「マリッジトキシン」1話目のネーム(左)と完成原稿(右)。(c)静脈・依田瑞稀/集英社

マンガ原作者のお仕事 第12回 [バックナンバー]

静脈と「マリッジトキシン」

「絵」以外の武器をいくつ用意できるか

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“マンガ原作者の仕事”にスポットを当て、なぜマンガ原作者という仕事を選んだのか、どんな理由でマンガの原作を手がけることになったのか、実際どのようにマンガ制作に関わっているのかといった疑問に、現在活躍中のマンガ原作者に答えてもらう当コラム。原作者として彼らが手がけたプロット・ネームと完成原稿を比較し、“マンガ原作者の仕事”の奥深さに迫る。

第12回には少年ジャンプ+で連載中の「マリッジトキシン」の原作者・静脈が登場。「ゲンロン ひらめき☆マンガ教室」をきっかけにマンガ原作者という仕事を知ったという静脈が、デビューまでの経緯や原作者としてのこだわり、“生き残り方”など明かしてくれた。

構成 / 増田桃子

「マリッジトキシン」のネームの裏話、完成原稿を見ての思い

「マリッジトキシン」1話目のネーム(左)と完成原稿(右)。(c)静脈・依田瑞稀/集英社

「マリッジトキシン」1話目のネーム(左)と完成原稿(右)。(c)静脈・依田瑞稀/集英社

ネーム原作をやらせてもらっているのですが、作画の依田(瑞稀)先生にネームを清書していただいていまして、その修正が毎回素晴らしいと思っています。
依田先生は、キャラの感情とアクションの躍動感を描くのがめちゃくちゃうまく、より読者に伝わるよう洗練された完成原稿が返ってくるので、感謝しかないですね。
たまにちょっと無茶振りなネームを描いてしまうのですが(一応、回避案も提案しています)、期待を遥かに超えたクオリティの作画が上がってくるので、すごすぎる……と。
キャラクターデザインは、自分のほうからもイメージを提案しているのですが、基本は依田先生にお任せしています。できあがったキャラデザは想定外の場合もあるのですが、そのイメージで読み直すと確かにしっくりきて、キャラの解像度が上がり動かしやすくなることが多いです。

マンガ原作者として仕事を始めるに至った経緯

昔から趣味でマンガを描いていたのですが、就職してから「ゲンロン ひらめき☆マンガ教室」というスクールに通うようになりました。「絶対マンガ家になりたい」と強く願ったことはなかったのですが、その教室でプロのマンガ家の先生に「ネーム原作」という仕事があると聞き、 絵に自信がなかった自分はその道を目指そうと思いました。
それから、集英社の少年ジャンプ+編集部が運営しているジャンプルーキー!というマンガ投稿サイトに、現在連載している「マリッジトキシン」のプロトタイプのネームを投稿しました。そのネームを読んでいただいた編集者の方に担当についてもらい、読み切りのネームを描いてデビューしました。

原作担当として最もこだわっている作業

「マリッジトキシン」2話目のネーム(上)と完成原稿(下)。(c)静脈・依田瑞稀/集英社

「マリッジトキシン」2話目のネーム(上)と完成原稿(下)。(c)静脈・依田瑞稀/集英社

1話の中に、必ず1つ以上は見せ場を作ることを意識しています。
それは、主人公やヒロインの感情が強く伝わるシーンだったり、ありえないようなぶっ飛んだアクションシーンだったりと、とにかく読者の記憶に残るようなインパクトのあるシーンを作ることです。
また、ページ単位においても、細かい見せ場を作らなければ読者が離れてしまうと思っていて、1ページの中にキャラの表情やアクション、気になるセリフなどをなるべく入れるようにしています。

マンガ原作者という仕事の魅力

自分が想像した何百倍も、面白いマンガができあがってくることです。

マンガ原作者を目指す人へのメッセージ

「マリッジトキシン」1巻 (c)静脈・依田瑞稀/集英社

「マリッジトキシン」1巻 (c)静脈・依田瑞稀/集英社

特に原作者には、企画性の強いネームが求められる傾向があるのかなと思っています。
世の中で広く見られている作品(マンガ以外も含め)をチェックして、こういう感じが受け入れられているのか……と分析し、自分だったらどう描く……? と創作に落とし込むと言いますか……偉そうに書いてますが、自分もうまくできてる気はあまりしないです。
ただ、「絵」という、マンガにおいてぶっちぎり最強の武器は使えないので、それ以外の武器をいくつ用意できるかが、原作者の生き残り方なのかなと思ってます。

静脈(ジョウミャク)

静脈

静脈

少年ジャンプ+で発表した読み切り「ハイパーハードスペシャルミッション」で2021年にデビュー。2022年4月より、少年ジャンプ+で「マリッジトキシン」を連載開始する。「マリッジトキシン」最新7巻は12月4日に発売。

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