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本作は「キッチン・ストーリー」「卵の番人」などで知られるハーメルの監督最新作。ノルウェー国立計量研究所に勤める女性マリエが、パリの国際セミナーで1人の男性と出会い、新たな人生を切り開く姿を描き出す。計測という科学的なシステムを題材にしているが、ハーメル自身もともと1kgや1mを定義する研究者たちの存在を知らず、ドキュメンタリーで目にした際は「映画のベースになるなんて考えてなかった」と告白するが、「頭の中のアイデア袋にはずっと入れてあったんだ」とも明かした。
なぜ脚本を書くに至ったのか聞かれると、ハーメルがメキシコシティを訪れた際に、ノルウェーの研究施設を作った建築家と偶然知り合ったことがきっかけだと説明。研究所や研究者たちのこと、さらに科学的な定義などについて教えてもらい、大きな刺激を受けたという。一方、劇中には「人生ははかりにかけられない」というセリフも。「自分はノルウェーという、小さいけれど裕福な国の出身。でも最近知った統計の結果では、国民はあまり幸福を感じていないと知って悲しかった。そのことも通じているかもしれません」と語った。
またハーメルはリサーチを進めていく中で「いまだに“kg”に関しては、物理的な“キログラム原器”に則って定義する方法しかないことを知りました」と話す。“キログラム原器”はイリジウムとプラチナからなる円柱形の人工基準器で、40個の複製が作られて各国に配布されている。しかし作成時に証明書を付け忘れたものがあったらしく、「人間が関わると何かしらのエラーが起きてしまう。それがこの作品のタイトルにもある“1グラム”にあたるのかも。そういう話を聞きました」と観客に伝えた。
これまで中年男性を主人公にした作品を多く手がけてきたハーメルだが、「この作品は我々が抱える孤独であったり、どうしても自分を計測するモノサシを求めてしまう性を描いている。今回は主人公を女性にしたけど、もし男性であったとしても僕のアプローチは変わらない」と言い切る。ハーメルは「皆さんの期待に沿っておじさんを主役にしたほうがよかったかな」とジョークを飛ばしつつ、「ある程度の指標も、もしかしたら我々には必要なのかもしれない。僕が興味があるのは“1000グラム”ではなく、“1グラム”の部分。そのことが伝わったらうれしいです」とメッセージを送った。
「1001グラム ハカリしれない愛のこと」は東京のBunkamura ル・シネマほか全国で上映中。
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川越スカラ座 @k_scalaza
ベント・ハーメル、監督最新作で伝える大事なことは“1000グラムより1グラム” - 映画ナタリー https://t.co/0hEpbQ7Ar6当館では2/20(土)より上映!