麻生さんはカミーユであり、メーテルであり、ミューズ(峯田)
──峯田さんはズッキーニ、麻生さんはカミーユの吹替を担当するわけですが、それぞれ合っていると思いますか?
麻生 ぴったりですよね。もうズッキーニは峯田さんにしか見えない。
峯田 さっき麻生さんが言ったカミーユと初めて会ったときのズッキーニの顔って、僕が初めて麻生さんに会ったときの顔だよ。
麻生 嘘だー(笑)。だって目合わせてくれなかったよー。私が見てないところで見てたの?
峯田 うん、そういうときって第七感みたいなものが働くの。「あ、俺のこと見てない」ってのがわかって、そのときにバレないように見てた(笑)。麻生さんとは映画で初めて一緒になったんですが、子供のときから会っているような感覚で。「銀河鉄道999」のメーテルってわかります?
──はい(笑)。
峯田 僕が鉄郎だとしますよね。その鉄郎をずっと支えてくれたミューズがメーテルで、それは僕にとっての麻生さん。
麻生 やったー(笑)。
峯田 今度コスプレやってみたら? この目の憂い見えますか? 僕には見えてるんです! 麻生さんはカミーユであり、メーテルであり、ミューズであり、男からするとロマンの対象、象徴なんです。
麻生 ありがたい言葉をちょうだいしました(笑)。
私の顔が浮かばないような声で演じたい(麻生)
──これから収録ですが、心がけようと思っていることはありますか?
麻生 オリジナル版の声優さんが低いトーンで、クールな感じでしゃべっているので、それに近い感じにしたほうがいいのかなと思っています。あと私、もともと声が極端で、基本は低いんですけど、感情が高まると声も高くなっちゃうんです。それらを踏まえどういう声を出そうかな?と今考えています。
峯田 僕もオリジナル版の子供の声に寄せたほうがいいのかな?と思ってます。でも意識はしつつも、さっき言った普段ふたをしている自分の中にある子供の部分を乗っけたいです。
麻生 声優のお仕事のときにいつも思うんですが、私の顔が浮かんでほしくない。でもすごく特徴的な声だから、どうしようかなと。
峯田 ちょっと前にスタジオで練習したんですけど、うまくいかなくて。これどこまで載るかわからないですけど、もらった練習用のDVDが家のデッキで再生できなくて。でも練習しなくちゃいけなくて、家の近くのラブホ……いや、シティホテル、シティホテルにしましょう(笑)。そのシティホテルで、これどういう状況だ?と思いながら練習しました。あ、そこ安いんですよ。
麻生 (笑)。デッキ買ったほうが安かったんじゃない?
峯田 いや、大きい画面で観たくて。しかもテレビの高さがちょうど練習しやすい高さでね(笑)。僕も麻生さんと同じように自分の顔が観てる人に浮かばないといいなと思ってます。
──どのようなところに難しさを感じたんですか?
峯田 台本を棒読みしちゃうんです。映画やドラマのお芝居の場合は、セリフを覚えて体を動かしながらできるんですけど、今回は体の動きを遮られた状態なので。声だけでやるのは本当に難しいなと。
麻生 難しいよね。動き付けちゃう?(笑)
──麻生さんは細田守監督や原恵一監督のアニメーション映画での声優経験をお持ちですね。峯田さんに何かアドバイスはありますか?
麻生 できるわけないじゃないですか(笑)。
──原監督の「カラフル」ではとても印象的な演技をされていますが。
峯田 そうだ、あれ麻生さんだよね。めちゃくちゃやってるじゃない!
麻生 たくさんはやってないよー。原監督の「カラフル」で初めて声優経験をさせてもらったんですけど、もういっぱいいっぱいでした。「カラフル」のときは私のまんまの声だったから、アドバイスは……。
──自分と違う声を出すのは楽しいんですか?
麻生 楽しいですよ! でもあんまり求められない(笑)。地声に近いとそんなに冒険できなくなっちゃう。だから「人間じゃない役をやりたいです」ってずっと言ってるんですけど全然お話が来ない(笑)。だから今回、自分じゃないような声を出したいです。
ズッキーニだったらいい歌を歌えそう(峯田)
──峯田さんは音楽ナタリーのインタビューでリリー・フランキーさんと“ひとりぼっちであること”についてお話されています(参照:銀杏BOYZトリビュートアルバム「きれいなひとりぼっちたち」発売記念 峯田和伸×リリー・フランキー対談)。そんな峯田さんから見てひとりぼっちになって孤児院に入るズッキーニはどう映りましたか?
峯田 自分と似てる部分があると思いました。初めて観たときズッキーニのなんとも言えない目が印象的で。いい顔してるなあと思いました。
──ズッキーニは絵を描くのが好きです。表現者として思うことはありましたか?
