ミュージカル「舞妓はレディ」唯月ふうか&平方元基インタビュー|博多に立ち上がる京都の花街!舞妓を夢見る少女のシンデレラストーリー

3月、福岡・博多座にて開幕するミュージカル「舞妓はレディ」。京都の花街・下八軒(しもはちけん)の老舗お茶屋・万寿楽(ばんすらく)を舞台に、主人公の少女・西郷春子が“ほんまもんの舞妓”へと成長していくシンデレラストーリーが描かれる。原作は2014年に公開された周防正行監督のミュージカル映画だ。

ミュージカル版で春子役を演じるのは唯月ふうか、そして春子に京ことばを教える言語学者・京野法嗣役を平方元基が務める。約4年ぶりの共演を果たす2人は、どのように京の花街を表現していくのか? 本作の魅力についてインタビューした。

取材・文 / 川口聡 撮影 / 相澤心也

唯月ふうか&平方元基 インタビュー

恋模様も日本らしく、京都らしく、上品に

──稽古が始まって1週間ほどですが(取材は2月初旬に行われた)、すでに立ち稽古に入られたそうですね。

唯月ふうか 1幕はほぼ形がつきました。とにかく必死でお稽古していますね。

平方元基 ミュージカルは歌や振付の稽古だけで2週間かかるときもあるのですが、今回は(進行が)早くて、心配しているひまもなく進んでいます。ただ僕が演じる京野先生(通称:センセ)は、ふうかちゃんが演じる春子との掛け合いのシーンが多くて、恋愛要素もあるので、演出家の寺﨑(秀臣)さんには感情の部分を丁寧に演出していただいています。

左から平方元基、唯月ふうか。

唯月 寺﨑さんは役について話し合う時間をたくさん設けて「このシーンの春子の気持ちはどうだと思う?」と問いかけてくださるので、自分の考えを伝えつつディスカッションしながら作っていけるんです。

平方 俳優の考えを受け入れて、話を聞いてくださるので、とても信頼しています。寺﨑さんは「『舞妓はレディ』が、こうなったらいい」という明確な地図を持っていらっしゃるので、その景色や世界観を僕たちが表現できたらいいですよね。

──原作映画をご覧になったときは、どんな印象を受けましたか?

唯月 舞妓を目指してがんばる春子を純粋に応援したくなったり、ほんわかした気持ちになれる作品だなって。

平方 勝手な印象ですが、周防監督はミュージカルと遠いイメージがあったんです(笑)。でも実際に映画を観たら老若男女が楽しめるミュージカル映画になっていてすごいなと思いました。

──今回のミュージカル版「舞妓はレディ」では、映画に登場した楽曲が数多く使われていますね。お二人が特に好きな曲はありますか?

唯月ふうか

唯月 「京都盆地に雨が降る」という曲が好きです。センセが、春子に京ことばを音で覚えさせようと必死に教えてくれるんですが、うまくいかないというシーンで。この曲は作中で2回出てきて、その変化も楽しめます。

平方 僕は春子が最初に「舞妓になりたいんです!」と、お茶屋を訪ねてくるシーンで歌う「私の夢」という曲が好き。実は後半でもセンセが春子を思いながら同じ曲を歌うんです。恋愛要素のある作品は“That's 恋愛!”みたいになりがちですが、「舞妓はレディ」では、恋模様も日本らしく、京都らしく、上品に表現されるところが好きですね。

──映画を観てミュージカル版に興味を持った方もいらっしゃると思いますが、ミュージカル「舞妓はレディ」ならではの魅力を教えてください。

唯月 やっぱりミュージカルシーンは、より一層、派手に華やかになっています。日常シーンとのメリハリが魅力ですね。

平方 舞台は五感で楽しめますよね。視覚や聴覚はもちろん、そのときの客席の熱も影響する。そのときその瞬間に、目の前で役を演じている人たちが思いを紡いでいくので、空気の変化を楽しめると思います。

ふうかちゃんは春子に似てます

──春子は「どうしても舞妓になりたい」という強い思いを抱いて、青森・津軽から京都へやってきて、仕込み(舞妓見習い)になります。唯月さんは、第37回ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞されて、現在女優としてご活躍中です。これまで相当な努力をされてきたと思いますが、同じくがんばり屋な春子を演じる上で共感する部分はありますか?

舞妓に扮した唯月ふうか。

舞妓に扮した唯月ふうか。

唯月 春子は舞妓になるために一生懸命だけど、なかなかうまくいかない。でもあきらめず挑戦し続けます。私はすぐにあきらめはしませんが、自信をなくしてしまうことがあるので、春子を見習いたいです。共感する部分をこれからもたくさん見つけていきたいと思います。

平方 でも似てるよ!

唯月 本当に!? 似てますか?

平方 今は稽古で初めてやるシーンばかりで、上手くいかないことが多いから、ミスが発生したときに笑いが起こるじゃないですか? でもふうかちゃんは、みんなが笑ってるときも一緒にほどけたりしないで、ずっと一生懸命やってる。そういう姿を見ていると「物語の中で自分が演じるセンセもこういう気持ちだったのかな」って。そういうところが稽古場で見えるので、すごく助けられてます。

唯月 えー、そうだったんですね!

平方 ついつい「がんばれ!」って応援したくなるところが、春子に似てますよね。

舞妓姿に最初は笑っちゃいました

──本作は“和製ミュージカル”ということで、振袖やおこぼなど、舞妓さんの衣裳で歌ったり踊ったりするわけですが、苦労している点はありますか?

