映画ナタリー Power Push - 「ロッキー」新章(シリーズ)、始まる 「クリード チャンプを継ぐ男」

今だからこそロッキーが伝える、夢と希望、そして熱き仲間のキズナ

アカデミー賞作品賞に輝いた第1作「ロッキー」から約40年、伝説のボクサー、ロッキー・バルボアがスクリーンに帰ってきた。ロッキーがかつて死闘を繰り広げたライバルにして、亡き親友アポロ・クリードの息子アドニスとの出会いから始まる本作。2人は真の師弟関係を築き、仲間とともに世界の頂点を目指す。友情、愛、挑戦、そして夢の大切さを教えてくれる感動ドラマ「ロッキー」新シリーズの幕が開ける。

映画ナタリーでは、数多くの傑作スポーツマンガに影響を与えてきた「ロッキー」シリーズを振り返り、生まれ変わった新作「クリード」の見どころを探る。さらにマンガ「刃牙」シリーズを手がける板垣恵介にインタビューを実施。自身もボクシング経験のある板垣に新章の魅力やロッキー愛について熱く、思う存分に語ってもらう。

イラスト / 板垣恵介 取材・文 / 下森宏益 写真 / 増永彩子

 
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INTERVIEW ~マンガ家・板垣恵介~

「クリード チャンプを継ぐ男」板垣恵介の描き下ろしイラスト

「刃牙」シリーズの板垣恵介が「クリード チャンプを継ぐ男」のイラストを描き下ろし!

「クリード」は「ロッキー7」という位置付けだった

──「クリード チャンプを継ぐ男」を観終えての感想を聞かせてください。

「スタローン、ごめん!」って謝りたい。彼は自分のことが大好きなヤツだろうから、今作でもロッキーが活躍するシーンがあるに決まってると思っていた。60歳を超えたスタローンがスパーリングで駆け出しの若者に一泡吹かせて、「まだまだロッキーはやれるんだ」ってところを示す!(笑) オレはそんなシーンを半ば楽しみにしていたし、観終わったあとで「ほらっ、やっぱり想像通りだったろ?」って周りに自慢してやろうと思ってたよ。ところが、そんなシーンはまったくない。スタローンも成熟したんだね(笑)。フィラデルフィアのいたる所に存在するロッキーへのリスペクトみたいなものもうれしかった。物語の終わり方もとても心地よかったよ。

板垣恵介

──「ロッキー」シリーズのファンとして、どういう期待感がありましたか?

オレにとって「クリード」は「ロッキー7」という位置付けだった。だからこそ、老いてもなお、ほかのおじいちゃんとは違う超人的なロッキーをスタローンは演じてしまうだろうなって。

──「クリード」のお気に入りシーンは?

スピードボールを叩く場面はよかった。ロッキーがアドニスと並んで叩いているんだけど、たまに打ち外したりして現役の頃のように完璧にはいかない。フィラデルフィア美術館前の階段を登るシーンもよかった。「ロッキー」でトレーナーのミッキーと「さあ、やるか!」ってトレーニングを始めた頃は息も絶え絶えで、駆け登れなかったんだ。あの思い出の場所にロッキーが戻っているのがうれしかった。

「クリード チャンプを継ぐ男」より、ロッキー・バルボア(左)とアドニス・ジョンソン(右)。

──ロッキーが指導する若者アドニスの印象はいかがでしたか?

冒頭は個性が弱いというか、今ひとつセクシーさに欠けているのが気になった。オレはモハメド・アリやシュガー・レイ・レナード、最近だとマニー・パッキャオやフロイド・メイウェザーなど実在の名選手をたくさん観てきているからね。彼らはとてもセクシーなんだ。立ち姿だけで「負ける姿が想像できない!」と畏怖するほど。そして実際に強い。でも本物のボクサーがうんぬんとかどうでもよくて、ラストには「こいつ、いいじゃない!」って思えたよ。

──体をかなり作りこんでいた印象を受けました。

そこが洋画のすごさだね。体つきを見ただけでウエイトもしっかりやってきたことがわかる。シャドーボクシングをやっているシーンを観ると、ボクシング経験は無いなと思ったけど、体の仕上がりのおかげで“らしく”感じられたよ。

「クリード チャンプを継ぐ男」より、アドニス・ジョンソン

──ボクサー目線で捉えたファイトシーンも迫力がありました。

そうだね。父親のアポロとロッキーが戦ったときよりリアリティがあった。ブローが本物のボクシングに近い。アドニスはショートの薄いパンチのあとに決めのアッパーを放つ。一方のロッキーはケンカやプロレスに近い大振り。放つパンチが全部クリーンヒットするなんて、実際だったら相手が死んでしまうよ!

