音楽ナタリー Power Push - 銀杏BOYZトリビュートアルバム「きれいなひとりぼっちたち」特集 銀杏BOYZ×リリー・フランキー

ひとりぼっちの2人の対話

銀杏BOYZの楽曲を13組のアーティストがカバー / リミックスしたトリビュートアルバム「きれいなひとりぼっちたち」がリリースされた。音楽ナタリーではこれを記念し、峯田和伸(銀杏BOYZ)と、彼と親交の厚いリリー・フランキーとの対談を企画。2人の会話はアルバムの話題のみならず、お互いの女性観や人生論にも及んだ。

取材・文 / 大山卓也 撮影 / 江森康之

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ぽつんとした感じがある人

──この「きれいなひとりぼっちたち」というアルバムタイトルは、もともとはリリーさんの言葉だそうですね。

左からリリー・フランキー、峯田和伸。

峯田和伸 「恋と退屈」(2006年刊行、2010年文庫化)っていう、僕が書いた本があって、その文庫版の解説をリリーさんに書いてもらったんです。その文章が、もう俺が死んだら棺に入れてほしいぐらい好きなんですけど、その中に「きれいなひとりぼっち」っていう言葉があったんですよ。

リリー・フランキー あれ書いたのもうずいぶん前だよね。

峯田 でもずっと自分の中に残っていて。今回のトリビュートアルバムのタイトルを考えてたとき、その「きれいなひとりぼっち」っていう言葉がぴったりな気がしてリリーさんに連絡したんです。そんで、アルバムにはいろんな人が参加してくれてるから「たち」を付けました。

──リリーさんは峯田さんのどんなところに「きれいなひとりぼっち」を感じたんでしょうか?

リリー 知り合ってからずいぶん経つけど、一貫して“ぽつんとしてる”感じはあるよね。バンドやってても何をしていても、いつもひとりぼっち感がある。

峯田 うん、リリーさんには見抜かれてる。

リリー 2人で話してるとなんかしんみりするんだよね。夜中とかにLINEでやりとりしてるときも。

峯田 そうですねえ。「眠れないけどカズくん(峯田)だったら今起きてるかなと思って」っていうところから始まって。

リリー そしたらカズくんが「なんかあったらすぐ行くんで言ってください」みたいな。あれもうギリギリの会話だよね、人間として(笑)。

峯田 あはは(笑)。

リリー でもなんか思い出すんですよ。自分がぽつんとしてるときに、同じぽつんとした感じを持ってるカズくんのことを。

峯田 まあ、きれいかはどうかわかんないですけど、確かにぽつんとしてる感じはあるかもしれないですね。

リリー でもやっぱそうやって、俺らが仲良くなる人ってやっぱ結局ぽつんとした感じがある人なんだよね。なんかパーティ大好きみたいな友達周りにいないし。

峯田 そうですね。

真っ黒いキャンバスの奥にあるもの

リリー これ、アルバムの人選はどうやって決まったの?

峯田 企画の庄司(信也 / Youth Records)っていうやつが声かけてくれて。だから僕は誰がどの曲をやるとかもギリギリまで聞いてなかった。

リリー 最後に入ってる倉持くん(YO-KING)の「東京」とか、答え合わせを聴いてるみたいでいいんだよね。

峯田 そうですね。「ああ、こういうことだったのか」って。俺が曲で出したくて出せなかった答えを、皆さんが出してくれたっていう気がしてる。ご褒美もらったような気持ちです。

リリー 俺はこのアルバムを聴いて、銀杏の曲は改めてすっげえいい曲なんだなっていうのがわかった(笑)。もともとメロディや歌詞はすごくいいのに、銀杏は意図的にそこをストレートにやらないから。歌い方で人を感動させようとか泣かせようとか思ってないんだよね。

峯田 はい(笑)。

左から峯田和伸、リリー・フランキー。

リリー だって一番甘酸っぱいところ歌ってるときは、もうカズくんは照れてマイク噛んじゃうでしょ(笑)。その独特の照れみたいなものが、サウンドや歌い方に出てる。でもほかの人がやるとその照れがないから、曲のキラキラしたところが浮き彫りになるんだよね。

峯田 確かにそうかも。僕が曲を作るときっていうのは、絵を描く作業に似てて。例えばすごく緻密できれいなひまわりの絵を描いたら、ホントはそれを提出すればいいんですけど、最後にキャンバスを全部真っ黒に塗りつぶして、僕の中ではそれで曲が完成するんです。ただ白いキャンバスを黒く塗るのと、下にひまわりの絵があってそれを上から黒く塗りつぶしたのは、同じ黒でもたぶん違う気がする。

