映画ナタリー Power Push - ハマ・オカモトとオカモトレイジが語る「シング・ストリート 未来へのうた」

ミュージシャンもしびれる青春音楽映画

お兄ちゃんのサイドストーリーが泣ける(レイジ)

──劇中では、コナーの兄でロックオタクのブレンダンがメンター(助言者)として重要な役割を果たします。

「シング・ストリート 未来へのうた」より。

レイジ お兄ちゃん、完全にキーパーソンですよね。

──最初、カバー曲ばかり演ってるコナーに「ロックン・ロール・イズ・ア・リスク!」と言って、笑われてもいいからオリジナルを演るのがロックなんだと励ましたり。要所、要所でジョー・ジャクソンとかザ・ジャムのアナログ盤を渡してくれたり。

ハマ 棚から抜き出してくるアナログ盤のセレクトが、また絶妙でした。音楽好きならジャケットだけで、その時代の空気感とシング・ストリートというバンドの上達具合がピンとくるようになっている。

レイジ ジョー・ジャクソン、俺らも学生時代にがんばってカバーしてました。映画に出てくる「ステッピン・アウト」のようなジャズっぽい曲じゃなくて、1stアルバムに入ってるもっとパブロックな曲でしたけど。

ハマ やったね。

レイジ あのお兄ちゃんのサイドストーリーが、また泣ける。最初は気のいいキャラクターに見えて、実はいろいろな屈折を内側に抱えていたりして。

ハマ しかもそれが本気で音楽を愛してるからこその屈折で。映画全体は軽快なトーンなのにそこはライトにせず、正面から描いているところもすごいと思いました。

──お二人にも、ああいったメンター的な存在っていましたか?

レイジ どうだったかな。俺らは最初ビートルズやローリング・ストーンズのコピーから始めて、だんだんクリームやレッド・ツェッペリンを演ったりして。そこからレイジ(・アゲインスト・ザ・マシーン)や、レッチリ(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)などに進んで……。洋楽に関しては、バンドメンバーや仲間内でアルバムを貸し借りすることが多かったです。世代で言うと、グリーン・デイの「アメリカン・イディオット」がリリースされたのが中2のときだよね?

ハマ そうだね、中2のとき。僕らの世代は、レッチリにしてもいわゆる代表作がほぼ出切ったあとだったんです。なので、好きなバンドの新譜を待ちわびて買いに行ったという記憶だと、「アメリカン・イディオット」はすごくよく覚えています。

レイジ それと前後してN*E*R*Dの「フライ・オア・ダイ」や、ビースティ・ボーイズの「トゥ・ザ・5ボローズ」がリリースされて。……でも、よく考えると俺は中学時代にピアノを習いに通っていて、その先生の家の息子さんの存在は大きかった気がします。レッスンに行くといつもロックがかかっていて。N*E*R*Dは確かその家で知った。それで親にお願いして買ってもらいました(笑)。

ハマ 多かれ少なかれ、そういう存在は誰にでもいるってことですね。

実際に曲を作るシーンをきちんと描いている(レイジ)

──シング・ストリートという劇中バンドの成長スピードについては、いかがでしたか? 途中からすごい勢いでオリジナル曲を連発していきますけれど。

レイジ 14歳から15歳のときの吸収力はハンパないと思うので、俺は全然違和感なかった。

ハマ そこはやっぱり、映画の作りがうまいと思いました。僕は普段から細かいところが気になってしまうタイプなので。もし曲作りのシーンでつまずいたりしてしまったら、気になって話にまったく入っていけなかったと思います。でもそうならなかったのは……例えば、コナーの相棒になるギタリストの男の子がいますよね。

──マルチプレイヤーのエイモンですね。銀縁眼鏡の。

ハマ あの子のキャラクターがすごく効いてると思います。ひょうひょうとして普段は何を考えているのかわからないですが、コナーが「曲を作ろう」って遊びに来るとすぐ家に入れてくれたりして。

レイジ 胸にウサギを抱えてね(笑)。

「シング・ストリート 未来へのうた」より。

ハマ あの子が大の音楽好きで、実はソングライティングの才能を持っていることが劇中でさりげなく示されてる。(ジョン・)レノン&(ポール・)マッカートニーではないですが、たまたま会った友達がすごい才能の持ち主であってもまったくおかしくはないわけで。