──ボクシングで国体出場経験がある板垣先生だからこそ、さらに熱くなったのでは?

1ラウンド終わり、2ラウンドあたりではもうやばかった。5ラウンドあたりで落涙を止められなくなった。

──アドニスがロッキーにトレーナーを依頼するくだりもワクワクしました。

ロッキーがアドニスの依頼を受け入れることはアポロの親友としての責務だね。「オレを鍛えてくれ」とアドニスが迫る。迫られたロッキーは封印したはずの過去に迷いながらも踏み入っていく。落ち着いた大人の責任として引き受けたように感じたなあ。アポロの死を悼む、後悔の念というより「親友の息子の頼みだったらやるしかねえ!」というね。

「クリード チャンプを継ぐ男」より、アドニス・ジョンソン(左)とビアンカ(右)

──アドニスにはビアンカという、ロッキーとは別に関係を深めていく人物が現れました。

カッコよくて男前で、自我が素敵な女優だったよ。「フラッシュダンス」のヒロイン、アレックス・オーウェンズを演じたジェニファー・ビールスを観たときの印象と似ていた。

──ロッキーにとってのエイドリアンのような存在だなと。

「こういう映画にそう簡単には感動させられないという気持ちがあったけど、いつしかやられてたよ」と板垣恵介。

アドニスの行動は常識的だった。ロッキーは自分の部屋に入れてからエイドリアンに手を出すまで早かったよ(笑)。直前まではオドオドしながら、部屋に入るなりタンクトップ姿って。エイドリアンもあのガタイには普通に危険を感じるだろ。それにしても、ロッキーはなんであんな娘に声をかけたんだろな(笑)。

──メガネを取った瞬間のエイドリアンは美人だなという印象を受けました。

わかる、わかる! そういえば、あの分厚いメガネもすごかったな。あのメガネを取ってひどくなるわけがないのよ。あれは演出の勝ちだな(笑)。

「クリード チャンプを継ぐ男」2015年12月23日より全国公開

「クリード チャンプを継ぐ男」

元世界ヘビー級王者アポロ・クリードを父に持つアドニス。他界した父のことを何も知らないアドニスだが、たぎる情熱を抑えきれずプロボクサーとして生きることを決意する。義母メアリーの反対を押し切り、父のライバルだったロッキーを捜しに単身フィラデルフィアへ向かう。突如現れた若者の純粋なまなざしと、親友の面影を見たロッキーは、持てる技術のすべてを託し、ともに頂点への道を歩み始める。しかし世界王者とのタイトルマッチ直前、死にいたる病を宣告されるロッキー……。絶対的に不利な状況で、2人は奇跡を起こすことができるのか!?

スタッフ

監督・脚本:ライアン・クーグラー
脚本:アーロン・コビントン
製作:アーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ、チャールズ・ウィンクラー、ウィリアム・チャートフ、デイビッド・ウィンクラー、ケビン・キング=テンプルトン、シルヴェスター・スタローン
製作総指揮:ニコラス・スターン

キャスト

ロッキー・バルボア:シルヴェスター・スタローン
アドニス・ジョンソン:マイケル・B・ジョーダン
ビアンカ:テッサ・トンプソン
メアリー・アン・クリード:フィリシア・ラシャド
“プリティ”・リッキー・コンラン:アンソニー・ベリュー

「クリード チャンプを継ぐ男」

板垣恵介(イタガキケイスケ)

1957年4月4日、北海道出身。高校を卒業後地元で就職するが、後に退職し20歳で陸上自衛隊に入隊。習志野第1空挺団に約5年間所属し、アマチュアボクシングで国体にも出場した。その後身体を壊して自衛隊を除隊し、さまざまな職を経験しながらマンガ家を志す。30歳のとき、マンガ原作者・小池一夫の主催する劇画村塾に入塾。ここで頭角を現し、「メイキャッパー」でデビュー。1991年に連載スタートした「グラップラー刃牙」は、「バキ」「範馬刃牙」とシリーズを重ねることで、格闘マンガの新たな地平を切り拓いた名作となった。他の代表作として、「餓狼伝」(原作:夢枕獏)、「バキ外伝 疵面」(作画:山内雪奈生)、「謝男 シャーマン」などがある。

「刃牙道(8)」

板垣恵介「刃牙道(8)」
2015年10月8日発売
463円 / 秋田書店

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