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「ゆめねこねくと」マガジンの“ちょいエロ枠”を継承する、ドタバタ日常SFラブコメ
2024年11月15日 17:00 PR澤田コウ「ゆめねこねくと」
高校に入学して1週間、スタートダッシュに失敗し孤独な生活を送っていた地味な高校生・高宮遊日。そんな彼のもとに、突然、ポコツン星人のナノが現れる。遊日の「友達が欲しい!」という悲痛な叫びを聞き、自社の商品を紹介しにやってきたというナノだったが、遊日が売りつけられた商品は、宇宙危険生物指定ランクSの未知の生命体で……。ナノのトンデモ商品によって、遊日の高校生活は更なる混迷を極めていく。かわいくて、ちょっぴり刺激的なドタバタラブコメが始まる。
文
マガジンの“ちょいエロ枠”の美学を正統に継承
2022年に週刊少年マガジン(講談社)の第108回新人漫画賞で入選を果たし、以来読切を中心にコンスタントに作品を発表してきた気鋭のマンガ家・
本作の主人公は、入学初日から1週間病欠したためにすっかりクラスで孤立してしまった男子高校生・高宮遊日。「1人でもいいから友達が欲しい」と苦悩していた彼のもとに突如としてナノと名乗る宇宙人の少女が現れ、強引に自社の商品を売り込み始める。しかし「愚痴や悩みを聞いてくれる」という触れ込みのその商品は、実は危険な寄生生命体だった。不運にも謎の生命体と一体化してしまった遊日は、行きがかり上居候となったナノとの奇妙な共同生活を開始。遊日の学友たちをも巻き込みながら、さまざまな騒動が面白おかしく繰り広げられていく。
物語の構造としては、伝統的な「ドラえもん」フォーマットを受け継ぐ作品の一種と言っていい。遊日という平凡な主人公の日常に異分子としてのナノが紛れ込んでくる構図は、乱暴に言ってしまえば「もしドラえもんがエロい美少女だったら」の世界観。しかもナノは、四次元ポケットこそ持ち合わせないものの「モテグランス」や「お見透視メガネ」といった宇宙アイテムを遊日に貸与する(売りつける)役割も担う。この設定により、読者は黄金パターンゆえの親しみやすさを無理なく感じ取ることができるはずだ。
複数ヒロインが群雄割拠する点においては、王道のラブコメ作品であるとも言える。少年誌に掲載するにはやや過激すぎるお色気シーンが満載である点は、週刊少年マガジン誌上で連綿と続いてきた“ちょいエロ枠”の美学を正統に継承している感もある。作者の単純な画力の高さも含め、押さえるべきポイントをしっかり押さえた基礎体力の高い作品と評して差し支えなかろう。
造形美、お色気シーンの描き込み、テンポのいいボケ/ツッコミ
作品の見どころには次の3点を挙げたい。美少女キャラクターたちの造形美、お色気シーンにおける情熱的なまでの描き込み、テンポのいいボケ/ツッコミの応酬だ。本作では遊日を除く全キャラクターが基本的に美少女のみで固められており、シンプルに高水準なビジュアルを堪能しやすい作りとなっている。そしてそんな彼女たちは作中で頻繁にあられもない姿を披露する運命を課せられているわけだが、そうした場面における描き込み具合、特に下着類の精細な筆致には目を見張るものがある。さらに彼女たちの多くがボケ体質を有しているため、切れ味鋭い遊日のツッコミがひっきりなしに畳みかけられる痛快さも本作の大きな魅力だ(その遊日自身もたびたび大いにボケる)。
それに加え、登場人物のほとんどが極めて大らかな性格を備えている点も見逃せない特色のひとつ。例えば遊日は学校での“ぼっちポジション”を日頃から嘆いているが、そこに深刻さは皆無である。ナノをはじめとする美少女キャラクターたちにしても、どれだけ盛大に脱がされようともさほど意に介する様子が見られない。全キャラクターが一様に屈託なく能天気なリアクションを取り続けるさまは、本作独特の小気味よい読み味に直結している。
総じて本作は、難しいことを何も考えずにただただ「かわいい! エロい! 笑える!」と軽はずみに読めてしまう、娯楽指数の高いマンガだと言える。本稿執筆時点での最新話にあたる第11話ではバトルマンガ然とした描写などの新たな一面も見せ始めており、今後の展開にも要注目だ。単行本は現在第1巻までしか刊行されていないので、将来的に古参を気取るためにも今からチェックしておくべき作品だろう。
「ゆめねこねくと」第1話を読んでみよう!