ハンガリーの映画監督
女性監督として初めてベルリン国際映画祭金熊賞に輝き、女性の主体性を脅かす社会の相貌にカメラを向けてきたマールタ。日本では、1985年に第1回東京国際映画祭「映画祭の映画祭(世界主要映画祭受賞作)部門」で「日記」が上映されたことを除いて、いずれも日本未公開の作品ばかりだ。
このたび、修復が済んだ作品の中から、1975年のベルリン国際映画祭金熊賞受賞作「アダプション/ある母と娘の記録」をはじめ、音楽逃避行劇「ドント・クライ プリティ・ガールズ!」、シングルマザーと男の恋模様を描いた「ナイン・マンス」、結婚生活に苦悩する2人の女性を映し出した「マリとユリ」、
なお本特集上映のクラウドファンディングが本日10月21日にスタートした。各界著名人からの応援コメントは以下に掲載した。
※「ナイン・マンス」はR15+指定作品
特集上映について
パラノビチ・ノルバート(駐日ハンガリー国特命全権大使)コメント
最高傑作の数々を世に送り出した、ハンガリーを代表する女性監督メーサーロシュ・マールタの作品が日本でも鑑賞できるようになることを歓迎します。人間ドラマとハンガリーの20世紀の歴史も描かれる作品を是非ご覧ください。
「アダプション/ある母と娘の記録」について
外山文治(映画監督)コメント
なんて芳醇な映画だろう。主人公の女性のさみしさと気高さ。その眼差しには生きることの哀しみも強さも、愛への羨望も諦めもすべてが詰まっている。孤独さえも人生の豊さの一部であることをメーサーロシュ・マールタ監督は教えてくれる。
田中千世子(映画評論家)コメント
社会主義体制下でも性差を超えて平等というわけではないことをメーサーロシュは堂々と描く。子供を持つことを決意したヒロインが五感を研ぎ澄まし、制度の仕組みや人間関係を見極めつつ目的に向う勇気が素晴らしい。
矢田部吉彦(前東京国際映画祭ディレクター)コメント
共産体制下のフェミニズムが鮮烈に描かれていることに感銘を受け、その問題意識が現在世界でも通用してしまうことに嘆き、クールなリアリズムのタッチに息を呑む。疑似母娘関係で結ばれるふたりの女性の心情を伝えるショットの積み重ねはしなやかにして優雅だ。やがて、親、パートナー、そして子を持つことへの普遍的なエモーションが張り詰める。疑いなくメーサーロシュ・マールタ監督の傑作のひとつであり、本作ほど、いま再発見されるにふさわしい作品はないだろう。
山崎まどか(コラムニスト)コメント
子供が欲しい四十代の女と、両親にネグレクトされた十代の少女。
二人の間に芽生えるものが擬似家族的ものでもなければ、単なる友情でもロマンスでもない、名付けえぬ不思議な絆であることに心惹かれました。女性同士に芽生えた新しい関係性をドキュメントで見ているようなスリルと、生き抜いていこうとする女性たちへの眼差し。唯一無二の作品です。
児玉美月(映画執筆家)コメント
「アダプション/ある母と娘の記録」で描かれる、世代を超えた女性同士の稀有な結びつき。彼女たちの顔は向かい合う よりも、並んで同じ方を向いた瞬間に鮮烈な印象を残す。メーサーロシュ・マールタは、すでにここで男性に依拠しない女性の生き方を毅然と提示していた。
この時代にいたのは決してアニエス・ヴァルダだけではなかったと、いまこそもう一度刻み直さなければならない。
児玉美月|Mizuki Kodama(映画文筆家) @tal0408mi
イザベル・ユペールの写真があしらわれたキービジュアルと予告編が解禁。「ささやかな革命」と銘打たれていますが、一年半前に寄稿したヴァルダ論の題に「やわらかな革命者」とつけていたので、そこで取り上げたメーサーロシュ監督がこうして特集されることになって感慨深い。
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