」がラインナップされた。
-
- 振付
- マチュラン・ボルズ
- 出演
- マチュラン・ボルズ、エディ・タベ
- 作品紹介
- KAAT DANCE SERIES 2018にラインナップされている本作。リヨンを拠点に活動するサーカスアーティストのマチュラン・ボルズが、アクロバットの技とダンスを融合させたストーリー性の高い作品を立ち上げる。今回は、大車輪を使った「ラ・マルシュ」とエディ・タベとのデュオ「アリ」の2作品を上演する。
-
- 振付・出演
- 森山未來、ヨン・フィリップ・ファウストロム
- 音楽・出演
- 及川潤耶
- 作品紹介
- ダンサー、振付家、俳優として活動する傍ら、平成25年度には文化庁文化交流使として1年間イスラエルに留学するなど、独自の展開を繰り広げている森山未來。今回は、ノルウェーの振付家・ダンサーのヨン・フィリップ・ファウストロムと、作曲家で音響空間作家の及川潤耶とコラボレートし、音や物質の持つ“振動”を軸にした表現に挑む。なお本作はノルウェーと横浜でのクリエーションを経て、今回が世界初演となる。
-
- 「横浜ダンスパラダイス」
- 2018年8月11日(土・祝)、18日(土)、25日(土)・26日(日)、9月1日(土)、8日(土)、15日(土)・16日(日)、22日(土)・23日(日・祝)・24日(月・振休)、30日(日)
- 神奈川県 伊勢佐木町商店街 イセザキ・モール1・2St.、クイーンズスクエア横浜クイーズンサークル、グランモール公園 円形広場、グランモール公園 美術の広場、JR桜木町駅前広場、たまプラーザテラス フェスティバルコート、戸塚駅 東口ペデストリアンデッキ、日産グローバル本社ギャラリー、日産スタジアム 試合会場外イベントステージ、MARK IS みなとみらい 1F グランドガレリア、三井アウトレットパーク 横浜ベイサイド、元町ショッピングストリート、山下公園 バルコニー、横浜駅 新都市プラザ、ららぽーと横浜、ランドマークプラザ 1F サカタのタネ ガーデンスクエア ほか
- 作品紹介
- 年齢や性別、障害の有無やプロアマなどを問わず行われる本ダンスイベント。アイドル、アフリカン、阿波踊り、“踊ってみた”、コンテンポラリー、ジャズ、ストリート、ソシアル、タップ、チアリーディング、日本舞踊、バレエ、パントマイム、ヒップホップ、フラメンコ、ベリー、盆踊り、よさこい、“ヲタ芸”などオールジャンルのダンスが対象となり、公募で集められた出演者たちが、横浜各地で踊りを披露する。
※このほかダンスワークショップや関連公演、関連イベント、連携事業、パートナー事業あり。全体のプログラム数は約200。
2018年8月7日更新