「ゆびさきと恋々」1巻より。

マンガ原作者のお仕事 第3回 [バックナンバー]

森下suuと「ゆびさきと恋々」

「ゆびさきと恋々」ではキャラクターの感情を一番に考えています

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“マンガ原作者の仕事”にスポットを当てた本コラムは、なぜマンガ原作者という仕事を選んだのか、どんな理由でマンガの原作を手がけることになったのか、実際どのようにマンガ制作に関わっているのかといった疑問に、現在活躍中のマンガ原作者に答えてもらう企画。原作者として彼らが手がけたプロット・ネームと完成原稿を比較し、“マンガ原作者の仕事”の醍醐味や奥深さに迫る。

第3回は「日々蝶々」「ゆびさきと恋々」などで知られ、原作担当のマキロと、作画担当のなちやんからなる2人組ユニット・森下suuが登場。原作担当のマキロに、原作やネームを手がける思いを語ってもらった。

構成 / 増田桃子

プロットの裏話、完成原稿を見たときの感想

「ゆびさきと恋々」5巻より。

「ゆびさきと恋々」5巻より。

藤の花のシーンはこの回のストーリー上、藤の花を出したいけど作画が大変かなと思って前もって聞きました。
「藤どうかな?」
「藤いいねー!」
そんな会話をして登場させる形になりました。ここのモノローグ、こういう言葉の並びは客観的に見ると少し照れくさいんですが、カッコいい絵を描いてくれるっていう信頼があってこそのモノローグだと思います。作画の仕上げで一眼レフで撮ったように手前がぼかした感じになっていて、見た瞬間「わーすごく素敵!」ってなりました。

「ゆびさきと恋々」1巻より。

「ゆびさきと恋々」1巻より。

1話目の冒頭のネームで、雪が初めて逸臣に対して手話を使うシーンなので、今後も回想で使いたいと思っていました。ここは印象的になるように描いてもらっています。

「ゆびさきと恋々」4巻より。

「ゆびさきと恋々」4巻より。

指を絡めるシーンは作画ですごく指の動きが艶っぽくなっていてきゅんとしました!
いつも奥行きが作られていってマンガが何十倍も面白くなるし画面構成がいつもすごい。
ネームではただの丸で描かれたキャラクターが誰が見てもカッコいい、かわいい絵になって、表情、佇まい仕草なども合わさってキャラクターに血が流れてる感じがします。仕事仲間として尊敬や感謝の気持ちもありますが、友達としてもめきめき進化していくことにすごいな~としみじみしています。もっと面白いネームを描かなきゃな……足引っ張っぱりたくないなといつも考えさせられます。

マンガ原作者になったきっかけ

ユニットでデビューして、ずっと相方のなちやんと2人でマンガを作ってきたのでネームと作画、作業は完全に分かれてはいますが原作者というとなんだか烏滸がましい感じがします。
どうして私がネーム描いているのかというと、2人とも結婚した後、友情の記念で一緒にマンガを描いてみようという話になり、なちやんが絵を描きたいと言ったのでそれじゃあ私はネーム描こうかな~という感じで決まりました。
何作か投稿してデビュー後、読み切りを載せていただきつつ連載のコンペにほぼ毎月出してたんですが1年くらい落ち続けて……読み切りに描いた「日々蝶々」がその後連載になりました。

最もこだわっている作業

「ゆびさきと恋々」3巻より。

「ゆびさきと恋々」3巻より。

「ゆびさきと恋々」ではキャラクターの感情を一番に考えています。どうすれば読んでくださる方にうまく伝わるのかなと言葉、空気感なのかそのへんは感覚的で今もぐるぐると試行錯誤中です。
作業的にやっていることと言えば、雑誌にモノローグの規定の書体があるんですけど、キャラクターの感情やテンションが変わって見えてしまうので別の書体に変えてもらっています。校了のときにできるだけそのときのキャラクターの感情になるように言葉自体の直しや文字の大きさ、配置も微調整しています。いつも細かく指定するので担当さんもすごく大変だと思います……。

マンガ原作者という仕事の魅力

「ゆびさきと恋々」5巻

「ゆびさきと恋々」5巻

下絵を一番最初に見れるときはファン目線でとてもわくわくします。校了紙で画面が仕上がった状態を見れるときもです。
あとこれは原作側だけのことではないのですが読者の方からファンレターをいただいて「きゅんきゅんしました」と言っていただけるとうれしいですし、深く読みとってくださる方もいたり応援してくださる方の存在がとてもありがたいです。
サイン会など人生において貴重な経験をさせてもらえるのもすごいことだなと思います。

マンガ原作者を目指す人へ

アドバイスできる立場にはまだないですが

  • 人の考えにあまり否定的にならない。この人はこう言う背景があってとか相手の立場になって考えてみる。
  • 心に自分の作品のファンとアンチを作る。
  • 締め切り前は心がすり減ると思うので、できるだけ可能な限り相方さんに作画の余裕が持てる期日でパスしています。私はネームがとても遅いしもっと直せるのではと思ってしまうので、コミックス作業でお休みいただけてるときなどに時間をあてています。

誰かのエンタメを作るというのは原作者、マンガ家に限らずとても大変なことだと思います……うまく描けないときや原作サイドの悩み、プレッシャーもあるだろうし私もいつも不安です。リフレッシュしつつ体には本当に気をつけてほしいです!

森下suu(モリシタスウ)

原作担当のマキロと、作画担当のなちやんからなる2人組ユニット。2010年、ザ マーガレットに掲載された「あのて このて」でデビュー。2012年に「日々蝶々」をマーガレット(ともに集英社)にてスタートさせ、初連載作でありながら「このマンガがすごい!2014」オンナ編4位にランクインという快挙を成し遂げる。現在はデザート(講談社)にて「ゆびさきと恋々」を連載中で、9月13日に最新5巻が発売される。

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【マンガ原作者のお仕事 第3回】
第2回は「日々蝶々」「ゆびさきと恋々」などで知られる森下suuが登場。原作担当のマキロに、原作やネームを手がける思いを語ってもらった。
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