「まともじゃないのは君も一緒」成田凌×清原果耶|「普通(まとも)って何?」噛み合わない2人のドタバタラブコメディ

監督・前田弘二×脚本家・高田亮インタビュー

いきなりフルスロットルで始まる物語

──お二人はこれまで「婚前特急」「わたしのハワイの歩きかた」などたびたびご一緒されていました。まずは今回の企画の成り立ちから伺いたいです。

前田弘二 「わたしのハワイの歩きかた」のプロデューサーだった小池賢太郎さんから「楽しい映画を作ろう」と提案されたところから始まりました。実現はしていませんがプレイボーイが主人公のコメディの企画があって、「その逆の物語が面白いんじゃない?」と話していましたよね?

高田亮 若い子を主人公にしようと話していたよね。僕はハル・アシュビーの「チャンス」やピーター・フェイマンの「クロコダイル・ダンディー」のようなカルチャーギャップもので、世の中のことは知らないけれど何かに夢中になっている人が主人公の作品を描きたかったんです。でもいざ持ち帰ってみると、“何もない人”から始まっているので、何を書けばいいのかわからなくて(笑)。

高田亮

前田 書き始めてから1年くらい経った頃にいきなり30ページくらいのロングプロットが送られてきて、それを読んだらすごくスカッとしたんです。情報が多すぎて何が正しいのかがわかりにくい世の中で「何もわからない!」という主人公の姿が気持ちよかった。さわやかでパンクな印象があって、これこれ!と感じました。

高田 前田くんはきっとわかってくれるだろうなと(笑)。「セリフであまり説明しないのがいい映画」という風潮をひっくり返したい思いが自分の中にあって、ひたすらセリフを書くぞと決めていました。本人はいたって真剣だけど、どこかずれていて何もうまくいかない。そういう人物はアリだなと考えました。

前田 いきなりフルスロットルで物語が始まって、掛け合いによって少しずつ人物像が見えて世界が構築されていく。そんなちょっぴりクレイジーな脚本なので、そのテンションを保って書くのは大変だっただろうなと思います。

──テーマの1つである「自分は普通なのか?」というのは、きっと誰もが抱く不安ですよね。今回「普通」をテーマにした意図は?

高田 何も知らない人を主人公として設定したときに、まず“普通”をテーマに書くしかないところからスタートして、あとから自分が常々考えていることがどんどん出てきました。「そんなことも知らないの?」と言う人たちを窮屈に感じる点で僕と監督は共通していたので、“普通”を題材として扱ってみたい気持ちもありましたね。

成田凌さん、清原果耶さんは最初からほぼ一択

──大野役の成田凌さん、香住役の清原果耶さんの組み合わせには新鮮さを感じました。どの段階でお二人を起用することが決まったのでしょうか?

前田 ロングプロットをもとに「大野は誰がいいだろうね」と話し合ったときには、すでに成田さんの名前が挙がっていましたね。

高田 最初からほぼ一択でしたね。

前田 しっくりきたんですよね。それで香住役を考えたときに「愛唄 ー約束のナクヒトー」に清原果耶さんが出ていて「この子いいな」と感じたんです。2人が並んでいるところを想像したときに、掛け合いが面白くなるだろうと直感的に思いました。それで実際にお会いして本読みをしてみたら、もう間違いなかった。

──なるほど。映画自体は大野と香住の会話のチグハグ感が楽しい作品ですが、主演2人の演技は抜群のコンビネーションだったようですね(参照:成田凌と清原果耶は最初から息ピッタリ?「まともじゃないのは君も一緒」完成報告)。撮影はいかがでしたか? 成田さんは撮影前夜に頭を抱えたこともあったそうですが……。

前田 そうですよね! セリフの1つひとつに込められた意味は小さくても、いろんな感情の機微がうごめいているので、ポイントを押さえながら噛み合わない会話を覚える必要があったでしょうし。相当大変だったと思います。

高田 成田さんからは「セリフが多すぎて出かけられませんでした」と冗談混じりに言われました(笑)。

「まともじゃないのは君も一緒」より、成田凌演じる大野。

前田 しかも一番最後のショットだけアドリブになりました。「さんざんセリフがあって、最後はアドリブかい」という感じですよね(笑)。でも理屈の鎧を剥がした2人が、いつものようだけど新しい関係に変わっていく雰囲気が出せて、ほんとお二人でよかったと現場で感動しました。成田さんはリハーサルをやりながら大野のキャラクターをつかんでくれた印象があります。あと難しいのは、脚本のト書きに「変な笑い方」とだけあったりするんです。これって大きな宿題じゃないですか。

高田 そういうのが好きなんですよ。

前田 あと大事なシーンで「……」とだけ書かれていて。「どんな顔を見せたらいいんですか?」と脚本の余白を話し合いながらやっていく感じが面白かったですね。

前田弘二

──清原さんは、香住というキャラクターが「自分の殻を破るきっかけになった」とお話されていました。監督は清原さんから演技について相談を受ける機会が多かったとか。

前田 撮影前に、全体の気持ちの流れと脚本の細かいセリフの意図をびっちり話し合いました。

高田 「ここは冗談です」「皮肉です」「本当はこう思っていないけれど、からかうために言っています」などとやり取りをしましたね。すごくいい質問ばかりで、こちらも「よく聞いてくれました! そこはすごく気に入っているんです」と、ここぞとばかりにしゃべりました。演技するときは、それをしっかり反映させてくれるすごい俳優さんです。

前田 香住はすべてがうまくいかない。その感情を維持するのも大変なんですよ。後半、やけっぱちになって1人で歩くシーンやその後の大野との再会でのやり取りは、どんな答えを出すんだろう?と見ていたら、傷付いた心を隠すために意地を張った態度で示し、すごい!と思いました。

高田 あのシーンは本当によかった!

前田 香住のもろい頑固さ。ああいうところに香住のかわいらしさがよく出ていますよね。