あれだけがんばれば、時代を超えて残るものを作れる
3月20日に封切られ、公開3週目を迎えた「劇場版『暗殺教室』みんなの時間」。TVアニメ「暗殺教室」10周年プロジェクトの集大成であり、TVアニメでは描かれなかったエピソードの数々が完全新規で映像化されている。今回の舞台挨拶は「裏話の時間」と題され、すでに複数回鑑賞したという熱いファンが多数集まった中、上映後に制作の舞台裏トークが繰り広げられた。
劇場版を含む10周年プロジェクトの企画立ち上げは、3年半ほど前だったと振り返る障子プロデューサー。そこから一昨年末頃に声がかかったという上江洲は、「10周年にきっと何かあるだろうと確信していたので、『よし来たか』という感じで打ち合わせに臨みました」と力強く語る。TVアニメでもシリーズ構成を務めた上江洲に対し、当時はいち視聴者、いちファンだったという障子プロデューサー。「今の会社に入社したのが『暗殺教室』の第1期が始まった2015年の4月で、個人的にも10年という節目の年に、同じように節目の作品をやれて本当にうれしいです」と参加への思いを語った。そんな障子プロデューサーに上江洲は「よくぞやってくれましたよね。引き継いでくれてありがとうっていう気持ちがあります」と感謝を伝え、福山は「この1年の中で障子さんの人となりと、なぜここに至ったかまでをちょっとずつ教えていただきまして。前任のプロデューサーの方からも『超できる子なんで』ってお墨付きがあって、短い時間の中でもすーっと障子さんの懐にみんなが入っていったような感じ」と信頼を語った。
10周年プロジェクトでは、劇場版公開に至るまでさまざまな施策が行われた。その1つであるTVアニメの1年にわたる再放送では、オープニングテーマとエンディングテーマを一新。それについて障子プロデューサーは「僕もいちファンなので、当時のオープニングがどれほど皆さんに愛されてるかっていうのは重々承知していましたし、1話の放送が流れるまでは不安でしょうがなかったです。ただ『暗殺教室』っていつの時代でも楽しく観られる作品で、音楽の面からも新しく入ってきていただける方っていうのはいるんじゃないか」と一新した意図を伝える。また再放送時、公式Xでの再放送告知のすべてに反応していたという福山。「どんな形でもいいから知ってほしかった」と障子プロデューサーと同じ思いがあったと語った。上江洲は「10年前のフィルムなんだけど、まったく古びてないなと。あのときみんながんばったので、あれだけがんばれば時代を超えて残るものを作れるんだなということが、実証されたなと思いました」と改めてTVアニメの出来に自信を見せた。
もう1つ話題に上がった施策が8月にオンエアされた「『暗殺教室』のオールナイトニッポンGOLD」。福山は「自分の人生に起こることを望んだことがないぐらい、違うものとして思ってたもの」と言うほど、「オールナイトニッポン」の冠は大きなものだったという。この施策について障子プロデューサーは「今回のテーマが『同窓会』なので、ラジオだったら皆さんに参加していただけて一番いいんじゃないか」と意図を説明。作品の内容に合うようこだわって施策を考えていったことを伝えた。
「暗殺教室」、殺せんせーに変えられたもの
後半では「劇場版『暗殺教室』みんなの時間」の話題へ。「当初委員会はおそらく60分程度の、もう少し小規模な企画を考えていたはず」と上江洲が切り出し、「この内容だと80分ぐらいいきますよね、みたいなことを言いながら、ちょっとずつ打ち合わせの現場で企画を劇場アニメに拡大していったんです。みんな大人だから最初から劇場版なんて言わないんだけど、心の中ではそうあってほしいと思ってるから、ちゃんとみんないいように乗ってくれました(笑)」と話すと、障子プロデューサーもうなずきながら「上江洲さんと思惑が合いました(笑)」と“共犯関係”だったと明かす。
また原作の未映像化エピソードが中心の劇場版になったことについては、上江洲が「オリジナルストーリーをやるぞ、なんて気持ちはかけらもなかった。もうなにがなんでも公式からズレないものを作るんだって、鉄の意志で作りました」ときっぱり。オリジナルのセリフなどもあるが、上江洲は「TVシリーズを長くやってきたことと、あと松井先生との良好な関係性もあったので、『こうであろう』というところで確信を持って書いてます」と語った。福山からも今作の構成を絶賛されると、上江洲は「『暗殺教室』に関しては、4クールのTVシリーズをあれだけ過不足なくしっかりやったっていうのがとにかく強いです。僕はそのときの筋肉をもう1回動かした感じでした」と、TVアニメで培ったものがあってこそだと強調した。
