コミックナタリー Power Push - なかよし60周年記念特集 でんぱ組.inc成瀬瑛美×
女子マンガ研究家 小田真琴

少女に夢と希望を与え続けてきたなかよしの60年を復刻版で振り返る

少女マンガ界で燦然と存在感を放つ雑誌・なかよし(講談社)。1954年末に創刊された本誌は、2015年1月号にて創刊60周年を迎えた。

数々の記念企画の中でコミックナタリーでは「なかよし60周年名作総選挙」を経て復刻された10タイトルに注目。女子マンガ研究家・小田真琴を招き、大好きな作品が蘇ったことに歓喜するでんぱ組.incの成瀬瑛美とともに復刻タイトルについてレクチャーしてもらった。

また最終ページにはなかよしの60年の歴史の中からピックアップされた表紙を、小田の解説付きで掲載。往年のなかよしっ子から現役のなかよし読者まで楽しめるアーカイブは必見だ。

取材 / 三木美波  文 / 三木美波(P1~5)、小田真琴(P6) 撮影 / 石橋雅人


ホラーマンガの大家・高階良子の「地獄でメスがひかる」(1972年)

高階良子「地獄でメスがひかる」なかよし60周年記念版。生まれながらの醜い容姿のため、家族からもひどくあたられるひろみを主人公に据え、人の美醜を問う物語が展開されている。

成瀬 今日は小田さんになかよしについて教えてもらえるということで、すっごく楽しみにしてきました! なかよし60周年復刻版が出て、すごくうれしいんですが、読んだことがない作品もあって……。

小田 では60周年復刻版の10タイトルのうち、刊行年が古い順にレクチャーしていきましょうか。さっそくですがコレ! 高階良子先生の「地獄でメスがひかる」です。1972年の作品ですが、ご存知ですか?

成瀬 いえ、知りませんでした。

小田 高階先生は、ホラーマンガの大家なんです。昔の少女マンガって、結構ホラーが多かったんですよ。

成瀬 あ、なかよしの付録でもよくホラーの小冊子が付いてきました。

小田 そうそう、ホラーに需要があったんですよね。その代表的な作家の1人が高階先生で、しかも「地獄でメスがひかる」はその代表作です。

成瀬 もうタイトルからしてインパクトがあるなー! どういった内容なんですか?

話が盛り上がる成瀬瑛美と小田真琴。

小田 はい、地獄でメスが光ってます(笑)。

成瀬 まんまだー!(笑)

小田 あはは。主人公はブサイクな女の子・ひろみです。お父さんがどこかの女に生ませた子で、ブサイクゆえに家族からすごくいじめられてるんです。シンデレラ的な立ち位置ですね。あるときひろみが家出して、死に損なったところを天才医師に拾われて。

天才医師・巌俊明

成瀬 このお医者さん、イケメンですな!

小田 そうです。それでこのイケメン医師が、この子を人体実験で改造しちゃうんですよ。いろんな死体を集めて、1つの生命を作り出すことができるのか、というテーマで研究をしているんですが、脳だけは生きている人間のものが必要。そこでひろみを……。今の倫理観でもやってしまっていいのかなっていう……。

成瀬 ギリギリアウトかもしれないですね……。

小田 アウト、完全にアウトです(笑)。で、ひろみの脳はすっごく美人な死体に移植されます。

ときめくようなシーンも入っているんですね

主人公のひろみ。背景に描かれているのは脳が移植される前の姿。

成瀬 わー、めっちゃきれい。

小田 はい。ひろみが美人に生まれ変わって、お約束通りに元の家族と再会したり、このイケメン医師も好きになっちゃったり、といろいろあります。

成瀬 ときめくようなシーンも入っているんですね。

小田 ありますね。だけどやっぱりホラー的な要素と、人間の心理の恐ろしさがメインに描かれています。

成瀬 ひええ。なかよしで好きなのは、対象年齢が低めの女の子にもこういう作品を見せてくれるところなんです。

小田 最近は倫理的な問題もあると思うんですが、少女マンガ全体でホラーが減っている傾向にあります。代わりに何が増えたかというと、少しエッチな描写かなと思うんです。どちらも刺激物ですね。

成瀬 そうですね、そう考えると同じだ! 「地獄でメスがひかる」は、大人になった今聞くとすっごく面白そう、今すぐ読みたいっていう気持ちになりました。子どもの頃に読んだらトラウマになったでしょうね……。でもそれってすごく心に残る作品になったということだと思うので、これをリアルタイムで読めた人がすごく羨ましいです!

「なかよし」12月号 発売中 580円 / 講談社
「なかよし」12月号
ラインナップ

遠山えま「青葉くんに聞きたいこと」「かみかみかえし」、山田デイジー「初恋はじめました。」、フクシマハルカ「伯爵さまは甘い夜がお好き」、鳥海ペドロ「黒豹と16歳」、美麻りん「嘘つき王子とニセモノ彼女」、星野リリィ「きぐるみ防衛隊」、松本ひで吉「さばげぶっ!」、瀬田ハルヒ「出口ゼロ」、中江みかよ「小学生のヒミツともだち」、桜沢きゆ「先パイ、教えてください」、桜倉メグ「探偵チームKZ事件ノート 消えた自転車は知っている」、吉田はるゆき「ピンポンドライブ」、渡辺留衣「FAIRY TAIL ブルー・ミストラル」、長谷垣なるみ「花と忍び」、あべゆりこ「わんころべえ」、ハタノヒヨコ「Stella~ナナと魔法の英単語~」、上北ふたご「GO!プリンセスプリキュア」

付録:香りクリーム&ジュエルケース、プレゼントメモ、なかよし×マイメロディ ラブシール

成瀬瑛美(ナルセエイミ)

6人組アイドルグループでんぱ組.incのイエロー担当。“ハイテンションA-POPガールえいたそ”の愛称で親しまれている。

小田真琴(オダマコト)

1977年生まれ。少女マンガとお菓子をこよなく愛する女子マンガ研究家。自宅の6畳間にはIKEAで購入した本棚14棹が所狭しと並び、その8割が少女マンガで埋め尽くされている。