コミックナタリー Power Push - なかよし60周年記念特集 でんぱ組.inc成瀬瑛美×女子マンガ研究家 小田真琴
少女に夢と希望を与え続けてきたなかよしの60年を復刻版で振り返る
クラシックな少女マンガ「おはよう!スパンク」(1978~1982年)
小田 そう言っていただけると、うれしいですね。では次にいきましょうか。1978年に1巻が発売された「おはよう!スパンク」です。
成瀬 スパンク! 母親が好きでした。
小田 TVアニメにもなったので、親御さんの世代は読んでいるか見ているかしているんじゃないかな。グッズも数多く展開されたんですよ。
成瀬 かわいいですもんね、スパンク。ストーリーは把握していないんですが、どういう内容なんですか?
小田 一言で言うと、クラシックな少女マンガです。
成瀬 え、ヒーローが出てきて……っていう?
小田 昔の少女マンガは、生き別れの両親を探し歩いたり、家族に何か大変な不幸があったりするのが王道の展開なんです。
成瀬 名作劇場みたいな感じの物語ですね!
小田 そうですね。「おはよう!スパンク」の主人公・愛子には、お父さんがいないんです。ヨットで旅に出たまま帰ってこない、ということが1話目で語られます。
成瀬 ヨットに乗っているお父さんって、カッコいいですね。最近の少女マンガのお父さんではいなそうだなあ。
小田 時代を感じますよね。物語の中盤では、愛子のお父さんとお母さんは不倫の関係だったという衝撃の展開が明かされます。消息不明だったのは、正妻のところに帰っていたからだと。
表紙やカバーの折り返しまで完全復刻はありがたい
成瀬 あらまー! 少し古い少女マンガは複雑なお話が多いですもんね。
小田 はい、意外にハードコアな作品なんです。ほかにもショッキングなのは、冒頭でいきなり主人公の愛犬が死にます。
成瀬 ええ!? スパンク??
小田 いえ、パピーです。スパンクは、パピーが死んだ後に愛子の前に現れる犬なんです。パピーを轢いてしまった人は、罪の意識を感じながらその後もずっと物語に登場します。スパンクのかわいさだけではなく、結構陰があるお話なんですよ。
成瀬 もっとほのぼのした感じなのかと思っていたので、印象がだいぶ変わりましたね。ちょっとしたハプニングが起きて、1話完結というイメージがあったんですが。
小田 たぶんTVアニメのイメージだと思います。マンガはかなり骨太ですよ。
成瀬 うわー、しっかり読まねば! 今って70年代の作品は手に入りづらいから、表紙やカバーの折り返しまで完全に復刻してくれるのは本当にありがたすぎる! 読めたとしても文庫版だったり完全版だったりするので、元の状態で読めるのは貴重ですね。
- 少女マンガは昔よりホラーが減った代わりに少しエッチな作品が増えた
- 1970年代の少女マンガは生き別れの両親を探し歩いたり、家族に不幸があったりするのが王道の展開
80年代なかよしのエース・あさぎり夕の「なな色マジック」(1986~1988年)
小田 なかよし60周年復刻版はとてもいい企画だと思いますね。次は1986年から1988年に連載された、あさぎり夕先生の「なな色マジック」です。
成瀬 キター! あさぎり先生かわいい!
小田 ご存じ80年代なかよしのエースですね。あさぎり先生の作品は読まれてますか?
成瀬 はい、「コンなパニック」とか変身モノにすごく憧れていました。「なな色マジック」は恋愛マンガでしたっけ?
小田 この作品は、“全部入り”なんです。恋愛、学園、芸能界、舞台、ダンス、双子、同居……。
成瀬 わー! まさに“なな色”ですね。
小田 そうなんです。同じ物語とは思えないほどいろんな展開になるんですが、キャラクターが一貫しているので自然に読めちゃうんです。
成瀬 ヒロインの表情がコロコロ変わってかわいい。
小田 そう、そこです! あさぎり先生の絵の上手さですよね。動きのある絵がすごくお上手なので、ダンスシーンは迫力満点です。でも今の若い人が読むとわからないんじゃないかなという描写もあるんですよ。
成瀬 どういうところですか?
小田 中学校のクラスが7組まであるんですが、少子化の現代でそこまでの学校は少ないんじゃないかな。あと作中の原宿には歩行者天国があるんです。
成瀬 え、知りませんでした! 読んでいて思ったのは、登場キャラの表現が大げさなのもこの時代のマンガのよさですよね。「ぎゃー!」とか「きゃー!」みたいな。最近のマンガだとやりすぎな感じが出ちゃうので、控えていると思うんですけど。
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ラインナップ
遠山えま「青葉くんに聞きたいこと」「かみかみかえし」、山田デイジー「初恋はじめました。」、フクシマハルカ「伯爵さまは甘い夜がお好き」、鳥海ペドロ「黒豹と16歳」、美麻りん「嘘つき王子とニセモノ彼女」、星野リリィ「きぐるみ防衛隊」、松本ひで吉「さばげぶっ!」、瀬田ハルヒ「出口ゼロ」、中江みかよ「小学生のヒミツともだち」、桜沢きゆ「先パイ、教えてください」、桜倉メグ「探偵チームKZ事件ノート 消えた自転車は知っている」、吉田はるゆき「ピンポンドライブ」、渡辺留衣「FAIRY TAIL ブルー・ミストラル」、長谷垣なるみ「花と忍び」、あべゆりこ「わんころべえ」、ハタノヒヨコ「Stella~ナナと魔法の英単語~」、上北ふたご「GO!プリンセスプリキュア」
付録:香りクリーム&ジュエルケース、プレゼントメモ、なかよし×マイメロディ ラブシール
成瀬瑛美(ナルセエイミ)
6人組アイドルグループでんぱ組.incのイエロー担当。“ハイテンションA-POPガールえいたそ”の愛称で親しまれている。
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小田真琴(オダマコト)
1977年生まれ。少女マンガとお菓子をこよなく愛する女子マンガ研究家。自宅の6畳間にはIKEAで購入した本棚14棹が所狭しと並び、その8割が少女マンガで埋め尽くされている。