ここでは、出演の福士誠治、田中俊介、新原泰佑、柾木玲弥、篠井英介、山路和弘、麻実れいの7人が、作品や役への思い、そして稽古の様子を語っている。
福士誠治
(この物語を“語り継いでいく”エリック・グラス役)
──作品やご自身が演じられる役について、どんな印象をお持ちですか?
僕が演じるエリックは本当に波風を立てたくないバランサーのような人だと思っています。
人と人をつなぐ人でもあるし、関節のような働きをする人。
でも、いろいろな大きな出来事によってバランスを保てなくなっていく。
そこにエリックの実となるチカラを感じています。
──お稽古の中で印象的に残ったエピソードを教えてください。
熊林さんとは今回で3回目のご一緒で、いつも大好きな演出家さんですが、今回の「インヘリタンス」の演出もとんでもなく秀逸です。大人数でのお芝居でもその時々の関係性をしっかり見せていく。それがとても秀逸で僕は大好きです。
熊林さんは一緒に舞台の上で表現をしながら演出してくださるので、知らない間にアザなど出来ていることがあります(笑)。
田中俊介
(エリックの元恋人でのちのアダムを愛す、トビー・ダーリング役)
──作品やご自身が演じられる役について、どんな印象をお持ちですか?
ものすごく生命力、愛が詰まった作品だと思います。そんな中、僕が演じるトビーという役は、本当の自分を見せない。そのために何枚ものバリアを駆使し自分を守ってる人間。そのバリアには棘があったり、柔らかかったり、温かかったり、冷たかったり……。欲求に素直で貪欲で不器用で、とにかく愛されたい。愛に飢えた人間だと思います。
──お稽古の中で印象的に残ったエピソードを教えてください。
演出の熊林さんがおっしゃっていた「水に浮かぶ石」という言葉が印象に残っています。石は重くて水に浮かばない。でも水の上に浮かんでいてほしい。トビーの抱えている重みをしっかり持ちつつ軽やかに演じる。この言葉を常に頭に置いています。軽やかに重くユーモアを持ちながら。そんなことを思いながら日々稽古をしています。
新原泰佑
(俳優の卵・アダム役と、アダムと瓜二つの男娼レオ役)
──作品やご自身が演じられる役について、どんな印象をお持ちですか?
僕が演じるアダム、レオ。
彼らは境遇は違えど複雑な過去を持ち、並々ならぬ思いを抱えながら日々を過ごしています、そしてこの作品で1番若い世代を象徴する2人です。
レオはこの物語の創造主であり、アダムはこの物語の分岐点だと僕は考えています。
この作品のエンジンとなり物語にブーストをかけられたらいいなと思っています。
──お稽古の中で印象的に残ったエピソードを教えてください。
熊林さんの演出が初めてだったのでどんな稽古になるのかすごくワクワクしていました。
とても丁寧で、言葉や例えが具体的なことが多い中、たまに抽象的な表現をするときがあり、それはこちらに“自由”を渡してくれている感じがして想像力をフルに活用して芝居をすることができます。
そんなクリエイティブな環境で、先輩方たちと精一杯、時には和気藹々と稽古に励んでいます。
柾木玲弥
(エリックとトビーの仲間ジャスパー役)
──作品やご自身が演じられる役について、どんな印象をお持ちですか?
ジャスパーという役は社会正義を実現するために日々頑張っている青年なのですが、いつも何かしら誰かしらと討論をしていて、ケンカとまでは言わないにしても、言い争いをよくしています。
恐らく、口で言うだけだと育ちも良く正義感も強い好青年と言った感じなのですが、そうともいかない一癖、二癖があるような役になっています。
──お稽古の中で印象的に残ったエピソードを教えてください。
熊林さんの稽古、会話にはたくさんの固有名詞が出てきます。海外や、時には日本の、演劇、映画などの作品、俳優ら演出家、監督、本当に知識が豊富でとても勉強になるし、自分なんてまだまだだなと痛感させられ、刺激的な日々になっています。
篠井英介
(ヘンリーのパートナー・ウォルター役と、本作の語り部たる男たちを導くモーガン役)
──作品やご自身が演じられる役について、どんな印象をお持ちですか?
1980年代より漫劇界に生まれたゲイ・プレイの集大成ともいえる作品ではないでしょうか。
まさに継承といえる舞台です。この50年近くのゲイの有り様と戦いを見届ける老年の作家役です。心してとり組みます。
──お稽古の中で印象的に残ったエピソードを教えてください。
演出の熊林さんの明るくなごやかな人柄。
反してすばらしいセンスの演出力。歴史に残る舞台になると思います。
ケイコ半ばにしてメンバーが愛しくてたまらないこの頃です。どうぞお楽しみにご期待ください。
山路和弘
(不動産王でウォルターの死後エリックのパートナーになるヘンリー・ウィルコックス役)
──作品やご自身が演じられる役について、どんな印象をお持ちですか?
私は若い頃中性的な役所が多かった(中には女性役もあったが)。肉体はストレートだが、精神的同性愛には興味が深まるばかり。あの頃むさ苦しい男ばかりの中に居た私が、ウォルターやタジオに出会っていたら私の人生は……。思考の触手がヘンリーに辿り着き、リンクする。ジワっと、彼の苦しみで額に冷汗がにじむ。
──お稽古の中で印象的に残ったエピソードを教えてください。
今回の本読み稽古で初めて熊林氏が代読するのを聞いた。あまりの自由さに嫉妬。彼とは3度目の出会いだが、いつも柔軟さと聡明さには舌を巻く。頭を開いて脳の隅々まで調べ尽くしたい人物の一人。そして20年以上振りの篠井氏。相変わらずの美しい目鼻立ちに目眩。福士くんの包容力。麻実さんの存在感。多才な若者たち。何と贅沢な現場。
麻実れい
(田舎の家を管理するマーガレット役)
──作品やご自身が演じられる役について、どんな印象をお持ちですか?
母と息子……何度か演じさせていただいてますが、マーガレットのようなお役とは、初めて向き合う気がします。幸せな出会いですね。
──お稽古の中で印象的に残ったエピソードを教えてください。
TPT時代からの熊チャン、弟の様な存在でしたが大きくなりましたー。これからの成長も楽しみです。