少年社中20周年 劇団員座談会|“腐らない腐れ縁”の12人が語る社中の軌跡

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長ゼリフが出てこなくて、本能的に「リセットー!!」って(井俣)

「エレファント」(2002年)

「エレファント」(2002年)

井俣 俺はやっぱりつらい、きつかった思い出が印象に残ってる。02年に「エレファント」を2バージョンで再演したとき、1999ver.では主人公、2002ver.では象博士っていう主人公を導く役をやったんだけど。2002ver.の初日で長ゼリフが出てこなくなっちゃって。そのとき初めて、「リセットー!!」って叫んで、セリフを最初から言い直すのを本能的にやってしまって……。

廿浦 井俣さんの「リセット」、それが最初だったんですね(笑)。青山円形劇場でやった「ハイレゾ」(04年)のときも、井俣さんが全然舞台に出てこなくって。そのシーンに出てる人がないセリフをバンバン言って、がんばって場をつないで。それでも「来ねえな、何だこの空気……」って思ったら井俣さんがバーッと出てきて、「遅れてすまん! リセット!!」って。俺たちが30秒くらい茶番劇してたの、なんだったんだよ!?って思った(笑)。でもお客さんはドカンと沸いて……なんだよこっちが正義かよ、みたいな! 演劇の理不尽をそこで覚えましたね。

長谷川 ツヅさん(廿浦)の信頼もリセットされちゃった。

一同 ははは!

井俣 「三人どころじゃない吉三」(16年)で(参照:少年社中「三人どころじゃない吉三」本編衣装じゃないチラシと特設サイト公開)ゲストだった鈴木拡樹も「リセット」を多用してましたよ。

加藤 それはセリフだよ!

廿浦 「拡樹くんもそういうことすんだ!?」って一瞬思っちゃった(笑)。井俣さんのは勝手にやってることでしょ!

川や携帯を相手に自主稽古

──稽古や本番の前に行っている準備はありますか?

廿浦 太郎くん、本番前はよくネタを考えてるよね、日替わりの。本番中も「降りてこない、降りてこない」って言ってて、大丈夫か!?って思うんだけど。あれすごいですね、直前でひねり出すんだなって。

川本 それもまあまあの分量をしゃべるんですよね。

長谷川 誰かが書いた本じゃないから、覚える必要がないんですよ。

一同 おおー。

川本 それができない、普通は。褒めてるよ?(笑)

長谷川 ほんとですか! “喪失”してないですか?(笑)

廿浦 岩田さんはけっこう、本番前も(台本を)読まれてますよね。

左から加藤良子、岩田有民。

岩田 そうですねえ。棒読みでとにかく早く、ぎりぎりまでセリフを言ってます。変な話、それはすごく面白くないんですよ。やっててつらい。でも本番直前にやると、舞台に出た瞬間すごく楽しいんですよ。

一同 ははは!

加藤 本番前じゃないけど、稽古の序盤で煮詰まったら近所の川に行って、河原で稽古してます。1人で役のエチュードをやってると不思議なヒントが出てくることがあって、行きつけの川があるんですよ。白鳥に襲われたりするんですけど、外で稽古するって意外といい。

井俣 わかる! 俺もこれ若い頃からやってるんだけど、時間がないときは携帯で電話する体で本気で走りながら外でセリフを返してる。

川本 それはそれでおかしな人!(笑)

廿浦 社中のセリフだとけっこうなワードを言っちゃうじゃないですか、「目指すべき場所はNASA!」とか。「えっ、あの人NASA行くの!?」ってびっくりされますよ!

井俣 そうだけど、どうしてもセリフを返したいときは本気の音を出さないとビリッと体に入らない。走りながら携帯に言えば「あの人何かあったのかな」くらいに思われるから。

川本 でもさ、携帯がない時代もやってるじゃないですか、お芝居。携帯を持つようになるまではどうしてたんですか。

井俣 電話ボックスがあるじゃん。

川本 嘘でしょ!?

井俣 「言い争ってる遠距離恋愛のカップルかな?」とか、事情があるって思ってもらえるし。

長谷川 (受話器を持つジェスチャーで)「リセットー!!」

一同 ははは!

少年社中とは、腐らない腐れ縁(井俣)

──最後に、皆さんにとって少年社中とはどのような存在でしょうか?

左から長谷川太郎、川本裕之、加藤良子、井俣太良、岩田有民、廿浦裕介。

川本 個人的には部活動みたいだと思ってて、公演は文化祭みたいな。これは本当に悪い意味じゃなくて、まるで少年がやるような「本当に楽しもう!」という。

井俣 僕は少年社中を最初からやってるから……きれいなものに例えることもできるけど、ときめきを持って「家族」とか言えるかというと、そうでもない。結局、“ずっと腐らない腐れ縁”みたいな。腐らねえな、いつまで待てば腐るんですか?という(笑)。

加藤 15周年のときに「守りたいもの」と答えたんですが、それは今も変わってないんです。でも5年前は劇団員とか身内のために守りたかったんですけど、今はお客様を含めて、少年社中に期待してくださっている方すべてのために“守りたい”。昔と同じ言葉なんですけど、範囲が広がったと思います。

廿浦 少年社中は距離感が難しいんですよね。家族って言うほど甘えられないけど、職場って言うほどビジネスライクなわけでもなくて、喜怒哀楽がすごく出てしまう。本当は僕、何に対してもちゃんと距離を置いて向き合いたいんですよ。でも少年社中はそれが外れてしまう、なかなかない場所。

長谷川 ……お風呂みたいですよね。

井俣 え?

