映画「
豊田徹也によるマンガを実写化した本作。家業の銭湯を継いだ主人公のかなえが、突然失踪した夫・悟を探しつつ、「働きたい」とやって来た謎の男・堀と奇妙な共同生活を送るさまがつづられる。真木よう子がかなえ、井浦新が堀、永山瑛太が悟を演じた。
本作に寄せられた感想に対して、今泉は「納得してない人もいるけど、原作ファンが面白がってくれているのはすごくうれしい。原作を知らずに観た人の意見もいろいろあって、意見がめちゃくちゃ分かれていることも含めてうれしいなと思っています」と述べる。すでにイメージができあがっているマンガを映像化するうえで気を付けたことを問われると「水中に沈むような映像や、過去の出来事を荒い映像にしたりとか、現実の時間じゃない映像表現はあまり自分がやってきていなかったので、カメラマンさんに頼りながらやりました」と回想した。
質疑応答の際には、観客から「今回の映画だと、瑛太さん・真木さんのシーンはカットバック、最後の井浦さん・真木さんのシーンは長回しでした。2組の関係性の違いを意識されましたか?」という質問が。今泉は「シーンによって毎回違いますが、先に撮り方を決めることってあまりないんです。基本的に芝居を見たうえで、これはカット割れないなと思ったら最後までワンカットで撮ったうえで編集をしています。『ここで寄るので、その前後からやりましょう』というのは、あまりしないようにしています」と回答し、芝居ファーストでカメラ割りを決めていることを明かした。
続いて音作りのこだわりを問われた今泉は、商業映画で効果部の人と仕事をするようになり、現実世界で鳴っていない音を映画の中で鳴らすことについて違和感を覚えたことを打ち明ける。そのうえで「でも、現実に全部合わせりゃいいとも思ってはなくて、残すとこは残すんですけど、やっぱり疑って作りたいというのがあります」と真摯に言葉を紡いだ。また、音楽についても「1回音楽なしで成り立つものを作って、そこに音楽をつけていくっていう意識があります。芝居だけで成り立ったうえで音楽がプラスの効果を生むのならいいですけど、音楽に助けてもらうのは失礼な気がする」「無音にすることも曲をつけることと同じぐらい効果がある」と自身の考えを語った。
最後の質問は、「今泉監督の作品には垣根を越えた人とのつながりや、心のつながりを感じる」という観客から。作品作りで大切にしていることを聞かれると、今泉は「基本的に自分がだらしなくてダメな人間なんで、自己肯定で作ってるっていうのがベース。今回の作品だと、俺は悟が全然最低だと思わずに作っていた」と述懐する。そして「基本的に他人のことはわからないと思っていて、自分が面白がれるかとか、自分がどうしてほしいかとか、その感覚はけっこう大事にしていることかもしれないです」と力説した。
「アンダーカレント」は全国で公開中。
おおとも ひさし @tekuriha
「アンダーカレント」今泉力哉、永山瑛太が演じた悟を「最低だと思わずに作っていた」 - https://t.co/vK08j20SD9