映画ナタリー Power Push - 「バクマン。」

新井浩文、ジャンプ編集部へ“聖地巡礼” +スタッフ・キャストの“思い出のジャンプマンガ”セレクション

大場つぐみ、小畑健によるコミックを実写化した「バクマン。」は、2人の高校生がマンガを共作し、週刊少年ジャンプ(集英社、以下ジャンプ)での連載を目指して突っ走る青春映画。「モテキ」の大根仁が監督を務め、佐藤健と神木隆之介が主人公の最高と秋人を抜群のコンビネーションで演じた。

ナタリーでは、この映画のさまざまな面に焦点を当て、その魅力を紐解く特集を展開中。最終回にあたる第4弾では、最高と秋人のよきライバルであり、仲間でもあるマンガ家・平丸一也を演じた新井浩文が登場。毎週欠かさずジャンプを読んでいるという新井が、“聖地”ことジャンプ編集部を訪問する様子に密着した。案内人は、現「バクマン。」担当編集の片山達彦氏。後半では、編集部見学を終えた新井に、その感想やマンガ愛、映画「バクマン。」に対する思いなどを語ってもらった。さらに本作のメインキャストや監督に加えて、原作者の小畑健、音楽を担当したサカナクションの山口一郎から“思い出のジャンプマンガ”についてのコメントも到着しているので、こちらもお見逃しなく。

取材・文 / 浅見みなほ 撮影 / 笹森健一

“聖地巡礼”レポート
  • 左から片山達彦氏、編集部に足を踏み入れた新井浩文。
  • ジャンプ編集部を眺める新井浩文。
  • ノベライズ版「ラッコ11号」を手渡された新井浩文。

現「バクマン。」担当の片山達彦氏に連れられて、新井浩文はいざジャンプ編集部へ。するとすぐさま平丸一也名義のノベライズ版「ラッコ11号」を持った編集部員が駆け寄り、新井にお礼の声をかけたが……。

新井 お邪魔しまーす。

片山 映画だと編集部は3班体制って言ってたと思うんですけど、実際は4班体制にジャンププラス班を加えた5つに分かれてますね。週ごと、班ごとにジャンプを校了していくので、4週に1回ジャンプを作っている感覚ですね。

新井 なるほど。

編集部員 新井さん、「ラッコ11号」の帯、ありがとうございました!

新井 なにこれ!

編集部員 あ、知らなかったんですね(笑)。だいぶ前なんですけど、平丸一也の作品「ラッコ11号」が実際にあったらどうだろうっていうので小説版を作ってみたんですよ。それが今回の映画にあわせて重版がかかったので、帯に新井さんにご登場いただいたんです。ちゃんと事務所さんには確認取ってますよ!

新井 え、すごいうれしい!

  • 小畑健作品のコミック棚を眺める新井浩文。
  • 荒木飛呂彦作品が収納された引き出しを開ける新井浩文。

新井たちは、編集部内にある巨大な本棚へ移動。ここには過去のジャンプや単行本コミックスが膨大な量保管されており、それを見た新井の目の色が完全に変化する。

片山 ここが昔のジャンプやコミックスが全部入ってる棚です。

新井 ああ、絶版のやつとかもここにはあるってことですよね。

片山 ありますよ。

新井 はー。うち、ここに1年くらいこもれるな!

片山 棚の奥にもまた棚があって、ありとあらゆるマンガが入ってます。

新井 ここは小畑先生の棚か。「(BLUE DRAGON)ラルΩグラド」ってありましたよね?

片山 このコミックですね。鷹野常雄先生が原作を担当された作品です。Xboxでゲームが出てて……。

新井 そう、そのゲーム、やったんすよ、うち。

片山 そうなんですか! 海外の方にもけっこうファンが多いんですよ。海外のイベントにこのコミックを持ってきて、「ここにサイン書いてくれ!」って言うファンがいたりとか。

新井 すごい好きですもん、うち! ゲームも面白かったし。

片山 ほんとですか! ゲームも面白いですよね。鳥山明先生がイラストを描いていて。あと海外で小畑先生の作品で人気なのは「All You Need Is Kill」もありますね。

新井 ……荒木(飛呂彦)先生の棚はありますか?

