ミュージカル「舞妓はレディ」唯月ふうか&平方元基インタビュー|博多に立ち上がる京都の花街!舞妓を夢見る少女のシンデレラストーリー

方言って最強

──本作では言葉が重要なキーワードになっています。唯月さんは北海道ご出身ですが、もともと言葉に訛りはあったのでしょうか?

唯月 言葉自体は標準語と違ったりするんですが、札幌市内なので、イントネーションは標準語に近かったです。

──春子は育ててもらった祖父母の影響でコテコテの鹿児島弁と津軽弁が染み付いていて、京ことばを習得するのにとても苦労します。それぞれの方言をどのように稽古していますか?

方言指導を受ける唯月ふうか。

唯月 京ことばはほかの登場人物も話すので、普段の会話を京ことばにするよう心がけています。春子は鹿児島弁と津軽弁をしゃべり慣れているという役なので、方言指導の先生の見本の音声を聴いて覚えたり、歩きながらボソボソしゃべっています。

──では作中でお気に入りの京ことばを教えてください。

平方唯月 (顔を見合わせて)「大変やなー」(笑)。

唯月 ……という歌詞が出てくる歌がありまして!

平方 曲の最後に「大変やなー」というフレーズがあって、みんなでハマってたんです。稽古場で改めて京ことばを聞くと「このフレーズめっちゃ可愛い!」と思ったりするんですよね。

唯月 「おきばりやす」とか、普段使う京ことばも可愛いです。方言って最強だなと思いました。

──平方さんは福岡県ご出身ですね。地元の劇場である博多座での公演に対する思い入れはありますか?

平方 2012年に初めて博多座の舞台に立たせていただきましたが、劇場の外も中もすごく綺麗なんです。家族や親戚、地元の友達とか学校の先生に観に来てもらえるのもうれしいですね。県外から観に来るお客さんには「牧のうどん」の“ごぼ天うどん”と“かしわ飯”を食べていただきたいです。

唯月 私も食べました! すっごく美味しかったです。博多座はロビーがすごく充実していてデパ地下みたいにいろいろ売っているんです。そこでお買い物したいですね(笑)。

平方 あとは福岡の渡辺通りというメインストリートの地下に天神地下街というのがありまして、買い物もできるし、どのビルにも直結していて、雨の日も傘なしで移動できるのでオススメです。

デュエットするのも初めて

──本作の舞台は京都の下八軒という花街ですが、お二人はお茶屋遊びを実際に体験したり、舞妓さんや芸妓さんと触れ合ったことはありますか?

唯月 実際にはないですね。

唯月ふうか

平方 祇園は歩いたりしますが、それこそ“一見さんお断り”の文化ですし、この歳でお茶屋遊びってなかなかできないですよね。

──お茶屋遊びには、どんなイメージを持っていますか?

平方 金屏風があって、お座敷で遊んで、「あーれー!」(帯をほどく仕草)みたいなイメージですよね(笑)。

──わかります(笑)。本作はそんな花街のバックステージを描く作品でもあり、1人の少女が舞妓として自立していく成長物語でもあります。お二人は同じ事務所の先輩・後輩で、2014年11月に「アリス・イン・ワンダーランド」で共演されて以来、約4年ぶりにご一緒されます。平方さんは唯月さんのどんなところに“成長”を感じますか?

平方 成長は感じまくってますよね(笑)。4年前はふうかちゃんも十代で、可愛い妹のような存在でしたが、今では稽古場で自分の演技プランや意見を言えるようになっていて。もともと持ってるハツラツとした実直で素直な女の子の部分がすごく綺麗に成長していて、おじさん、うれしいなって(笑)。

唯月 あはははは(笑)。

平方 お芝居をしていると、人からいろいろ言われて、くすぶっちゃう部分を表に出てしまう人もいると思うんですが、ふうかちゃんはまっすぐなんです。だから「舞妓はレディ」の春子はぴったりな役だと思っています。

唯月 ありがとうございます。元基さんは4年前に共演させていただいたときも励ましてくださったり、とてもお世話になって「頼りになるお兄ちゃんだな」と思っていました。今回は私も21歳になって、同じ成人した大人の目線でお話できますし、一緒にデュエットするのも初めてなのでうれしいです。

自分の弱い部分や、思っていることをしっかり伝える

──春子は夢のために惜しみない努力をしますが、観客の中にはお二人に憧れてミュージカル俳優を目指している方々もいると思います。そんな人たちに向けて、夢を叶えるために必要な心構えがあれば、ぜひアドバイスをお願いします。

