音楽劇「ある馬の物語」が、6月21日に東京・世田谷パブリックシアターで開幕した。
「ある馬の物語」は、ロシアの文豪レフ・トルストイの小説を舞台化した作品。ホルストメール(
本作は2020年に上演予定だったが、新型コロナウイルスの影響で公演中止になっていた。初日を終え、上演台本・演出の
また成河は「白井さんを中心にカンパニー全員で、外堀を埋めるように大枠を作る作業を積み重ねて、まずは目指していた器の形が見えてきました。次に、この器に、これからお客様と一緒にどんな中身を詰めていくか。それがこれからの課題です」と述べ、「これをお読みになっているあなたが24歳以下なのであれば、絶対に足を運んで欲しい作品です。世田谷パブリックシアターのU24(アンダー24)と、高校生以下であれば一般料金の半額でご観劇いただけます。この、難しいことは一切ない、必ず何か生きる上での刺激を得ることができる作品を観ていただけます。もちろん、24歳以上のみなさんもお待ちしています。必ずびっくりさせますから」と観客にメッセージを送った。
上演時間は休憩を含む約2時間25分。東京公演は7月9日まで行われ、その後22・23日に兵庫・兵庫県立芸術文化センターでも上演される。なお白井、成河のコメント全文と、訳詞・音楽監督の国広和毅、出演者の別所、小西、音月のコメントは下記の通り。
白井晃コメント
三年越しの初日の幕が開け、素直にうれしいです。
この作品は、観客の皆さんと共に作る作品。初日の客席の皆様が加わったことで、伝わることが明確になった気がしています。
トルストイが伝えようとしたメッセージが今の私たちのフィルターを通して、しっかりと伝わっていることを願っています。
成河さんのホルストメールだからこそできる表現、別所さんの公爵だからこそできる表現、小西さん、音月さんだからこそできる表現がたくさん盛り込まれているので、無事にそれが形となったことに喜びでいっぱいです。キャスト・スタッフの総力でとても豊かな劇空間が生まれたように思います。
率直に、とてもほっとしています。たくさんの皆様のご来場をお待ちしております。
国広和毅コメント
ロゾフスキーさん作の歌をどうやってサックス4本で編曲するのか。また自分が新たに作曲した器楽曲とそれらをいかにして一枚の布に織り上げるか、悩みに悩んだ2ヶ月間でした。でも稽古プロセスでその二者の境界が消えて行くのを感じ、初日を迎えた今日、工事現場の足場から響き渡るサックスの音色と個性豊かな歌声はもはや誰のものでもなく、今ここで鳴っている切実な生命の息吹として創作の祝祭を彩っていると確かに感じました。最後にはお前は何をこれから建設するんだ、どう生きるんだ、と問いを突きつけられるような緊張感あふれる素晴らしい初日でした。
何と言っても生演奏ですからその音圧と即興性、公演ごとの変化もこれからとても楽しみです。
成河コメント
白井さんを中心にカンパニー全員で、外堀を埋めるように大枠を作る作業を積み重ねて、まずは目指していた器の形が見えてきました。次に、この器に、これからお客様と一緒にどんな中身を詰めていくか。それがこれからの課題です。あまり器を満たしきってしまうのは作品として違う。とは言え、空っぽの器のままでもいけない。
想像力という中身を、お客様と一緒に詰めていって、最後にトルストイのメッセージがどのように響くのか。それをどう感じ、役立てていくのか。その使命は、実演家も観客も対等に担うのがこの作品だと思います。
実は、これだけ舞台と客席が密接な空間なのに、こんなに良い意味でお客様が気にならない舞台は久しぶりです。第四の壁とでもいうのでしょうか、客席との間にある壁をぶち破る演技を求められることが多いのですが、今回は白井さんとセッションを重ねて、あえてモノローグでもそれを避け、最後の最後に初めて客席と目が合う。そんな演技がなんだか自分にとって新鮮です。
