クラブに集まった面々は…
「WOW!いきなり本読み!#2」収録レポート
「WOW!いきなり本読み!」第2回の舞台は郊外の古風な“クラブ”。壁にはマリリン・モンローやオードリー・ヘプバーンの古びたポスター、えいひれや魚肉ソーセージといったメニューが貼られ、ワインレッドのソファがゆったりと置かれたフロアを、複数のミラーボールが照らしている。通常営業時はバンドが入るのであろう、ドラムや木琴などの楽曲が置かれた一角は、小さいけれどステージのようだ。
収録15分前、白シャツにエンジのベスト、黒の蝶ネクタイを着けた“マスター”風の装いの岩井がフロアに姿を現した。続けてキャストたちも顔を見せ、フロアを見回しながら部屋の一番奥のソファに腰掛けた。
撮影は程なくしてスタート。岩井が「この企画は、集められた俳優さんたちがどのように作品を立ち上げていくのかを知る、稽古場観察ドキュメンタリーです」と趣旨を説明し「今のお気持ちは?」とキャストに話を振ると、高橋は「何をどうしていいのか……このシチュエーションもシチュエーションだし」とミラーボールを見上げて苦笑いすると、秋山も「私も場所のことが気になって」と続く。伊藤がそんな先輩たちの様子を見て「皆さんについて行きます!」と小柄な体をさらに固くしてあいさつすると、岩井がみんなの緊張をほぐすように「慎重になりすぎず、早めに“大振り”しちゃったほうが楽になりますよ!」と声をかけ、場を和ませた。
そして岩井がさっそく1回目の配役を告げ、本読みがスタート。3人は自身に割り振られた2役を、キャラクターや人間関係がまったくわからないのに、ガラッと演じ分けてみせる。岩井が「(役が)できるまでが早いですね!」と笑顔を見せると、キャストもほっとした様子を見せた。同じシーンを同じ配役でもう一度読んだあと、今度は年齢や性別など関係なく、岩井はどんどん配役を変えていく。
あるシーンで「最近燻製機を買ったという設定で、燻製機の魅力を(アドリブで)語ってください」と岩井が振ると、秋山は「ええ? 燻製機!?」と困った顔を見せつつ、燻製機の魅力についてバッチリと熱弁を振るった。さらに伊藤は、登場人物の心をすくい取るように多彩に表情を変えてみせ、高橋は役の性別や年齢にとらわれず、登場人物の人間性を打ち出すような本読みを披露した。
前半の1時間がスムーズに終わり、休憩時間になると、岩井は「とっておきのプレゼントがあります!」と、キャストをステージに近い席へと案内した。そこにどんな“プレゼント”が用意されていたかは、ぜひ放送で確かめてほしい。
後半では、ある登場人物の意外な一面が明らかになる。その役を秋山が演じると、艱難辛苦を知ったクールな大人の女、高橋が演じると悲哀と愛嬌が入り混じった中年女性と、同じ役がまったく違ったタイプの女性に見えてくる。そんな2人の演技につられるように、伊藤も身振り手振りを交えながら徐々に大胆に役へのアプローチを始め、物語はヒートアップ。さらに3人はいつの間にか台本から顔を上げ、お互いの目を見ながらセリフを発するようになり、クラブという空間が醸し出すムードも相まって、そのまま舞台の1シーンを見ているような時間が流れた。
収録を終えた岩井に手応えを尋ねると、「今回は今までの中で一番“名人芸”が見られちゃうかも。秋山さんはもちろん、ラストの高橋さんはすごかったですね」と即答。「伊藤さんが最後、『今日は来て良かったです』と言ってましたけど、本当にその言葉が物語ってますね。高橋さんご自身もおっしゃっていた通り、途中から役の性別はどうでも良くなると言うか、ただ人間としての悲しみみたいなものが、セリフからポーンと立ち上がってきた。初見であそこまでできちゃう人って、普段、1カ月の稽古で一体何してるんですかね?(笑)」と笑顔を見せた。
また2回目の「WOW!いきなり本読み」収録だからこその発見もあった。「ロケーションがあったほうが作品世界がつかみやすいのかなと思って、1・2回と作品にちなんだ場所でやってみたけれど、逆に作品にまったく関係ないような日常的な場所とか、稽古場のように何もない場所で読んだほうが、俳優さんたちが本読みの力だけで作品世界を作り出す様がもっと伝わるのかもしれませんね」と思いを巡らせつつ、「そういう意味でも、演劇をやったことがない一般のお客さんはもちろん、高校や大学で演劇をやってる人たちにもこの番組を観てもらえたらなって。俳優さんが台本から何を読み取り、どんなことをしているのか、そのすごさがよりわかってもらえるんじゃないかと思うんです」と「いきなり本読み!」シリーズに対する思いを語った。