平方 途中であきらめたくなったり、全部投げ出したくなることもあると思いますが、いい子になる前に、自分の気持ちに正直になって、誰かに相談してみるべきだと思います。そう簡単にうまくいかないことも多いので、信用できる人や場所を作っておいたほうがいい。そうすれば、どれだけぶちのめされてもがんばれますよね。

唯月 私は昔、人に自分の気持ちを発信することができなかったんですよ。殻に閉じこもって「いい子でいよう」とか、「ちゃんとしてよう」とか。でも自分の弱い部分や、思っていることをしっかり伝えることが、すごく大事だなって気付いて。ときには誰かに頼る勇気も必要だと思います。そうやって人と触れ合うこともお芝居に生かされるんじゃないかな。

──「舞妓はレディ」では春子と京野だけでなく、榊原郁恵さん演じる春子を励ますお茶屋の女将・千春、湖月わたるさん演じる先輩稽古の里春や、蘭乃はなさん演じる春子の面倒を見る百春、そして辰巳琢郎さん演じる春子の後見人となる常連客・若様など、それぞれの人間ドラマが描かれます。本作をどんな人にオススメしたいですか?

平方 まず博多に京都の街が立ち上がる時点で普通じゃないですよね(笑)。さらにキャラクターによってミュージカルシーンの見せ場があって、その間を春子やセンセや女将さんたちの日常が通過していくような作品です。「ミュージカル! ミュージカル!」と前のめりにならなくても、誰でもふらっと立ち寄れるような作品にしたいです。

平方元基

唯月 老若男女問わずに観ていただきたいですね。私のおばあちゃん世代の方にも「春子、がんばれ!」という気持ちになっていただけると思います。気張らず、リラックスして観ていただいて、いろんな年代の方の心に刺さったらいいなと。

平方 刺しに行こう!(笑)

唯月 原作映画のファンの方はどうしても映画のイメージが強いと思いますが、ミュージカル版ならではの楽しさもありますし、初めて「舞妓はレディ」に触れる方も、「面白い! 映画も観てみよう!」と広がったらうれしいです。さまざまな世代の方に届くようにがんばりますので、ぜひ2度・3度、劇場におこしやす!

ミュージカル「舞妓はレディ」
2018年3月4日(日)~20日(火)
福岡県 博多座
「舞妓はレディ」

原作:周防正行 / アルタミラピクチャーズ
脚色:堀越真
演出:寺﨑秀臣
作曲・編曲:周防義和
音楽監督:佐藤泰将
出演:唯月ふうか、榊原郁恵(※「榊」は”木へんに神”が正式表記)、平方元基、湖月わたる、蘭乃はな、辰巳琢郎 / 多田愛佳、片山陽加、土屋シオン ほか

あらすじ

舞台は京都。花街・下八軒(しもはちけん)にある老舗お茶屋・万寿楽(ばんすらく)に、「舞妓になりたい」という少女・春子がやってくる。コテコテの鹿児島弁と津軽弁を話す春子を、女将の千春は追い返そうとするが、言語学者の京野が春子に興味を抱いたことから彼女の運命は一転する。京野は「春子に美しい京ことばをマスターさせてみせる」と宣言し、春子は晴れて万寿楽の仕込み(見習い)になる。厳しくも優しい花街の人々に見守られ、舞妓になりたい一心で稽古に励む春子。彼女は数々の困難を乗り越え、“ほんまもんの舞妓”になることができるのか?

唯月ふうか(ユヅキフウカ)
唯月ふうか
1996年北海道生まれ。2012年に第37回ホリプロスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞。13年からミュージカル「ピーターパン」で9代目ピーターパンとして主演を務めたほか、「レ・ミゼラブル」「デスノート THE MUSICAL」「屋根の上のヴァイオリン弾き」などのミュージカルに出演。2018年6月には井上ひさし作、栗山民也演出の「夢の裂け目」に出演する。
平方元基(ヒラカタゲンキ)
平方元基
1985年福岡県生まれ。連続ドラマ「神の雫」「魔女裁判」などに出演。ミュージカルデビューは2011年9月の「ロミオ&ジュリエット」のティボルト役。以降、「エリザベート」「王家の紋章」「レディ・ベス」などの話題作に出演し活躍の場を広げている。18年6月からは「銀河鉄道999 40周年記念作品 舞台『銀河鉄道999』~GALAXY OPERA~」、9月にはミュージカル「マイ・フェア・レディ」に出演する。