OSK日本歌劇団「へぼ侍」が再演へ、翼和希は大阪公演完売に「経験がございませんで」と恐縮

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今年8月に大阪で初演された、翼和希が主演を務めるOSK日本歌劇団「へぼ侍~西南戦争物語~」が、来年1・2月に再演される。本日11月30日に東京で記者懇談会が行われ、出演者の翼と唯城ありす、脚本・演出を手がけた戸部和久が登壇。すでに大阪公演の劇場チケット完売という事実に翼は「経験がございませんで……」と恐縮しつつ、公演に向けて思いを語った。

左から唯城ありす、翼和希、戸部和久。

左から唯城ありす、翼和希、戸部和久。

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戸部和久

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坂上泉の「へぼ侍」(文春文庫)をミュージカル化した本作では、没落士族の再興を目指して、西南戦争に志願する“へぼ侍”こと志方錬一郎の姿が描かれる。歌舞伎作品の脚本を多く手がける戸部にとって、本作は自身初となるミュージカル。「日本人が日本語でミュージカル『ハミルトン』のような作品を作るとどうなるのか、という実験の第一歩を記すような、泥臭いガッツと生命力あふれるOSKさんじゃないとできないものを追い求めたのが『へぼ侍』で、かなり無茶振りをした」と振り返る。

翼和希

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翼は演じる役について「錬一郎は一番若くて柔らかくて何色にでも染まることができる時期に、憧れていた戦場で恐怖や葛藤、死といった衝撃的な出会いをしてしまう。その錬一郎の感情の振れ幅をよりリアルに表現したいと思って演じました。錬一郎は人との出会いの中で自分の戦い方を見つけていきますが、その過程がとても魅力的。再演ではそこをよりブラッシュアップしたいですし、本番までの時間で作品を客観視し、磨くべき部分を磨いていきたいです」と語る。一方、唯城は、戦争によって家を失い、家族と離れ離れになった熊本出身の村娘・鈴を演じる。「鈴は、強さと明るさと天真爛漫さを持った女性。希望も未来も欠けていた中、鈴を真っ直ぐに見つめてくれる錬一郎さんと出会い、“明日も生き続けたい”と思えるようになるのですが、鈴のそんな気持ちを大切に演じたいと思っています」と述べる。

唯城ありす

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また、戸部からの“無茶振り”について問われた唯城は、「どれもグッと心の奥底に刺さることで、鈴に近づくために必要な道標でした」としながらも、楽曲の難しさについて言及。「『ハミルトン』式の歌で、いつもより高めのキーの中で鈴を表現する、これが“歌劇を超えたミュージカル作品”を目指す、戸部先生からの挑戦だったのかなと思います」と分析。それに対して戸部は、「『ハミルトン』式というのは、セリフと歌の境目をなるべくなくすことなのですが、歌舞伎でもセリフを音として聞かせるところがあるので、それに近い形で歌に入っていけるのではないかと。また、作曲が雅楽の先生なので、日本音階がうまく取り入れられていて、2人のシーンでは『青海波』という雅楽のメロディが使われている曲もあるんです」と明かすと、翼は「知りませんでした」と言い、歌唱についていかに技術的に苦戦したかを力説。稽古期間は「青春のようだった」と創作現場の熱量を振り返った。

涙を浮かべながら、「ブギウギ」の反響に感謝を述べる翼和希。

涙を浮かべながら、「ブギウギ」の反響に感謝を述べる翼和希。[拡大]

NHK連続テレビ小説「ブギウギ」に出演し、一躍知名度を上げた翼。撮影と並行して本作の稽古を行っていた翼の姿に、戸部が「視野が広がって成長していく感じを受けていた」と告げると、翼は目を見開いて「ありがとうございます……! 」と言い、「上級生の方がいつも『(舞台上で起こることは)すべて初めてのことだよ』と教えてくださっていたのですが、頭ではわかっているつもりでも、どこか腑に落としきれない部分があったんです。新しい環境で、刺激をいただくことでそれが少し見えてきて、自分の中の変化につながりました」と微笑む。さらに、OSKが世間から注目を浴びて「うれしいことばかり。一番は劇場にお客さまがたくさん来てくださったことです。私自身、それを目標に挑んだので、結果を目の当たりにしたときは本当にうれしかった」と声を弾ませる。「おこがましいかもしれませんが、皆さまにもっと喜んでいただける舞台をお届けすることが、このご恩返しになるのかなと。劇団を100年守り抜き、闘い続けてくださった先輩方やこれまで支えてきてくださった皆さまにも見ていただけていたらうれしいなと、心から思います」と声を震わせた。

左から唯城ありす、翼和希。

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日本独自の文化として育った歌劇の魅力について、戸部は「衣裳1つにしても歌劇で見せるカッコ良さなど、100年分の積み重ねが今ここにある。『へぼ侍』は、日本が西洋の文化に触れて新たな時代が始まる転換点、そして物語の最後には“輝きの中に影がある”時代を描いている作品です。もう一度歌劇を新しく組み立て、日本の文化としてさらに続いていくようにという願いを込めて作りました。そんな作品に挑戦できるのは、OSKさんだからこそ。OSKさんと共に作品も一緒に成長していけたら」と語る。唯城は「OSKは来年102年目を迎えますが、100年続いた伝統や温かみがある、今のOSKの魅力を伝えられるのは在団員です。精一杯、力を心を込めて皆で舞台を続けていきたいと思っています」、翼は「100年目は“感謝”の年、101年目は“新たな一歩”の年、そして102年目は“継続”の年。進化がなければ継続はありませんので、時代の変化と共に歌劇も進化していけるよう、これまでの教えを守り、受け継ぎながらも、しっかり前を見据えてOSK日本歌劇団を継続していけるように精進して参りたいと思います」と言葉に力を込め、場を締めくくった。

公演は来年1月18日から22日まで大阪・扇町ミュージアムキューブ CUBE01、2月1日から4日まで東京・博品館劇場にて。なお、1月19日公演ではZAIKOにてライブ配信が行われる。

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OSK日本歌劇団「へぼ侍~西南戦争物語~」

2024年1月18日(木)~22日(月)
大阪府 扇町ミュージアムキューブ CUBE01

2024年2月1日(木)~4日(日)
東京都 博品館劇場

原作:坂上泉「へぼ侍」(文春文庫)
脚本・演出:戸部和久
出演:翼和希 / 天輝レオ、壱弥ゆう、唯城ありす、せいら純翔、知颯かなで、柊湖春、南星杜有、凰寿旭、鼓珀響、奏叶はる、ことせ祈鞠

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読者の反応

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甘栗@今年も劇場客席に生息中 @miso_amaguri

再演決定おめでとうございます!

OSKも戸部さんもイケイケだなあ https://t.co/ly9O3BcYF4

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