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第72回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールに輝いた本作。半地下住宅で暮らす貧乏家族の長男が、IT企業を経営する裕福な一家の家庭教師になったことをきっかけに起こる悲喜劇が描かれる。本作の試写後にサプライズ登場したポン・ジュノに対し、観客たちは大きな歓声を上げた。MCが本作の出来栄えを会場に尋ねると、割れんばかりの拍手も。劇場内の活気に「気恥ずかしいですね、とても」と照れた様子のポン・ジュノは、パルムドールを獲った日を回想。「賞をいただいたときはぼーっとしていたのですが、夜にはソン・ガンホさんとたくさんお酒を飲みました」と話し、「でも翌日の朝からは再び仕事を始めました。シナリオを書いていたんです」と勤勉ぶりを垣間見せた。
自身の体験から着想を得たという本作のシナリオ。「僕も大学生のときに、ある中学生の男の子の家庭教師をしていたんです。本当に裕福な家庭で、家は2階建ての大きく立派なものでした」と言い、「ある日、その子が自宅の2階にあるサウナに連れて行ってくれました。また、両親がいないときに寝室も見せてくれたんです」と思い起こす。「サウナも寝室もプライベートなものですので、意図せずに他人の私生活をのぞき見るような感覚になりました。そしてその家の中に自分が浸透していくような気分にもなったんです」と続け、「その当時の生々しい記憶がずっと残っていて、この映画につながったのかもしれません」と原体験を語った。また、長男が妹を新たな家庭教師として雇い主の家に引き入れようとする劇中のくだりを引き合いに出し、「僕も大学時代の友人を紹介しようと思ったんです。でも実行に移せませんでした。2カ月でクビになってしまったから」と言って観客を笑わせる一幕も。
キャスティングに話題が及んだ際には、17年以上一緒に仕事をしてきたソン・ガンホへのオファーはすんなり決まったと話す。「4~5年くらい前に食事をしていたときに、『パラサイト』という映画で、貧しい家庭の父親役をやるのはどうでしょうか?と聞いたら『いいですねやりましょう』と言ってくれて」と笑顔を見せた。加えて「彼のほかに、貧しい家の息子役であるチェ・ウシクさんと裕福な家の家政婦役であるイ・ジョンウンさんは、シナリオを書く前から本人と直接話をしていました。なので、当て書きでシナリオを作ったんです」と制作裏も明かす。
かつて東京が舞台のオムニバス映画「TOKYO!」で監督を務めたポン・ジュノ。今後日本での製作予定はないのかと問われると「実は日本のプロデューサーの方と一昨年から持続的に会っていて、構想を練っているんです。日本には素晴らしい俳優がたくさんいるので、ぜひ撮りたいですね」と計画を口にする。
MCからの「仕事をしたい俳優は?」という質問には、「たくさんいますが……樹木希林さんを大変尊敬していました。亡くなったと聞いたときは、胸が痛かったです。『母なる証明』を日本でリメイクするなら、お母さん役にと周りの人と話していたりしたんです」とぽつり。続けて「浅野忠信さんも以前から関心を持っている好きな俳優。また、広瀬すずさんはまぶしいばかりの速度で成長し続けている、素晴らしい女優だなと」と言って、観客を期待で沸かせていた。
「パラサイト 半地下の家族」は、2020年1月10日より東京・TOHOシネマズ 日比谷ほか全国でロードショー。
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