コミックナタリー Power Push - なかよし60周年記念特集 でんぱ組.inc成瀬瑛美×女子マンガ研究家 小田真琴
少女に夢と希望を与え続けてきたなかよしの60年を復刻版で振り返る
心理描写が的確すぎる「あずきちゃん」(1992~1997年)
小田 いいですね。次は一転、日常を描く「あずきちゃん」です。1992年から1997年まで連載されて、TVアニメ化もされました。秋元康さんが原作です。
成瀬 今はもう違いますけど、私にとって秋元康さんは「あずきちゃんの人」というイメージでした。ファンタジーが多めだったなかよしで、「あずきちゃん」は生々しかったです。
小田 普通にクラスでありそうな話が多いですよね。
成瀬 はい、心理描写が的確すぎてちょっと読むのが怖いときもありました。あずきちゃんの友達のかおるちゃんに感情移入していましたね。ケンちゃんのことが好きだけど、ケンちゃんはあずきちゃんが好きなんだ、あー報われないんだ……って(笑)。ライバルキャラのヨーコちゃんも、好きな男の子があずきちゃんしか見てなかったら、ちょっとイタズラ、意地悪したくなるよね、と。全員の気持ちがわかります。
小田 あずきちゃんモテますよね(笑)。当時のなかよしでは、個性的な絵も相まって異色の作品だったと思います。
成瀬 お目目がキラキラしたマンガが好きだったんですけど、「あずきちゃん」を読んで「こういうかわいさもあるんだ」と木村先生にハマって。木村先生の「カンベンしてちょ!」を読んだのですが、大人向けでエッチな部分もある作品だったので、子供だった私はまた「あずきちゃん」に戻りました(笑)。
小田 (笑)作家でたどるのはオタクの証です。オタク要素の少ない人は、「あずきちゃん」が面白いと思ったらそれだけで終わるんですけど、マンガ好きは「この木村千歌という人はどんな先生なんだろう。ほかの作品は?デビュー作は?」とどんどん深掘りしていく。
成瀬 確かに!(笑) 「あずきちゃん」については、小学校編だけじゃなくて中学校編もあって、すごく面白いよ!とみんなに伝えたいです。
- 1990年代からなかよしの黄金期に。発行部数は200万部を突破した
- なかよしはファンタジーが、りぼんは学園恋愛ものが多かった
- なかよし作品には女の子が戦う物語が多い
寮マンガの白眉「ようこそ! 微笑寮へ」(1994~1996年)
小田 ツインテールだった小学生の印象が強いですが、あずきちゃんが結構大人になるまで描かれていますよね。さて、成瀬さんは次の作品も好きそうな気がします。1994年から1996年まで連載された「ようこそ! 微笑寮へ」。これはマンガの1ジャンル、寮モノですね。恋愛禁止の寮で、誠くんと麻琴ちゃんの青春が繰り広げられます。
成瀬 寮モノ、何よりも憧れますね! かなり集めましたよ、りぼんの「ラブ・ベリッシュ!」とか少女マンガではありませんが「ラブひな」とか。寮モノというだけでも惹かれるんですが、私は本当にあゆみゆい先生の絵が好きで。何度も何度もトレーシングペーパーでなぞりました。
小田 あゆみゆい先生の絵は目が強いですね。
成瀬 そうなんです! 瞳の描き込みが特に細かいんですよ、線の数が半端なくて。あゆみゆい先生が描く目は、この作品くらいから大きくなっているんです。私の中で、ヒロインの顔の黄金比はこの時期のあゆみゆい先生が描く女の子です! それにスポーツする男の子を応援するというシチュエーションも、「ようこそ! 微笑寮へ」を読んで好きになりました。
小田 誠くんはワールドカップを夢見るサッカー少年で、麻琴ちゃんはサッカー部のマネージャーですからね。ちょうどこの時期にJリーグが始まったんですよ。
成瀬 そうでしたね。マネージャーポジションには憧れました。レモンの砂糖漬けを作って、試合に持っていきたい……。あと私、「遅刻、遅刻!」で始まるマンガフェチなんですよ(笑)。その点でも「ようこそ! 微笑寮へ」は完璧です。
小田 「遅刻、遅刻!」の後、パンツが見えちゃうんですよね。
成瀬 そうです、遅刻はしてないですが「あずきちゃん」もです! “あずきのパンツはあずき色”。
小田 様式美の世界ですね。
成瀬 はい、マンガとして憧れるシチュエーションがめちゃくちゃ詰まっています。「太陽にスマッシュ!」も「デリシャス!」も、あゆみ先生の作品は全部好きですね! あ、また作家読みしてた(笑)。
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ラインナップ
遠山えま「青葉くんに聞きたいこと」「かみかみかえし」、山田デイジー「初恋はじめました。」、フクシマハルカ「伯爵さまは甘い夜がお好き」、鳥海ペドロ「黒豹と16歳」、美麻りん「嘘つき王子とニセモノ彼女」、星野リリィ「きぐるみ防衛隊」、松本ひで吉「さばげぶっ!」、瀬田ハルヒ「出口ゼロ」、中江みかよ「小学生のヒミツともだち」、桜沢きゆ「先パイ、教えてください」、桜倉メグ「探偵チームKZ事件ノート 消えた自転車は知っている」、吉田はるゆき「ピンポンドライブ」、渡辺留衣「FAIRY TAIL ブルー・ミストラル」、長谷垣なるみ「花と忍び」、あべゆりこ「わんころべえ」、ハタノヒヨコ「Stella~ナナと魔法の英単語~」、上北ふたご「GO!プリンセスプリキュア」
付録:香りクリーム&ジュエルケース、プレゼントメモ、なかよし×マイメロディ ラブシール
成瀬瑛美(ナルセエイミ)
6人組アイドルグループでんぱ組.incのイエロー担当。“ハイテンションA-POPガールえいたそ”の愛称で親しまれている。
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小田真琴(オダマコト)
1977年生まれ。少女マンガとお菓子をこよなく愛する女子マンガ研究家。自宅の6畳間にはIKEAで購入した本棚14棹が所狭しと並び、その8割が少女マンガで埋め尽くされている。