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「魔女の花屋さん」浜弓場双が花と魔法の世界を舞台に描く、一筋縄ではいかない少女たちの物語
2024年12月6日 17:00 PR浜弓場双「魔女の花屋さん」
「魔法で人を幸せにできる魔女になりたい」。そんな願いを胸に、田舎から出てきたアリー=エイベル。彼女が出会ったのは「人は魔法に頼らなくても幸せになれる」と語り普通の花を売る変わった魔女のヨシノ=ヨークだった。アリーはそんなヨシノのもとで、魔法で叶えるはずだった誰かの“幸せ”をその手で叶えていくことになるが……。「ハナヤマタ」や「おちこぼれフルーツタルト」の
文
エルフやドワーフだって、十人十色
約22年前に発表されたSMAPの楽曲「世界に一つだけの花」。その歌詞の中では、人間を花に例えて、十人十色なのだからそれぞれの方向性で輝いていけばよい、ということが謳われる。確かに、いくら同調圧力が強いと言われる日本であっても、一人として同じ考えの人間はいない。個々それぞれ、悩みを持って生きているのである。
対して、マンガのキャラクターはどうか。例えばエルフやドワーフといった他種族のキャラクターが描かれると、途端にエルフだから長命で、その種族に沿った悩みを抱えていて、とテンプレートで描かれることがある。いちマンガ読みとしてはそういったテンプレートも大好きなのだが、エルフやドワーフだって人間と同じ十人十色のはず。その悩みまでフォーカスした作品があったとしたらどうなるのだろうか?と考えたこともあった。
それを優しい筆致で描いたのが、浜弓場双による「魔女の花屋さん」だ。ある魔女に憧れて田舎から出てきた少女、アリー=エイベルが、「魔法で人を幸せにできる魔女」を目指して、魔女・ヨシノ=ヨークの弟子(仮)として暮らしていく様子を描いたハートフルファンタジーである。本作ではアリーがエルフやドワーフ、獣人などさまざまな種族の人々と、花と思いを軸に交流を重ねていく。その様子が心温まるったら……!
一筋縄ではいかない、愛おしい関係性
そもそも本作を執筆している浜弓場双といえば、「ハナヤマタ」や「おちこぼれフルーツタルト」といった代表作でも描かれたように、かわいい女の子たちそれぞれの悩みにスポットライトを当てながら徐々に成長していく姿を紡ぐ名手。本作は先に挙げた2作品と異なり舞台こそ魔法が使える世界になっていて、人間以外の他種族も登場するものの、キャラクターたちの悩みや思いにスポットライトを当てている点は共通する。
例えば、第2話から登場する新米シスターのオリビア=オークスは魔力が少ないエルフ。アリーは、魔力をあまり持たないが故に寿命も短いという彼女と交流を深め、悩みを自らの行動力で解決していく。まだ魔女としても見習いであるし、花屋としても未熟な彼女が頭を振り絞って出した方法によって、オリビアとの仲はどんどん深まっていくのだ。
そんな人々の悩みをアリーが持ち前の天真爛漫さと明るさによって解決していくことで、まだ彼女を弟子として認めていないヨシノも徐々に態度を変えていく。とはいえ、ツンデレなので直接アリーを認めるような言葉は伝えないのだが……。その一筋縄ではいかない関係性も愛おしい。
色鮮やな世界で、物語を牽引していく謎と悩み
──と、ここまで悩みを描いていることを主軸に「魔女の花屋さん」に触れたものの、「では、かなり重たい話なの?」といえばそんなことはない。アリーが底抜けに明るいことと、花というキーアイテムで作中が彩られていることもあって、モノクロのマンガではあるもののとにかく色鮮やかで読みやすい作品になっている。緻密な描き込みによって世界の細部まで命が宿っており、そこでアリーたちがどんな行動をしていくのか、読み始めたらとにかく手が止まらなくなるはずだ。もちろん浜弓場双が描くかわいらしいキャラクターたちも魅力の1つ。アリーやヨシノ、オリビアをはじめ、さまざまな個性を持ったキャラクターたちの可憐な様子を眺めるだけでも楽しくなる一作だ。
同時に、物語を牽引していくのはいくつかの謎。ヨシノがアリーを弟子に取らないのは何故なのか。そしてアリーが魔女を目指したきっかけとなった人物は何者だったのか? その顛末が明かされるまでに、ぜひ「魔女の花屋さん」を第1巻から読んでみてはいかがだろうか? 各話のキーアイテムとなる花に思いを馳せつつ、キャラクターの悩みと自分の心をリンクさせて、アリーのひたむきさに励まされてほしい。
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