映画ナタリー Power Push - 「ロッキー」新章(シリーズ)、始まる 「クリード チャンプを継ぐ男」

今だからこそロッキーが伝える、夢と希望、そして熱き仲間のキズナ

「ROCKY」から「CREED」へ ―― 。 4つのキーワードで探る 生まれ変わった「クリード チャンプを継ぐ男」

映画「ロッキー」のスタイルは新世代へと受け継がれた。「友情」「愛」「挑戦」そして「夢」。シリーズには欠かせない4つのテーマと過去作品から、生まれ変わった新シリーズ「クリード チャンプを継ぐ男」の見どころを探っていく。

友情

人はひとりではない。時を越えた友情に涙

「ロッキー4 炎の友情」よりロッキー
困難にぶち当たりながらも何度も立ち上がる姿、不器用ながらもひたむきに自身と向き合い、誇りを守るべく戦う姿勢、自らの夢に向かってひたすら突き進む意思の強さ。それがロッキーの持つ魅力であり、そんな彼の姿に観客は惹かれていった。アポロをはじめ、義兄ポーリーなど多くの仲間と友情を育んだロッキー。だが時の流れの中で多くの友を失い、今は孤独を味わっている。そこに現れたアドニス。“人間は決して孤独ではない”。そんな感動のメッセージが随所に盛り込まれている。

「クリード チャンプを継ぐ男」よりアドニス
“信じられるのは自分だけ”。里親をたらい回しにされ、更生養護施設では腕っぷしのみで生き抜いてきたアドニスは、そんな思いを胸の奥底に持つ。だが同時に実母を早くに亡くし父親の愛も知らず育ち、“自身が何者か”という意識に悩む純粋さをあわせ持つ。かつてのロッキーのように、アドニスは自身の居場所を見つけられるか? ロッキーをトレーナーとしてだけでなく、父親に代わる存在として敬い、ぶつかりながらも世代を超えた友情を深める若者の心の変化とともに注目したい。

挑戦

誇りを胸に戦う男たちの姿にアツくなる

「ロッキー2」よりロッキー
ロッキーは愛妻に支えられ、ミッキーとの二人三脚の過酷なトレーニングに耐え、見事世界チャンピオンとの1戦を制した。その後もロッキーは困難に直面するたび、打ちひしがれ苦しみながらも不屈の精神力で、何度倒れても立ち上がり乗り越えてきた。エイドリアンやミッキー、そしてアポロたちが教えてくれた、“信じる心”と“人生は戦う価値がある”ということ。若きアドニスに受け継がれるロッキー精神。挑戦することの素晴らしさと意味が、アナタにもきっと伝わるはずだ。

「クリード チャンプを継ぐ男」よりアドニス
ボクシングジムの鏡の前に立つアドニスに向かって「一番手ごわい敵は試合の対戦相手ではなく目の前に映る、お前を見返している自分自身だ」とロッキーは語りかける。孫子の格言「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」のようでもあるが、ロッキー自身が長い年月をかけて学んだ教訓だ。だが父親の呪縛から逃れるために戦う若者には、その意味がすぐに理解できない。アドニスが自身の境遇を受け入れ、成長していく姿は、己を知ることがいかに大切かを我々に教えてくれる。

愛情が人々にもたらす奇跡の瞬間が心に響く

「ロッキー」よりロッキー
ロッキーとエイドリアンは喜びも悲しみも2人で分かち合いながら、片時も離れずに生きてきた。常に献身的な愛を持って支えてくれた彼女亡き今、ロッキーは墓参りを欠かさず、墓石に向かって1日の出来事を語り聞かせる。妻の名を冠した店、自宅もエイドリアンが生きていた当時のままにするなど、妻への永遠の愛が感じられる。唯一の理解者で義兄のポーリーまでもこの世を去り、一層の孤独を感じるロッキーが、アドニスに向かって内なる感情を爆発させるシーンは切なく心に響く。

「クリード チャンプを継ぐ男」よりアドニス
アドニスが出会うビアンカは、自信と率直さ、現実を受け入れる強さをあわせ持つ女性だ。アドニスはあきらめず夢を追う彼女と親しくなるにつれ、有名な父親の存在を息苦しく感じて生きていることなど、自身が抱える不安や怒りを吐露するように。その彼に向かってビアンカはある一言を告げる。それはアドニスが探し求めていたピース=“自身は何者か”へとつながる答えだった。このときの2人のやりとりが、アドニスが臨む世界戦で描かれる重要なシーンとリンクする。

夢は明日を生き抜く勇気を与えてくれる

「ロッキー4 炎の友情」よりロッキー
アドニスの登場はロッキーの日常に大きな変化をおよぼす。アドニスの依頼をロッキーは一旦退けるが、彼のボクシングにかける情熱と純粋さに心を動かされ引き受けることに。再びボクシングと向き合う機会を与えてくれたアポロの息子。ロッキーはこの若者に自らの経験を伝え、ともに頂点を目指すことを誓う。ここから感動のクライマックスへと物語は一気に展開すると思いきや、ロッキーの前に大きな壁が立ちはだかる。ロッキーが下す決断とその理由は見逃せない!

