今回のプロジェクトに「ブラック・ジャック」を選んだ理由は?
イベントにはプロジェクトに参加している慶應義塾大学の理工学部教授・栗原聡氏、手塚プロダクションの取締役・
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また手塚は、内容については読者の皆さんの感想によるとしつつ、実際にできあがったAIによる作品を見てとあることに驚いたと言う。それは「手塚作品の核とも言える“生き物の尊厳”というテーマが入っていた」ということ。それだけではなく、現代医療のテーマやこれから起こりうるであろう問題が存分に取り込まれており、より「ブラック・ジャック」らしい、手塚治虫らしい作品に仕上がったのではないかと明かした。
今回のプロジェクトではプロット制作からシナリオ制作、新キャラクターの生成まではクリエイターとAI、ネーム制作と作画はクリエイターが担当。栗原氏はプロット、シナリオ制作にてAIとの相互的な“会話”をより円滑にするために、クリエイターと生成系AIの間に “仲介AI”を設置したと明かす。仲介AIには「ブラック・ジャック」の本編200話分のデータと短編形式のマンガ200話分を読み込ませており、クリエイターがプロット、シナリオの要素を入力すると、仲介AIを通してプロンプトが生成され生成系AIに伝達される。そして生成系AIによって作られた内容が整理され、再びクリエイターのもとに戻されることでプロットを詰めていったという。AIへの質問、回答、質問を繰り返すことでプロットのさまざまなパターンを検証でき、物語が作られていったということだ。
プロット制作は5つのチームに分かれて制作
プロットは5つのチームに分かれて制作。石渡は「『ブラック・ジャック』にはサスペンスからヒューマンドラマまで、いろんな物語が入ってくる。1人の考えではなくいろんな考えを入れながら、プロットを作ってみようと思い5つのチームに分けたのですが、そういった(複雑な)ものはAIも作れるのかどうかという実験も兼ねています」と述懐。チームには林監督も参加しており、実際にAIを使ったプロット制作について会話のスピードが早くて楽しかったと述べ、「ブラック・ジャックはほぼすべての病気を治している天才外科医なので、果たして彼に治せないものはあるのか、人体構造は治せるけれど機械は治すことができるのか。そもそも治すことを拒否するのか、受け入れるのか、というところからAIに質問を投げかけていきました」と語った。またタイトルの要素にもなっている「機械の心臓」も、AIが決めたということも明かされた。
プロットの段階で中身を見た週刊少年チャンピオン編集部の田中氏は、「(AIが作成した)出来事自体は面白いと思いましたが、そこに至るまでのキャラクターの心情や感情が足りないかなと。AIにはそういったところは苦手なのかなと思います」と指摘。一方でリテイクが何回でもできるのは面白かったと話し、「新たなアイデアもすぐに大量に出せますし、今後、アナログ作画からデジタル作画へと移行したのと同じように、マンガのちょっとしたアシストにAIを活用することもあるのではないかと思いました」と語る。栗原氏も、「AIには機械的な説明やストーリーの骨格作成には強い一方で、ストーリーの背景にある心情や空気感の生成はまだ弱いです。ストーリー展開には手塚治虫らしさや意外性がちりばめられていますが、心情の機微を表現することは苦手かな」と述べた。
新キャラ作成からネーム、作画までの道のり
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「ブラック・ジャック」新作がお披露目に、人間とAIとの共同作業で得られたものとは
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