峯田 音楽やお芝居だけでなく、ものを作っている人はどうしても自分と向かい合わなければいけないときがあるんです。それは自分の弱いところだったり、自分でダッセえなと思う部分を見なくてはいけない作業で。それを見たうえでいいものを作っていく。そういう意味で僕は、小さい頃から絵を描いたりとか一人遊びが好きだったのでこの仕事が向いてると思っていて。人前に立って何かやってる人はそういう部分を持っていると思うんです。ズッキーニも大人になったら歌とか歌ってほしい。ズッキーニだったらいい歌を歌えそう。あと優しい男の子だし、自分みたいな子供を助ける仕事をしてほしいと思いました。いきなり親目線になっちゃったけど(笑)。
──最後にこれから作品を観る方に一言ずつお願いします。
麻生 うーん……どういうふうに伝えればいいんだろう。とても面白い映画なんですけど明るいトーンで「ぜひ!」と言える作品ではないので。私はシンプルにお話が好きでしたし、ヨーロッパの孤児院の環境も知ることができたし、個人的にいろいろなことを考えさせられました。重い話ではあるんですが、観終わったあと落ち込むような内容ではなく、前向きに、子供たちの明るい未来を祈って終われるような作品なので、子供からお年寄りまであらゆる世代の人に観ていただきたいです。
峯田 アニメーションで人間が演じていないからこそ、観てる人が想像できる隙間がある。初めて観たとき、子供たちの声や、空の広がり、雪の色だとかきれいなものが詰まっていると思ったんです。内容は重いんですけど、きれいであるが故に迫ってくるものがあるし、実写ではなかなか味わえない感覚を覚える。あとは日本人の大人である僕らが吹替を行うことで相乗効果になって、この魅力がより伝わればいいな。
- 「ぼくの名前はズッキーニ」
- 2018年2月10日(土)公開
- ストーリー
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ママが付けた“ズッキーニ”という愛称を大切にしているイカールは、いつも屋根裏部屋で1人絵を描いて遊んでいた。そんなある日、ビールを飲んでは怒ってばかりだったママが不慮の事故で帰らぬ人になってしまう。事故を担当した警察官のレイモンは、ズッキーニを不憫に思いながらも、孤児院・フォンテーヌ園に連れていく。入園初日からクラスメイトでリーダー格のシモンによる手痛い洗礼を受けるズッキーニ。しかし、ズッキーニの心の傷を知ったシモンは、自分もほかの子供たちもそれぞれに複雑な事情を抱えながら園生活を送っていることを明かす。ズッキーニはシモンと心の痛みを共有する友人となり、ほかの仲間たちとも楽しい日々を過ごしていく。そんな中、園にどこか大人びた少女カミーユが入園。ズッキーニと意気投合したカミーユは、園を照らす太陽のような存在になっていく。だが、カミーユの叔母が扶養手当欲しさに姪を引き取ると言い出し、園に乗り込んできて……。
- スタッフ
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- 監督:クロード・バラス
- 脚本:セリーヌ・シアマ
- キャスト
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- 声:ガスパード・シュラター、シクスティーヌ・ミュラ、ポーラン・ジャクー、ミシェル・ヴュイエルモーズほか
- 日本語吹替:峯田和伸、麻生久美子、浪川大輔、リリー・フランキーほか
- 「ぼくの名前はズッキーニ」公式サイト
- 「ぼくの名前はズッキーニ」公式 (@boku_zucchini) | Twitter
- 「ぼくの名前はズッキーニ」公式 (@bokuzucchini0210) | Facebook
- 「ぼくの名前はズッキーニ」作品紹介
©RITA PRODUCTIONS / BLUE SPIRIT PRODUCTIONS / GEBEKA FILMS / KNM / RTS SSR / FRANCE 3 CINEMA / RHONES-ALPES CINEMA / HELIUM FILMS / 2016
- 峯田和伸(ミネタカズノブ)
- 1977年12月10日生まれ、山形県出身。1996年にロックバンドGOING STEADYを結成し、CDデビュー。2003年、GOING STEADY解散後に、ソロ名義で銀杏BOYZを始動させる。その後、バンド体制となった銀杏BOYZの活動と並行し、2003年公開の主演作「アイデン&ティティ」で銀幕デビュー。以降も「少年メリケンサック」「色即ぜねれいしょん」「ボーイズ・オン・ザ・ラン」「ピース オブ ケイク」などの映画や、「植物男子ベランダー」「奇跡の人」、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」といったドラマに出演。2019年放送の大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺~」への出演が決定している。
- 麻生久美子(アソウクミコ)
- 1978年6月17日生まれ、千葉県出身。1995年公開の「BAD GUY BEACH」で女優デビュー。1998年に公開された「カンゾー先生」での演技が評価され、第22回日本アカデミー賞の新人俳優賞をはじめ多数の賞を獲得する。その後、黒沢清が監督した「ニンゲン合格」「回路」、相米慎二の遺作「風花」、こうの史代のマンガを原作にした「夕凪の街 桜の国」、アボルファズル・ジャリリがメガホンを取った「ハーフェズ ペルシャの詩」などに出演。「時効警察」をはじめドラマでも活躍しているほか、銀杏BOYZトリビュートアルバム「きれいなひとりぼっちたち」では歌声を披露している。出演作「散り椿」が2018年9月28日に封切られる。