映画ナタリー Power Push - ハマ・オカモトとオカモトレイジが語る「シング・ストリート 未来へのうた」

ミュージシャンもしびれる青春音楽映画

例えるならさいとう・たかをさんが描く銃器(ハマ)

──やっぱりカーニー監督自身がミュージシャンなので、音楽好きの観客が何に違和感を抱き、どこで冷めてしまうのかよくわかってるのかもしれませんね。

ハマ だと思います。例えるならさいとう・たかをさんが描く銃器のようなものといいますか。

レイジ はははは!

ハマ もし読者がガンマニアや軍事オタクだったとしても、絶対文句は言わせねえぞ、という空気というか(笑)。そういう意地がないとここまでの質感は作れないと思います。僕らのように重箱の隅をつついてばかりの人間が、ぐうの音も出ないわけですから。

レイジ 俺らひどいですからね。クリント・イーストウッド監督の「ジャージー・ボーイズ」を観ても、バックのベーシストが弾いているモデルはこの時代には出てないっす、と言っていたくらいですから(笑)。

ハマ 「ジャージー・ボーイズ」はドラマとしては素晴らしかったのに(笑)。職業病で、どうしてもそういうところに目が行ってしまう。だからこそ、ノーストレスで楽しめた「シング・ストリート」や「はじまりのうた」は心からすごいなと思います。

「シング・ストリート 未来へのうた」より。

レイジ ちなみに俺は、「ドライヴ・イット・ライク・ユー・ストール・イット」はサビ部分の歌メロのキーが、わざと抑えめになっているところが好き。

ハマ そうなんだ。

レイジ 普通ならボーカルのエモーションのピークをここに持ってくると思いますが、この曲ではあえてそれをやらず、コード展開の面白さで少しずつ聴き手を高揚させて。サビのところはリズムでガッと持っていってる感じがして。力業ではなくきちんと緻密に作ってあるというか、センスがいいなと思います。

ハマ その切ない感じがまた、物語の展開と合ってるよね。しかも既存の名曲を使ってそういう描写をやっているならともかく、それをオリジナル曲で成し遂げているということは、ミュージシャン的にはしびれるとしか言いようがない。映画的にも音楽的にも、どれだけ難易度の高いことをやっているんだと。

レイジ 音楽の感動を映画にするのは本当に難しい。「シング・ストリート」はその難しいポイントを、さりげなくすべて押さえていて。しかも音楽好きが「わかる、わかる」と内輪で満足するだけじゃなく、監督が描こうとしている青春感のようなものが万人に伝わるようにできている。もう天才としか言いようがないです!

左からハマ・オカモト、オカモトレイジ。

ハマ 要は音楽の一番きれいなところ、感動できるポイントというのは、絵面だけでは作れなくて、音楽そのもので語るしかない。そういうシンプルだけど一番難しいことをやっているのが、ジョン・カーニー監督だと思います。

レイジ 駄目だ、思い出したらまた泣きそうになってきた(笑)。

ハマ いや、この映画は絶対に評価されるべきです。実際、世界中で高く評価されているとは思いますが(笑)。これだけ褒めてもまだ足りないくらい、本当にいい!

キャラクター紹介

コナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)
コナー(フェルディア・ウォルシュ=ピーロ)
アイルランド・ダブリンに住む14歳の少年。両親の不仲や突然の転校に悩むが、ラフィーナとの出会いやバンド活動を通して成長していく。
ラフィーナ(ルーシー・ボイントン)
ラフィーナ
(ルーシー・ボイントン)
コナーが恋に落ちるモデル志望の女性。孤児で、児童養護施設で育った。年上の恋人がいるが、次第にコナーに惹かれていく。
左 / ブレンダン(ジャック・レイナー)
ブレンダン
(ジャック・レイナー)
コナーの兄。大学を中退して引きこもっているが、音楽、そして恋の師匠としてコナーを厳しくも温かく見守る。
エイモン(マーク・マッケンナ)
エイモン
(マーク・マッケンナ)
コナーのバンド「シング・ストリート」でギターを担当し、作曲も手がける。ウサギを飼っている。
ダーレン(ベン・キャロラン)
ダーレン
(ベン・キャロラン)
クラスで唯一、コナーに友好的な少年。バンドのマネージャーを買って出て、コナーとエイモンを引き合わせる。
バリー(イアン・ケニー)
バリー
(イアン・ケニー)
シング・ストリート校の不良生徒。転校してきたコナーに何かと言いがかりをつけ、暴力を振るう。

Blu-ray / DVD「シング・ストリート 未来へのうた」

「シング・ストリート 未来へのうた」
2017年1月18日(水)TSUTAYAだけでレンタル開始 / 2月2日(木)発売 / 発売・セル販売元:ギャガ / レンタル販売元:カルチュア・パブリッシャーズ
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ストーリー

1985年、不況下のアイルランド・ダブリン。14歳のコナーは、父親が失業したため公立のシング・ストリート校に転校させられる。学校では校長のバクスターと不良のバリーに目を付けられ、家では両親が夫婦喧嘩を繰り返す毎日。彼の救いはイギリスから発信される最新の音楽を聴くことだけだ。そんなある日、コナーはモデル志望の少女ラフィーナに恋をし、「僕のバンドのミュージックビデオに出ない?」と声を掛ける。あわててメンバーをかき集めたコナーは、兄ブレンダンの助言によりオリジナル曲とミュージックビデオの制作を開始。ラフィーナとの距離も徐々に近付いていくが……。

キャスト

コナー:フェルディア・ウォルシュ=ピーロ
ラフィーナ:ルーシー・ボイントン
ブレンダン:ジャック・レイナー
ダーレン:ベン・キャロラン
エイモン:マーク・マッケンナ
バリー:イアン・ケニー

スタッフ

監督・脚本:ジョン・カーニー
音楽:ゲイリー・クラーク、ジョン・カーニー
主題歌:アダム・レヴィーン「ゴー・ナウ」

OKAMOTO'S(オカモトズ)

オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)の4人からなるロックバンド。バンド名およびメンバー名は、彼らが敬愛する岡本太郎とラモーンズに由来する。2010年5月に1stアルバム「10'S」でアリオラジャパンよりデビュー。2011年7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '11」に初出演を果たし、10月には初のアジアツアーを開催した。2014年は8月にRIP SLYME、奥田民生らを迎えてコラボレーションアルバム「VXV」をリリース。2015年6月には岸田繁(くるり)のプロデュース曲「Dance With Me」と、「カップヌードル」CMソングの「Dance With You」を収録した両A面シングルをリリースした。同年9月に6thアルバム「OPERA」を、11月にシングル「Beautiful Days」を発表。2016年6月にシングル「BROTHER」をリリースし、12月21日には配信限定で発表された「Burning Love」のほか4曲が収録されたアナログ盤「BL-EP」を発売した。