レイジ わかる。あと、実際に曲を作るシーンをきちんと描いていたのもよかったのかもしれません。コナーとエイモンが「リドル・オブ・ザ・モデル」という最初のオリジナル曲を作るシーンもそう。コナーが書いてきた歌詞にまずエイモンがアコギでコードを付け、次はサビを考えて──という具合に細かく手順を追っていた。それがなかったら「え、こんないい曲、いつの間にできたの?」と思ってしまうので。

国が違っても生まれる前の話でもグッとくる(ハマ)

──なるほど。OKAMOTO'Sにもそういう時期ってありました?

ハマ もちろんありました。(オカモト)コウキの家にちょっとした半地下スペースがあって、朝から晩までずっと入り浸っていました。そういった経験も映画と近い(笑)。

レイジ ただ、少し矛盾してしまいますが、俺は「シング・ストリート」という映画は、実はバンドの成功物語になってないからいいと思う部分もあります。俺の中ではむしろ、1人の男子がバンドを通して大人になっていく、その瞬間を切り取った作品という印象が強い。コナーにしてもエイモンにしても、もしかしたら数年経ったら音楽なんてやめてしまうかもしれないけど……。

ハマ 確かに。そんな雰囲気もあるよね。

レイジ でも、もし彼らがプロになれなかったとしても、後先を考えずバンドに夢中になっていた時間が無意味だったということにはならない。そういう青春のきらめきのようなものを、きちんと捉えている映画だと思います。

ハマ 本気でバンドをやっていたら、こういう時間は誰にだってあると思います。売れる売れない、デビューできるできないなどではなく。だからこそ、国が違っても、自分たちが生まれる前の話であっても、グッとくるんでしょうね。

Blu-ray / DVD「シング・ストリート 未来へのうた」

「シング・ストリート 未来へのうた」
2017年1月18日(水)TSUTAYAだけでレンタル開始 / 2月2日(木)発売 / 発売・セル販売元:ギャガ / レンタル販売元:カルチュア・パブリッシャーズ
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ストーリー

1985年、不況下のアイルランド・ダブリン。14歳のコナーは、父親が失業したため公立のシング・ストリート校に転校させられる。学校では校長のバクスターと不良のバリーに目を付けられ、家では両親が夫婦喧嘩を繰り返す毎日。彼の救いはイギリスから発信される最新の音楽を聴くことだけだ。そんなある日、コナーはモデル志望の少女ラフィーナに恋をし、「僕のバンドのミュージックビデオに出ない?」と声を掛ける。あわててメンバーをかき集めたコナーは、兄ブレンダンの助言によりオリジナル曲とミュージックビデオの制作を開始。ラフィーナとの距離も徐々に近付いていくが……。

キャスト

コナー:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ
ラフィーナ:ルーシー・ボイントン
ブレンダン:ジャック・レイナー
ダーレン:ベン・キャロラン
エイモン:マーク・マッケンナ
バリー:イアン・ケニー

スタッフ

監督・脚本:ジョン・カーニー
音楽:ゲイリー・クラーク、ジョン・カーニー
主題歌:アダム・レヴィーン「ゴー・ナウ」

OKAMOTO'S(オカモトズ)

オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)の4人からなるロックバンド。バンド名およびメンバー名は、彼らが敬愛する岡本太郎とラモーンズに由来する。2010年5月に1stアルバム「10'S」でアリオラジャパンよりデビュー。2011年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '11」に初出演を果たし、10月には初のアジアツアーを開催した。2014年は8月にRIP SLYME、奥田民生らを迎えてコラボレーションアルバム「VXV」をリリース。2015年6月には岸田繁(くるり)のプロデュース曲「Dance With Me」と、「カップヌードル」CMソングの「Dance With You」を収録した両A面シングルをリリースした。同年9月に6thアルバム「OPERA」を、11月にシングル「Beautiful Days」を発表。2016年6月にシングル「BROTHER」をリリースし、12月21日には配信限定で発表された「Burning Love」のほか4曲が収録されたアナログ盤「BL-EP」を発売した。