リリー このトリビュートアルバムは塗りつぶす前の絵を見てるみたいな感じだよね。

援助交際がライブチャットになる

リリー THE COLLECTORSがカバーしてるやつ(「YOU & I VS. THE WORLD」)聴いて面白いなって思ったの。アレンジはさほど変えてるわけでもないのに、完全にTHE COLLECTORSになってる。人の曲をさも自分の曲のように(笑)。

峯田 そうなんです。聴いててちょっと悔しかったですもん(笑)。

リリー サンボマスターの「NO FUTURE NO CRY」もそんな感じでしょ。まるっきり自分の歌みたいに歌ってて。

峯田 いやあ、それがいいんですよね。クリープハイプの「援助交際」もほぼ原曲っぽいアレンジなんだけど、すごくよくて。

リリー でもクリープハイプが歌うとあれだよね。曲の年齢とか時代がちょっと若返るというか。

峯田 援助交際がライブチャットになる(笑)。

リリー これホントにトリビュートとして完成度が高いなと思った。

峯田 「夜王子と月の姫」は、最初はGOING STEADYのときに発表した曲なんですよ。今回の曽我部(恵一)さんのは、僕があの当時やりたかった音になってる。あのときはうまくできなかったんですけど。

リリー もっときれいな感じかと思ったら、いい具合にノイジーで。でもノイズに品があるんだよね。

V.A.「きれいなひとりぼっちたち」
「きれいなひとりぼっちたち」
2016年12月7日発売 / 3240円 / UNIVERSAL J / UPCH-2105
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レコチョクへ
ハイレゾ配信 / レコチョクへ
2017年5月17日にアナログリリースも決定
収録曲
  1. 漂流教室 / YUKI
  2. ぽあだむ クボタタケシ REMIX Version I / クボタタケシ
  3. 夢で逢えたら / 麻生久美子
  4. あいどんわなだい(Instrumental) / YOUR SONG IS GOOD
  5. 援助交際 / クリープハイプ
  6. NO FUTURE NO CRY / サンボマスター
  7. なんとなく僕たちは大人になるんだ / 安藤裕子
  8. 夜王子と月の姫 / 曽我部恵一
  9. 駆け抜けて性春 / ミツメ
  10. BABY BABY / sébuhiroko
  11. YOU & I VS. THE WORLD / THE COLLECTORS
  12. ナイトライダー / GOING UNDER GROUND
  13. 東京 / YO-KING
銀杏BOYZ(ギンナンボーイズ)
銀杏BOYZ

2003年1月、GOING STEADYを解散後に峯田和伸(Vo, G)が、ソロ名義で銀杏BOYZを始動させる。のちに同じくGOING STEADYの安孫子真哉(B)、村井守(Dr)と、新メンバーのチン中村(G)を加え、2003年5月から本格的にバンドとしての活動を開始。2005年1月にアルバム「君と僕の第三次世界大戦的恋愛革命」と「DOOR」を2枚同時に発売する。続くツアーやフェス出演では骨折、延期など多くの事件を巻き起こした。その後も作品のリリースを重ねていたが、2011年夏のツアーを最後にライブ活動を休止。しばしの沈黙を経て2014年1月に約9年ぶりとなるニューアルバム「光のなかに立っていてね」とライブリミックスアルバム「BEACH」を2枚同時リリースした。チン、安孫子、村井はアルバムの完成に前後してバンドを脱退しており、現在は峯田1人で活動を行っている。2016年6月に、サポートメンバーを従え8年半ぶりのツアー「世界平和祈願ツアー 2016」を開催。このツアーの追加公演として8月に初の東京・中野サンプラザホールにてワンマンライブ「東京の銀杏好きの集まり」を実施した。また俳優業では、NHK BSプレミアムで放送されたドラマ「奇跡の人」で主演を務めたほか、2017年4月より始まるNHK朝の連続テレビ小説「ひよっこ」にも出演する。

リリー・フランキー
リリー・フランキー

1963年生まれ、福岡県出身。武蔵野美術大学を卒業後、イラストやデザインのほか、文筆、写真、作詞・作曲、俳優など多彩な分野で活動。2001年に発表した絵本「おでんくん」はアニメ化されるなど幅広い層の人気を集めた。実体験を基に執筆した長編小説「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」は、テレビドラマ、映画、舞台化されている。俳優としては映画「ぐるりのこと。」「モテキ」「凶悪」「そして父になる」、舞台「クレイジーハニー」などに出演し高い評価を受けている。2017年1月からはドラマ「銀と金」では、原作者である福本伸行からの指名で、裏社会を仕切る大物フィクサー“銀王”こと平井銀二を演じる。