「クリード チャンプを継ぐ男」よりアドニス
超一流ボクサーのDNAを継承するアドニス。卓越したセンスは父親譲りだが、その父親の存在こそが彼を長年苦しめてきた。アドニスは自分の知らない父を公私ともに知るロッキーと過ごす中で、“彼こそが自分の過去と未来をつなげてくれる存在”と信じ、自分自身を受け入れようと努力する。「ひたむきに前に進めば、いつか必ず夢は叶う」。“ロッキースピリット”を胸に、夢に向かって突き進むアドニスの姿を観れば、“明日も頑張ろう!”と勇気づけられること間違いなしだ。

「ROCKY」から「CREED」へ ―― 。 4つのキーワードで探る 生まれ変わった「クリード チャンプを継ぐ男」

多くの仲間に支えられ、ボクシングと真摯に向き合い、夢を追い続けた男の愛と戦いの日々をつづった「ロッキー」シリーズ全6作。不器用な不良者が愛と生涯の友、そして名声を手に入れ、いかにして伝説となったのか……。シリーズのあらすじとともに振り返ろう。

「ロッキー」
(1976年製作 / 日本公開1977年4月16日)

「ロッキー」
  • 監督:ジョン・G・アヴィルドセン
  • 脚本・出演:シルヴェスター・スタローン
  • 出演:タリア・シャイア、カール・ウェザース、バート・ヤング、バージェス・メレディス

米国フィラデルフィアの片隅で、賞金稼ぎのボクサーとして生きるロッキー・バルボアが、建国200年祭のイベントとして催される現役最強王者アポロ・クリードとの対戦に臨む。地元のペットショップで働く恋人エイドリアンや生涯の師で名トレーナーのミッキー、親友ポーリーとの交流も描かれる。

世界王者との決戦、“イタリアの種馬”ロッキーの伝説が始まる

格下のボクサーにアメリカンドリームを体現させる。アポロの人気取りで組まれた一戦だったが、ヤクザな暮らしを送っていたロッキーにとっては生きる目的を見つけた瞬間だった。本作は第49回アカデミー賞作品賞、監督賞ほかを獲得。

「ロッキー2」
(1979年製作 / 日本公開1979年9月1日)

「ロッキー2」
  • 監督・脚本・出演:シルヴェスター・スタローン
  • 出演:タリア・シャイア、カール・ウェザース、バート・ヤング、バージェス・メレディス

コケにされた!と復讐の念に燃える世界王者アポロとのリターンマッチに臨むロッキーが、エイドリアンとの結婚や子供の誕生を経て成長していく姿が描かれる。一夜にして有名人となったロッキーだが、激闘の末、眼にボクサー生命を脅かすほどの致命傷を負う。人生の壁につき当たったロッキーだが、妻やミッキーの支えを得て、再戦を決意する。

王者アポロとの再戦、ロッキーは真のボクサーへ

夫とファイター、それぞれ立場の狭間で苦悩するロッキー。だが妻の一言をきっかけに、ミッキーの猛特訓を耐え抜き、世紀のタイトルマッチへ挑む。ミッキー発案のにわとりを追いかける独特のトレーニング方法、けがした眼を守るための秘策などが登場する。

「ロッキー3」
(1982年製作 / 日本公開1982年7月3日)

「ロッキー3」
  • 監督・脚本・出演:シルヴェスター・スタローン
  • 出演:タリア・シャイア、カール・ウェザース、バート・ヤング、バージェス・メレディス

世界王者となったロッキーは、その後10度の防衛を達成。長く頂点に君臨し、充ち足りた日々を送る中でロッキーはハングリー精神を失う。そんな彼の前に闘争心むき出しの猛獣クラバー・ラングが現れる。最後の試合と決めて防衛戦に臨むが2ラウンドKO負け。さらにミッキーが急死し、ロッキーは奈落の底へと叩き落とされ、喪失感にさいなまれる。

アポロがロッキーのトレーナーに、堅い友情を育む

どん底のロッキーに手を差し伸べたのはアポロだった。悲しみを乗り越えたロッキーは猛特訓の末、ラングと再戦。アポロのトレードマークともいえる星条旗を模したボクサートランクスがロッキーへ受け継がれる。

「ロッキー4 炎の友情」
(1985年製作 / 日本公開1986年6月7日)

「ロッキー4 炎の友情」
  • 監督・脚本・出演:シルヴェスター・スタローン
  • 出演:タリア・シャイア、ドルフ・ラングレン、カール・ウェザース、バート・ヤング、バージェス・メレディス、ブリジット・ニールセン