唯月 今までお着物で歌ったことがなくて、「舞妓はレディ」の製作発表のときが本当に初めてでした。(帯でお腹が)締まってるから、「今、息が入ってる」というのがわかりやすいんですよ(笑)。

京野センセに扮した平方元基。

京野センセに扮した平方元基。

平方 腹式呼吸が(笑)。

唯月 あとは帯で引き締まるので、自然と「しっかりしよう!」という気持ちになります。

──唯月さんが舞妓に扮したポスタービジュアルも印象的ですが、実際にご自身の和装姿や白塗りを目にしたときは舞妓さん気分になりましたか?

唯月 最初は笑っちゃいました。

平方 そうなの?

唯月 白塗りが似合う、似合わないの基準がわからなくて(笑)。でも周りの方が「綺麗だよ」と言ってくださったので安心したんです。カツラもお衣裳も重くて、高い下駄を履くので、歩くだけでも大変で、本番までに慣れていかないと……。

平方 僕は撮影が別日だったので、ふうかちゃんの舞妓姿は出来上がったポスターで初めて見ました。ミュージカルって外国人に扮することが多いじゃないですか? 今回は舞妓役で和装ということで、ふうかちゃんの見たことない一面が見れるんだろうなと思います。

──春子は京ことばをなかなか習得できず、舞妓になるために必要な三味線や長唄、舞の稽古もうまくいかずスランプに陥ってしまいます。舞妓として成長していく春子を演技の上で、どのように見せていきたいですか?

唯月 お稽古を重ねていくと慣れてしまって、一生懸命な“できない春子”を演じるのに苦労するんだろうなと思います。なので、初めて三味線や舞のお稽古をしたときの動画を撮っているんです。できるようになってきたら、その動画を見て初心に返ろうと思います。

──平方さんは春子に“美しい京ことば”をマスターさせようと奮闘する大学教授・京野法嗣役を演じられます。彼をどんな人物だと捉えていますか?

平方元基

平方 京野は花街の人間ではないですし、衣裳も着物を着ているわけではないので、お客さんに一番近い役どころなんじゃないかな。「舞妓はレディ」はミュージカル作品ですが、京の質感を大事にするために起承転結がはっきりとは描かれていません。いつもみたいにミュージカルっぽい演技をするよりも、丁寧にお芝居していったほうが、お客さんにすんなり受け入れてもらえるのかなと。まずは春子とセンセの交流を繊細に描いていきたいです。

──普段のミュージカル作品とは演技のアプローチの仕方も違うんでしょうか?

平方 だいぶ違いますよね。特に春子役は難しいと思います。三味線も長唄も鳴物(太鼓)も、すべてをマスターしてから、一度舞妓になる前の“ゼロの状態”に戻り、最後は立派に舞妓になった姿を見せるという成長過程を毎公演演じなければならないので。

唯月 そうですね。私にとっては初挑戦のことばかりなのですが、成長できる機会だと思ってがんばりたいです。

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方言って最強

ミュージカル「舞妓はレディ」
2018年3月4日(日)~20日(火)
福岡県 博多座
「舞妓はレディ」

原作:周防正行 / アルタミラピクチャーズ
脚色:堀越真
演出:寺﨑秀臣
作曲・編曲:周防義和
音楽監督:佐藤泰将
出演:唯月ふうか、榊原郁恵(※「榊」は”木へんに神”が正式表記)、平方元基、湖月わたる、蘭乃はな、辰巳琢郎 / 多田愛佳、片山陽加、土屋シオン ほか

あらすじ

舞台は京都。花街・下八軒(しもはちけん)にある老舗お茶屋・万寿楽(ばんすらく)に、「舞妓になりたい」という少女・春子がやってくる。コテコテの鹿児島弁と津軽弁を話す春子を、女将の千春は追い返そうとするが、言語学者の京野が春子に興味を抱いたことから彼女の運命は一転する。京野は「春子に美しい京ことばをマスターさせてみせる」と宣言し、春子は晴れて万寿楽の仕込み(見習い)になる。厳しくも優しい花街の人々に見守られ、舞妓になりたい一心で稽古に励む春子。彼女は数々の困難を乗り越え、“ほんまもんの舞妓”になることができるのか?

唯月ふうか(ユヅキフウカ)
唯月ふうか
1996年北海道生まれ。2012年に第37回ホリプロスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞。13年からミュージカル「ピーターパン」で9代目ピーターパンとして主演を務めたほか、「レ・ミゼラブル」「デスノート THE MUSICAL」「屋根の上のヴァイオリン弾き」などのミュージカルに出演。2018年6月には井上ひさし作、栗山民也演出の「夢の裂け目」に出演する。
平方元基(ヒラカタゲンキ)
平方元基
1985年福岡県生まれ。連続ドラマ「神の雫」「魔女裁判」などに出演。ミュージカルデビューは2011年9月の「ロミオ&ジュリエット」のティボルト役。以降、「エリザベート」「王家の紋章」「レディ・ベス」などの話題作に出演し活躍の場を広げている。18年6月からは「銀河鉄道999 40周年記念作品 舞台『銀河鉄道999』~GALAXY OPERA~」、9月にはミュージカル「マイ・フェア・レディ」に出演する。