劇場を飛び出して山の教室へ!岩井秀人×水川あさみ×上白石萌歌×皆川猿時が繰り広げる「WOW!いきなり本読み! #1」収録現場レポート

岩井秀人が企画・進行・演出を手がける人気企画「いきなり本読み!」のテレビ版「WOW!いきなり本読み!」が、5月15日にWOWOWライブで放送&WOWOWオンデマンドで配信される。テレビ版では劇場を飛び出し、ロケ収録スタイルで本読みを実施。初回には水川あさみ、上白石萌歌、皆川猿時が参加した。いずれも映画・舞台でその実力は実証済み。3人は初見の台本を前に、どんな“本読み”を披露したのか?

ステージナタリーは、その収録現場に潜入。なお当日読まれた作品については、放送で“いきなり”明かされるので、ここではどんな作品が読まれたか想像しながら、レポートを読んでほしい。

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 広川智基

初回ロケは、爽快な風が流れる山の教室

3月下旬、「WOW!いきなり本読み!」の第1回収録現場に潜入した。取材の数日前にもらった当日の案内には、都内は都内だが、思いも寄らない郊外の住所が。「ロケ……? 一体、どんな収録になるんだろう?」とドキドキしながら電車に揺られること約2時間、着いた先は山奥の廃校をリノベーションした、とある施設だった。

収録日は雲ひとつない晴天で、近くの山にはまだところどころ桜が咲いているような、まさに春の陽気。1フロアに6つ並んだ教室の窓はすべて開け放たれていて、清涼感のある風が廊下を通り抜けて行く。廊下の突き当たりにある1部屋が演出・岩井秀人の控室で、収録15分前になると、岩井は控室から出て収録に使用する部屋へと向かい、和やかな雰囲気で撮影スタッフと最終チェックを始めた。それが終わると今度は俳優たちの控室を回り、それぞれと挨拶。岩井の来訪で、各部屋からワッとにぎやかな笑い声が上がった。

岩井秀人

収録は定時にスタート。岩井は、4つ並べられた机の一番下手に着席した。舞台版では、法被とキャップが岩井のトレードマークだったが、今回は赤に白いラインが入ったジャージを羽織り、首からストップウォッチを下げていて、いかにも体育教師といった感じ。しかし装いが多少変わっても、内容はいつも通りで、岩井は冒頭で企画の概要をざっと説明し、さっそく俳優たちを呼び込んだ。

舞台版の「いきなり本読み!」は、出演者に演目を事前に告知せず、観客の前で台本を渡し、読み合わせをする企画だ。演出の岩井が、その場で配役やニュアンスを変えることもある。WOWOW版の「WOW!いきなり本読み!」でも、出演者は何も知らない状態でカメラの前に現れた。

「WOW!いきなり本読み!」第1回に出演するのは、水川あさみ、上白石萌歌、皆川猿時の3人だ。上白石は「いきなり本読み!」初参加、皆川は舞台版の第1回、水川は第4回にそれぞれ出演している。緊張のせいか、はにかむような何とも言えない笑顔で登場した3人の様子を見て、岩井が「台本に書かれた役を演じるのが俳優ですが、何を演じるかもわからない今、ここにいる皆さんは何ですか?」と問いかけると、皆川は「本名がトシミなので……トシミと猿時の中間ですね」と答える。「では俳優になっていなかったら何をしていたと思いますか?」という岩井の質問には、「地元の整体師だと思います」(上白石)、「農業をしていたかった」(水川)、「串焼き屋でバイト」(皆川)とそれぞれに返答し、意外な“自己紹介”が済んだところで、本編に突入した。

序盤からすでに見どころ満載!

岩井秀人

岩井の合図でそれまで伏せられていた台本が開かれ、いよいよ本読みがスタート。俳優たちはどんな物語かもまったくわからないまま、岩井に振られた役を即興で演じていく。2ページほどのシーンを読み終え、水川は「まだつかめないなあ」、上白石は「どんな話なんだろう?」と率直な感想を述べる。岩井はそれぞれの役のヒントになるような情報を伝えると共に、ちょっとした演出も足しつつ、「……でもこれ、台本を渡して10分後に言うことじゃないですけどね」と苦笑した。

配役を変えて同じシーンを繰り返すと、水川は対照的な役を一瞬で切り替えて見事に演じ分け、皆川は初見とは思えない勢いと豪快なセリフ回しで、廊下中に声を響き渡らせた。上白石は、岩井が加えた演出を忠実に守ろうと、“巻き舌”でのセリフに挑戦するが……その結果に誰よりも本人が一番驚いた顔を見せ、現場を笑いで包んだ。序盤から見どころ満載となり、岩井も出演者も、お互いの演技やアプローチに意表を突かれて大笑いしたり、感心し合ったりとさまざまに表情を変えながら、本読みは進行していった。

左から岩井秀人、上白石萌歌、水川あさみ、皆川猿時。

またあるシーンでは、皆川と水川が声だけで見せるラブシーンが繰り広げられた。笑いに寄らず、“イケメン声”でキッチリ演じる皆川と、それを“純”な演技で受け止めた水川に、その場にいた誰もが引き込まれる。岩井が「皆川さん、もっとダンディに」と声をかけると、皆川はすぐさま“ダンディ化”し、現場に大きな笑いが起きる。「皆川さん、この役を演じているとき、なぜか彫りが深くなってます!」と上白石が指摘すると、さらなる大爆笑が起きた。

最後まで予断を許さない「いきなり本読み!」

上白石萌歌

休憩時間を挟んで、後半はジェットコースターのように物語が急展開。1場読み終わるごとに俳優たちは「えー! えー!?」と驚きの声を上げつつ、思いに急かされるように次へ次へと読み進んでいく。それぞれの役のイメージを、くっきりと大胆に描き出し、物語の輪郭を作っていく水川。自分が読んでいるときは人一倍シリアス、聞いているときは誰よりも楽しんだ笑顔を見せる上白石。小学生から老人まで、男女の壁も軽々と超えて、それぞれの登場人物を鮮やかに演じ分けていく皆川。そんな3人のチームワークが徐々に立ち上がってきたところで撮影は終了。名残惜しげに場を去っていく俳優たちの、疲労感と達成感、そして演技ではない笑顔を、放送でぜひ見届けてほしい。

なお番組では“反省会”と題し、収録を終えた岩井と俳優たちが、帰りのバスの中で1日を振り返る座談会も放送されるので、こちらもぜひお楽しみに。

ロケバスの中で。前列左から岩井秀人、皆川猿時、後列左から水川あさみ、上白石萌歌。