引退から5年を経たアポロがソ連アマチュアヘビー級王者イワン・ドラゴと対戦。セコンドを任されたロッキーの目の前でアポロは命を落とす。復讐に燃えるロッキーは、エイドリアンの反対を押し切り敵地モスクワへ。最新科学トレーニングで鍛え上げたドラゴとの戦いに挑む。

アポロの死、国の威信をかけた最強の刺客との戦い

米国VSソ連の構図となった本作。殺人サイボーグのようなドラゴをドルフ・ラングレンが演じた。身長、リーチともにロッキーを上回るドラゴの冷徹な表情が印象に残る。アポロ最後の決戦前の余興には、ソウルシンガーのジェームス・ブラウンが登場。

「ロッキー5 最後のドラマ」
(1990年製作 / 日本公開1990年12月7日)

「ロッキー5 最後のドラマ」
  • 監督:ジョン・G・アヴィルドセン
  • 脚本・ 出演:シルヴェスター・スタローン 出演:タリア・シャイア、セイジ・スタローン、バート・ヤング

ドラゴとの激闘の末、脳に障害を抱え引退したロッキーは、トレーナーへ転身し後継者を育成していく。詐欺に遭い破産し故郷へと戻ったロッキーは、有望株トミー・ガンと出会う。ロッキーは若者に昔の自分の姿を重ね、第2の人生を懸ける。だがトミーは世間からロッキーのコピーと揶揄されることに苛立ち、金に目がくらみ、ロッキーのもとを去る。

師として父として、ロッキーの新たな挑戦

トミーに付きっきりで指導するロッキーは、アポロから譲られたトランクスを与えるなど熱心に愛を注ぐ。実力をつけるトミーの姿に自身のプライドを取り戻す一方、王者を育てて家族に楽をさせたいとの思いは息子に届かず不仲に。ロッキーJr.役はスタローンの実子。

「ロッキー・ザ・ファイナル」
(2006年製作 / 日本公開2007年4月20日)

「ロッキー・ザ・ファイナル」
  • 監督・脚本・出演:シルヴェスター・スタローン
  • 出演:タリア・シャイア、セイジ・スタローン、バート・ヤング、バージェス・メレディス

ボクシングを引退したロッキーだが再びライセンスを取得し、世界王者ディクソンとのエキシビション戦に挑む。地元でイタリアンレストラン“エイドリアンズ”を経営するロッキーは愛妻を亡くし、息子とも疎遠で孤独な毎日。そんな折、偶然再会したかつての知り合いと交流を重ねる中、再びボクシングへの情熱が沸き上がる。

現役最後の雄姿、ロッキーが生きる希望を世界に示す

義兄ポーリーを連れては妻エイドリアンとの思い出の地を巡り懐かしみ、店では来客相手に自身のかつての名シーンを語り聞かせる。喪失感を拭い切れないでいたロッキーだが、その悲しみを乗り越え、情熱を胸にリングに再び上がる。マイク・タイソンがカメオ出演。

「クリード チャンプを継ぐ男」2015年12月23日より全国公開

「クリード チャンプを継ぐ男」

元世界ヘビー級王者アポロ・クリードを父に持つアドニス。他界した父のことを何も知らないアドニスだが、たぎる情熱を抑えきれずプロボクサーとして生きることを決意する。義母メアリーの反対を押し切り、父のライバルだったロッキーを捜しに単身フィラデルフィアへ向かう。突如現れた若者の純粋なまなざしと、親友の面影を見たロッキーは、持てる技術のすべてを託し、ともに頂点への道を歩み始める。しかし世界王者とのタイトルマッチ直前、死にいたる病を宣告されるロッキー……。絶対的に不利な状況で、2人は奇跡を起こすことができるのか!?

スタッフ

監督・脚本:ライアン・クーグラー
脚本:アーロン・コビントン
製作:アーウィン・ウィンクラー、ロバート・チャートフ、チャールズ・ウィンクラー、ウィリアム・チャートフ、デイビッド・ウィンクラー、ケビン・キング=テンプルトン、シルヴェスター・スタローン
製作総指揮:ニコラス・スターン

キャスト

ロッキー・バルボア:シルヴェスター・スタローン
アドニス・ジョンソン:マイケル・B・ジョーダン
ビアンカ:テッサ・トンプソン
メアリー・アン・クリード:フィリシア・ラシャド
“プリティ”・リッキー・コンラン:アンソニー・ベリュー

「クリード チャンプを継ぐ男」

「ロッキー」全6作品をFOXムービー
プレミアムにて一挙放送
12月9日(水)8:20~20:55 /
12月23日(水・祝)10:20~23:00

2015年12月16日更新