川本 話が収束に向かってたのに!(笑)

長谷川 お風呂って入ったほうがいいけど、めんどくさくて入りたくねえなあって日あるじゃないですか。でも入ったら入ったでこぎれいになって、「ああーやっぱ風呂入っといてよかった」と思うんですけど、入るまでがおっくう。少年社中はそんな感じ(笑)。

加藤 それ家の風呂? それとも銭湯みたいな?

川本 良子も話広げるなよ! どっちだっていいよ!

一同 ははは!

足を大きく開き、胸を張った“社中立ち”を披露する劇団員たち。左から川本裕之、内山智絵、山川ありそ、長谷川太郎、加藤良子、堀池直毅、井俣太良、大竹えり、岩田有民、廿浦裕介、杉山未央、竹内尚文。
「少年社中20周年記念第三弾 第35回公演『機械城奇譚』」
2018年8月30日(木)~9月9日(日)東京都 ザ・ポケット
「少年社中20周年記念第三弾 第35回公演『機械城奇譚』」

脚本・演出:毛利亘宏

出演:井俣太良、大竹えり、岩田有民、堀池直毅、加藤良子、廿浦裕介、長谷川太郎、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、川本裕之

あらすじ

舞台は“機械城”と呼ばれるとある店。その店の古物商は、壊れた不思議な機械だけを取り扱っている。機械たちは夜な夜な人の言葉で話し、誰が一番素敵な機械かを決めようとしていた。彼らが毎晩宴を繰り広げる中、ある日機械城に新たな機械・時計がやってくる。彼は「自分は自由に時を操ることができる」と告げ……。その夜、奇跡は起きる。

井俣太良(イマタタイラ)
1975年9月24日生まれ。少年社中創立メンバー。
岩田有民(イワタユウミン)
1976年7月5日生まれ。99年の第3回公演「GHOST JACK ―ゴーストジャック―」より少年社中に参加。
廿浦裕介(ツヅウラユウスケ)
1979年2月14日生まれ。01年の第9回公演「ハイレゾ」より少年社中に参加。
加藤良子(カトウフミコ)
1979年4月29日生まれ。01年の第9回公演「ハイレゾ」より少年社中に参加。
長谷川太郎(ハセガワタロウ)
1981年11月6日生まれ。03年の第12回公演「シナファイ ―china fight―」より少年社中に参加。
川本裕之(カワモトヒロユキ)
1975年6月30日生まれ。第30回公演「リチャード三世」より少年社中に参加。
少年社中(ショウネンシャチュウ)
少年社中15周年記念第3弾・第28回公演「贋作・好色一代男」より。
1997年、劇団東京オレンジを脱退した毛利亘宏、井俣太良を中心に結成。早稲田大学演劇研究会(早大劇研)出身の劇団。98年2月に早大劇研内のアンサンブル劇団として旗上げ。その後、パルテノン多摩小劇場フェスティバルに参加するなどキャリアを重ね、2002年に早大劇研から独立する。独立後すぐに、当時若手劇団の登竜門とも言われた青山円形劇場に進出。年に2本から3本の作品を発表し続ける。13年には結成15周年を迎え、記念公演として紀伊國屋ホールにて「贋作・好色一代男」を上演。4,000人以上の動員を記録するとともに、翌年発売したDVDでは紀伊國屋書店でのセールスランキングの上位をキープし続ける。16年「三人どころじゃない吉三」では近鉄アート館にて劇団初の大阪公演を実施した。17年「モマの火星探検記」では9,000人以上の動員を記録し、さらなる注目を集めている。
架空世界、冒険、夢などをキーワードにファンタジー色の強い作品を、スピーディーかつスタイリッシュな演出で表現する一方、一貫して、そこに内在するリアルな人間ドラマを描き、観る者の五感を刺激するエンタテインメント作品を目指す。
現在は主宰・脚本・演出の毛利亘宏を中心に、俳優陣として井俣太良、大竹えり、岩田有民、堀池直毅、加藤良子、廿浦裕介、長谷川太郎、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、川本裕之の13名で活動している。
毛利亘宏(モウリノブヒロ)
第三舞台、遊◎機械/全自動シアターなどを輩出した早稲田大学演劇研究会のアンサンブル劇団として、1998年に少年社中を旗揚げ。ストレートプレイ、ミュージカルと幅広いエンタテインメント作品を得意とする。2009年3月にはグローブ座主催公演「カゴツルベ」を青山劇場にて上演し好評を博す。近年では、「ミュージカル『黒執事』」、「ミュージカル『薄桜鬼』」など、2.5次元ミュージカルの人気シリーズを多く手がける。また、演劇以外のジャンルも積極的に挑戦し、11年より仮面ライダーシリーズ、スーパー戦隊シリーズの脚本家として参加している。17年2月放送開始の「宇宙戦隊キュウレンジャー」ではメインライターを務める。

2018年12月28日更新