これをお読みになっているあなたが24歳以下なのであれば、絶対に足を運んで欲しい作品です。世田谷パブリックシアターのU24(アンダー24)と、高校生以下であれば一般料金の半額でご観劇いただけます。この、難しいことは一切ない、必ず何か生きる上での刺激を得ることができる作品を観ていただけます。もちろん、24歳以上のみなさんもお待ちしています。必ずびっくりさせますから。
別所哲也コメント
お客様と一緒に舞台は育つのだなと初日を終えて改めて感じました。2020年からの3年という時間が巡り合わせや縁を作ってくれて、今この時期に上演する意味を皆様も感じてくださったのではないかと思います。所有するとか奪い合うとか、人間が持っているそもそものエゴが馬から見えてくるという、とても面白い作品です。
この作品自体の構造がそうなのかもしれませんが、永遠に完成を目指すという、いい意味での現在進行形の中を、白井さん、出演者の皆さんと一緒に、船で言うとオールを漕ぎながら海原を前進していくような感じがしています。俳優としてまた新しい自分の表現を見つけられる現場です。
皮を剥いても剥いてもその先にまだ何かがあるような作品です。決して難解ではないので、楽しく観ていただけたらと思います。胸に迫る深いメッセージが一番底にありますので、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
小西遼生コメント
白井さんの遊び心が満ちた演出、アクティングエリアの広さ、トルストイのメッセージとが折り重なるこの舞台。実際にお客様の前でやってみないとどう受け止めていただけるか分からない緊張感を持って今日を迎えましたが、とても良い初日を終えることができたとほっとしています。
この物語は、馬の視点を通し、人間の業を時にはおもしろく、でも真摯に、説教くさくならずお届けできる作品。舞台と客席とがフラットで、半円形に迫り出しており、客席芝居も多く、舞台だけでなく劇場全体が「ある馬の物語」の世界観を築いています。こんなにイマーシブな演劇体験はそうそうできないと思うので、多くの皆様に体感していただきたいです。
日常では得難いパーツを皆様にお届け出来るのが演劇の醍醐味だと思います。劇場でお待ちしています。
音月桂コメント
二か月弱という期間があっという間に感じるほど、濃密な稽古期間を重ねてきました。いざ舞台に立ってみると、この物語や演出の奥行や立体感、具体的なイメージを感じながら、リラックスして舞台に立つことができました。普段、とても緊張してしまう私が、こんなに落ち着いて初日を迎えられたのは初めて。それは家族のように信頼し、支えあっていけるカンパニーと、日々変化を与えてくれる白井さんのマジックのおかげです。
トルストイ原作というと難しそうと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、現代の私たちにも通じるテーマ性と、白井さんの演出、国広さんの音楽とうんさんのムーブメントで、世代を問わずお楽しみいただける作品に仕上がっていると思います。舞台と客席とが地続きに感じるような劇空間で、私たちと共に、「ある馬の物語」の世界を楽しみながら創っていただけましたら幸いです。
音楽劇「ある馬の物語」
2023年6月21日(水)~7月9日(日)
東京都 世田谷パブリックシアター
2023年7月22日(土)・23日(日)
兵庫県 兵庫県立芸術文化センター
原作:レフ・トルストイ
脚本:マルク・ロゾフスキー
音楽:マルク・ロゾフスキー、
詞:ユーリー・リャシェンツェフ
翻訳:堀江新二
訳詞・音楽監督:国広和毅
上演台本・演出:
出演:
※吉崎裕哉の「崎」は立つ崎(たつさき)が正式表記。
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さざんかQ @sazankaQ
7月は(オレ的には)山ほど芝居を観るんだが、その中の目玉のひとつがこれ。去年あたりから継続的に成河芝居を観ている気がする‥‥(そして一度として失望させられた事がない)。 https://t.co/R8nqKcHPE4