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「作家、本当のJ.T.リロイ」は、1996年に女装の男娼としての過去をつづった自伝「サラ、神に背いた少年」でデビューした少年作家、J.T.リロイにまつわる記録映画。それから10年後の2006年、The New York Timesの記事により、リロイは報道当時40代だったアルバートが作り上げた架空の人物であることが明らかになる。
アルバートは「過去の虐待の経験から、私は自分自身を恥ずべき人間だと思っていました。そんな自分が、他人の目には見えない存在であるかのように感じていたのです」と振り返り、「しかし私がいるということを知ってほしかったし、話を聞いてほしかった。自分では言えないことを、アートを使って自由に表現することがリロイという存在そのものでした」と解説する。また、ジョセフ・ゴードン=レヴィットが主演を務めた「ザ・ウォーク」に触れ、「主人公はワールドトレードセンターのツインタワーの上にワイヤーをかけて綱渡りをしているとき、自分が生きていると心から実感します。そこに死の可能性はあるのですが、彼はほかのやり方では生きていけない。それと同様に、私もほかの方法では生きていけなかったのです」と当時の心境を語った。
2006年の騒動があったあと、アルバートは多くの人々から誹謗中傷されたという。「私は彼らと戦おうと決意しましたが、絶望や怒りや悲しみから立ち去るには多くのエネルギーを要したのです」と苦悩を明かす。そして「自分のことをきちんと説明しなくてはならないという気持ちを持っていましたが、このドキュメンタリーがその役割を果たしてくれたと感じます」としみじみ述べた。
現在自らの回想録を執筆中のアルバートは「私がやらなければならないのは、アートを通じて世の中にインパクトを与えること。よりよい世界を作ることだと思っています」と胸の内を吐露。「たった1人でも苦しんでいる人が救われるのであれば、自分のやっていることには意味があるのだと思います」と力強く語ると、観客からは温かな拍手が送られた。
「作家、本当のJ.T.リロイ」は新宿シネマカリテほかにて公開中。
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リンク
- 「作家、本当のJ.T.リロイ」公式サイト
- 「作家、本当のJ.T.リロイ」 (@JTleroyMovieJP) | Twitter
- 「作家、本当のJ.T.リロイ」予告編
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