そして今作ではエンドロール後に、渚たち3年E組の同窓会が描かれる。このパートは当初の脚本の段階ではなかったものだそうで、障子プロデューサーは「“同窓会”をテーマに宣伝をしている中で、最後に10年後の全員が出たらっていうアイデアを宣伝プロデューサーからもらったんです。急いで僕と宣伝プロデューサーで大まかなプロットだけを作って、『上江洲さん、本当に申し訳ないです、来週アフレコなんですけど……』って(笑)」と、急遽上江洲に相談し、アフレコ当日まで調整を重ねたという。福山が「俺、知らなかったんです。収録の段階で俺だけ秘密になってたので」「生徒たちがやる企みって、全部俺教えてもらえない(笑)」と訴えると、上江洲は「福山さんだから、こういう仕掛けを理解して最後まで付き合って楽しんでくれるだろうって、信頼ですよ」と語った。
なにがなんでも公式からズレないものを作る
最後にMCより「自分にとって『暗殺教室』とは?」という質問を投げかけられた3人。障子プロデューサーは「2度目の青春。『暗殺教室』は学生時代の青春だったり甘酸っぱさだったりを追体験できる作品だと思いますし、個人的な話ですが、この映画に携わったスタッフ含めて、どうやったら皆さんに少しでも届くのか、どうやったら皆さんに楽しんでいただけるか、仕事なんですが本当に楽しくやってこれたと思います」と述べる。上江洲は「障子さんに言われちゃったなと。あのとき自分たちはクラスメイトの感じでやってたんだなって思い出して、僕にとっても30代の青春だったんです。とても大切な思い出で、イコール死ぬまで抱いていくでしょうから、『暗殺教室』は人生ですね」と思い入れたっぷりに語った。
最後に福山は「僕にとっても学び舎だった」と表現。「いい作品を作りたいって思いはそれまでと変わっていないけど、共演者やスタッフの方との距離の取り方は、分かたれたものとして、自分の中では明確にあったんです。それが『暗殺教室』を経て、どんどん自分の中でその形が変わっていって。そして『卒業の時間』を迎えるときに、今までの自分では考えられないような感情であったり、役のことを自然と『こうに違いない』というような確信めいたものが、時間と関係性の中で出てきたりだとかして。頭で考えるよりも感じるものがとても大きかったのが、『暗殺教室』、そして殺せんせーという人物だったんです」と述懐する。そして「皆さんも作品で得た思いを、また次の方へお伝えいただけると、その循環がとても素晴らしい形になるのではないかなと思っております」と語りかけた。舞台挨拶は一旦ここで締めくくられたものの、福山の話を聞いた上江洲が「殺せんせーからこういう仕事の仕方に俺は変えるんですって言ってたの、覚えてますよ」と声をかけると、福山は「恥ずかしい(笑)」と照れ笑い。当時から培ったチームワークが垣間見える一幕だった。
なおコミックナタリーでは、「劇場版『暗殺教室』みんなの時間」の特集を公開中。脚本を担当した上江洲誠と、キャラクターデザインの樋上あや、北村真咲監督、プロデュースを手がけた障子直登の座談会をセッティングし、シリーズの歩みと今作の制作秘話を語ってもらっている。
「劇場版『暗殺教室』みんなの時間」
公開中
スタッフ
原作:「暗殺教室」
監督:北村真咲
脚本:
キャラクターデザイン:樋上あや
アニメーション制作:Lerche
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ
製作:アニメ「暗殺教室」製作委員会2025
キャスト
殺せんせー:
烏間惟臣:杉田智和
イリーナ・イェラビッチ:伊藤静
潮田渚/蛍:渕上舞
茅野カエデ:洲崎綾
赤羽業:岡本信彦
磯貝悠馬:逢坂良太
岡島大河:内藤玲
岡野ひなた:田中美海
奥田愛美:矢作紗友里
片岡メグ:松浦チエ
神崎有希子:佐藤聡美
木村正義:川辺俊介
倉橋陽菜乃:金元寿子
菅谷創介:宮下栄治
杉野友人:山谷祥生
竹林孝太郎:水島大宙
千葉龍之介:間島淳司
寺坂竜馬:木村昴
中村莉桜:沼倉愛美
狭間綺羅々:斎藤楓子
速水凛香:河原木志穂
原寿美鈴:日野未歩
不破優月:植田佳奈
前原陽斗:浅沼晋太郎
三村航輝:高橋伸也
村松拓哉:はらさわ晃綺
矢田桃花:諏訪彩花
吉田大成:下妻由幸
律(自律思考固定砲台):藤田咲
堀部糸成:緒方恵美
梓:井上喜久子
土屋果穂:鈴代紗弓
多川心菜:金澤まい
シーカー:梅原裕一郎
ふとし:山口勝平
マリオ:山路和弘
チャンタ:東地宏樹
仙石:稲田徹
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