6月27日から東京・角川シネマ新宿ほかにて特集上映「
作画を担当するのはこの道38年の看板職人、北原邦明氏。手描き看板全盛期には、銀座の名画座シネパトスなどを中心に年間200枚もの看板を手がけてきた。そのシネパトスが2013年に閉館して以来、手描き映画看板の発注があったのは2014年に行われた市川雷蔵の特集上映「雷蔵祭 初恋」のみ。北原氏は「(写真の印刷技術など)新しいものができていくのはしょうがないことですね」と語るが、この制作にあたり「手描きのほうがやっていて楽しいですね。仕事なのに楽しいなんて言ってちゃいけないんですが」と笑顔を見せる。
作業はまず下絵を描くところから始まる。若かりし頃の若尾の写真が据えられたデザイン画をフィルムにコピーし、それをプロジェクタで拡大しながら輪郭をトレースしていく。使用するのは新聞紙に似た質感の“ざら紙”とマジックだ。
下絵が終わると、色がなじみやすいよう紙を水で濡らし、ネオカラーという絵の具で彩色に入る。もとの写真を片手に、50本もの筆や指を駆使して迷いなく色をのせていく北原氏。作品のポイントを尋ねると、「昔は写実的な作品を求められたけど、最近は『手描き風に』と頼まれる。この作品もそこに重きを置いています」「もとのポスター写真も鮮やか過ぎない昔風の色合いになっているので、そういう色を出せれば」と答えてくれた。
下絵から始めて、顔、髪、そして付近の背景を塗り終えるまで約2時間。次は一旦乾燥させてから、紙をつなぎ足して彩色していく。この作業を繰り返しすべての色を塗り終えると、その紙を板に貼り付ける。そこへ字入れ職人がタイトルを書き込めば出来上がりだ。
北原氏に感想を求めると、「このデザインはそんなに難しくはない。でも、今の若い人にはこれが若尾文子だとわかるかな?」と不安げな顔。しかし「絵が描き終わったときではなく、それが掲出されたときが看板の完成。私もうまく描けているかどうか確かめに行きます」と話した。
この手描き看板は明日6月13日から約1カ月間、角川シネマ新宿にて掲出される。職人の技をその目で確認してみては。
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眼福ユウコ @gampy
手描き映画看板の制作過程。非常に丁寧なレポ。
手描きでよみがえるあの日の若尾文子、職人の看板制作に密着 - 映画ナタリー http://t.co/J5SAuQL8Vm