「化け猫あんずちゃん」監督がアニメと実写で分担した制作の裏側語る、日仏合作の経緯も

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映画「化け猫あんずちゃん」のステージイベントが本日3月23日に「AnimeJapan 2024」内で開催。山下敦弘監督、久野遥子監督、近藤慶一プロデューサーが登壇した。

「化け猫あんずちゃん」ステージイベントの様子。左から近藤慶一プロデューサー、久野遥子監督、山下敦弘監督。

「化け猫あんずちゃん」ステージイベントの様子。左から近藤慶一プロデューサー、久野遥子監督、山下敦弘監督。

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「化け猫あんずちゃん」ティザービジュアル

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「化け猫あんずちゃん」は2006年から2007年までコミックボンボン(講談社)で連載されたいましろたかしの同名作品を原作とした映画。子猫のときに寺の和尚に拾われ30年以上生き、言葉を話して人のように暮らす化け猫となったあんずと、親に捨てられた11歳の少女・かりんの日々を描く。映画には実写の映像を元にアニメーションの作画を行う手法・ロトスコープを採用しており、山下が実写映像、久野がアニメーションの監督を務めた。森山未來があんず、五藤希愛がかりんの声を担当したほか、2人はアニメの素材となる実写映像でもキャラクターの動きを担当している。

近藤慶一プロデューサー

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近藤プロデューサーは、まず原作の「化け猫あんずちゃん」との出会いを回想。森山も出演している山下監督作品「苦役列車」で助監督を務めていた近藤プロデューサーは、制作の現場に「化け猫あんずちゃん」の単行本が置いてあったことから、興味を引かれて読み始めたという。近藤プロデューサーは「今まで読んだことのないマンガだと思いました。これはなんだろうと思って、山下監督に聞いたら『誰かの目に止まればいいなと思って僕が置いた』と。これを映像化したら面白いだろうなと思ったのが、10年前です」と語る。

「化け猫あんずちゃん」ステージイベントの様子。

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久野監督も山下監督も原作ファンだといい、それぞれ作品の魅力を語る。久野監督は「世の中の塩っ辛いところを描いている一方で、弱さも認める優しさがある。コミックボンボンで連載されていたので子供向けになっている一方、容赦ない部分はしっかり厳しいですよね(笑)。不思議な魅力で面白いマンガだなと思いました」と述べた。2018年に狩撫麻礼・いましろたかし原作による実写映画「ハード・コア」も担当した山下監督は「『化け猫あんずちゃん』はいましろさんの作品の中では一番映像化しやすいと感じて、ずっとやりたいなと思っていました。最初は漠然と、あんずは着ぐるみであとは人間が登場するというのを想像していたんですけど」と過去に温めていた構想を明かす。

山下敦弘監督

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あんず役の森山について山下監督は「森山君って俳優としてはもちろん、ダンサーとしても活躍されていて、身体能力がすごい。原作にはない猫的な動きを森山君ならいろいろ相談できるかなと思ってオファーしました」と決め手を明かす。実写部分の撮影に帯同していた久野は「例えば足で耳を掻いてくださいっていうと、えーって言いながらやってくれる(笑)」と振り返った。撮影中は猫耳を付けて撮影に臨んだ森山。この猫耳はのちにあんずちゃんとしてアニメを描く際にサイズ感などの目安になることもあったそうで、久野監督は「うっかりすると背が伸びてすごく長いあんずちゃんになってしまうこともあり……。でも森山さんのお芝居がすばらしくて管理されていて、余計なことをしないのであんずちゃんとして描きやすかったですね」と述べた。

かりんを演じた五藤の魅力は、かりんに近い等身大な点と語る山下監督。「極端に言っちゃえば最終的にアニメになるので、中学生の女の子でもかりんになるけど、五藤さんはかりんの年齢に近く等身大。実際の11歳の要素をなるべくうまく引き出そうと思っていました。中学生の子だと、普通にお芝居がうまいし、僕の話も通じますけど、そういう未完成な部分も含めてかりんになればいいなと思ったんです。それが実写パートの役割だと思っていたので」と意図を説明した。

久野遥子監督

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いざ実写映像をアニメにするにあたって注意していたことを問われると、久野監督は「実写を単純にアニメにするだけだと、リアルになり過ぎて“画”が小さくなるんです。アニメにしたときに、役者さんの芝居の熱量を下げないことを大事にしてました」と述懐。アニメを作るうえで使用する、キャラクターのさまざまな表情を集めた資料は、実際に森山や五藤が浮かべた多数の表情をアニメ風に描き起こして制作された。山下監督は「あんずの表情は森山君の芝居が反映されていますね」と述べ、久野監督はうなずきながら「実写の通りにやると口が小さくなったりするので、ここで大きめに描いたりして“嘘のつき方”を調整しました」と解説した。

アニメーション制作はシンエイ動画と、フランスのスタジオ・Miyu Productionsが共同して行い、シンエイ動画がキャラクターの動きを、Miyu Productionsが背景美術と色彩を担っている。日仏合作となった経緯を問われた近藤プロデューサーは「特殊なアニメーションを作っていくという意識は企画している段階からあったんですが、これはどういう映画になるのかを山下さんたちに説明するのに時間がかかってしまって。そのときにMiyu Productionsから久野さんに『一緒に映画を作らないか』ってオファーがきたところ、久野さんが『化け猫あんずちゃん』を逆プレゼンをしてくれて、それを向こうが面白がってくれて一緒に作ることになりました」と述べた。

Miyu Productionsとの作業を通じて、久野監督は「日本ですとアニメーションを制作するうえでの役割が細かく別れていますが、フランスはけっこういろんな仕事が混ざっているという印象。作品を作ることに対して大きな視点で見ている方たちだなと思いました」と感想を語る。物語の主な舞台はあんずが暮らす寺であり、日本特有の要素をフランスのスタッフが描くことで齟齬が生じなかったかとМCから問われると、久野監督は「私も一緒に現場に行っていましたし資料もたくさんあったので不思議なことは起こりませんでしたね。(Miyu Productionsが担当した背景は)見るたびに楽しくてしょうがなかったです」と微笑んだ。

制作プロセス全体を振り返り、近藤プロデューサーは「企画が軌道に乗るまでの苦労はありましたけど、始めは山下さんと久野さんと自主映画を撮っているような印象だったので、こうして映画になっていく過程は面白かったですね」とコメント。久野監督も「変わっているけど、かわいい作品になっているなと思います。作れてよかったです」と頷く。山下監督は「いろんなスタッフが関わって、時間をかけてどんどん形になっていく過程はすごく面白かったですし、このチームとこの原作だからできたという感じですね。おそらく8年かかっているんですが、こんなに時間をかけて作ったのも初めてで、不思議と終わった気がしないです。作品として完成した、と腑に落ちるのはもう少し先ですね」と余韻を感じている様子だった。

※「AnimeJapan」のイベントレポートなど関連記事はこちらから!

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「化け猫あんずちゃん」

2024年7月全国公開
監督:久野遥子山下敦弘
原作:いましろたかし「化け猫あんずちゃん」(講談社・KCデラックス刊)
脚本:いまおかしんじ
キャスト(声・動き):森山未來、五藤希愛
制作:シンエイ動画、Miyu Productions
製作:化け猫あんずちゃん製作委員会
実写制作協力:マッチポイント
配給:TOHO NEXT

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(c)いましろたかし・講談社/化け猫あんずちゃん製作委員会

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西尾雄太 NISHIO,yuhta @snobby_snob

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