片山 荒木先生は、ここですね(引き出しを開く)。

新井 うわーっ!

片山 ふふふ。

新井 「ジョジョ(の奇妙な冒険)」はもう、一番好きなジャンプマンガです。「JOJO A - GO! GO!」(画集)も持ってます。

片山 自分も持ってますよ。7000円くらいして、子供のときだったのでけっこう高価だったのを覚えてます。

新井 うちは石仮面持ってる。

片山 えっ、それはどこからか裏ルートで手に入れたんですか?

新井 裏ルート(笑)。ゲームが出たときに、プレゼント用のキーホルダーと原寸大の石仮面があったんですよ。その重たいやつをもらいました。

片山 本当に好きなんですね(笑)。

  • 過去のジャンプを広げる新井浩文。
  • 過去のジャンプを見ながら思い出話をする新井浩文と片山達彦氏。

一行は、コミックス保管棚から過去のジャンプが収納されたゾーンへ。「バクマン。」の連載1回目が掲載されたジャンプや、40年前のジャンプも発見し、新井と片山は思い出のマンガ話に花を咲かせる。

片山 ここまでがコミックスで、この先には過去十数年分のジャンプが全部置いてあります。もっと昔のものは別のビルにあるんですけど。「バクマン。」の連載1回目の号がこれですね。

新井 おお、何年ですか?

片山 2008年ですね。合併号で始まったんです。

新井 なるほどー。(亜豆美保の絵を見ながら)夏帆ちゃんに見えるんだよなあ。

片山 ふふふ、ちょっと似てるかもしれないですね。あ、これは同時期に連載が始まった「いぬまるだしっ」ですね。

新井 「いぬまる」で、向かいページの脇くんの名前を出すところに爆笑しましたよ。(※「いぬまるだしっ」の扉の対向ページには脇知弘が大きく写った芸能事務所テアトルアカデミーの広告が入ることが多く、作中にも脇の名前を使ったネタが登場した)

片山 えっ詳しいですね! 僕、「いぬまるだしっ」の担当してたんですよ。

新井 あれ、すっげえ面白かった。しかも脇くん選んだっていうのが、ナイスチョイス!

片山 けっこうギリギリなネタだと思いますけどね(笑)。「よく横に載ってる脇くんみたいだな」みたいなセリフは。

新井 懐かしいなあー。あ、「To LOVEる」には湯気が。

片山 湯気の話とかも、よくご存知ですね!

新井 いやいや、あれはけっこう有名ですから。

片山 週刊の「To LOVEる」担当は、歴代で湯気処理をやってきてたんですよ。(※「To LOVEる」には女性のバストトップが描かれた絵があったため、それを隠すために担当編集者が湯気の絵を切り貼りしていた)

新井 すげえなあ。

片山 こっちの棚には赤マルジャンプとかフレッシュジャンプもあって、今活躍してる先生がいて面白いですよ。で、これが、今の月刊ジャンプの前身・別冊ジャンプです。昭和47年とかですね。

新井 40年も前か。なんか表紙の字も男臭いっすね!

片山 筆字の書体で「暴れろ、ヒーローたち!」なんてフレーズ、今は入れないですからね! あ、本宮ひろ志先生の名前が! ジャンプの一時代を築かれた方ですね。

新井 あっ小林よしのり!

片山 「東大一直線」「おぼっちゃまくん」で知られるお方ですね。

新井 (小声で)絵がすげえな……。もうこれ、楽しい!

片山 ありがとうございます! こっちはジャンプSQ.なんですが……。

新井 あの、「バクマン。」に出てきたジャンプSQ.からのマンガ家の引き抜きみたいなことは、本当にあるんですか?

片山 あったのかもしれないけど、そんなに露骨ではないと思いますよ。「テニプリ(テニスの王子様)」は今もSQ.で輝いてますね。

新井 ふーん。

  • 漫画賞応募作品を手に取る新井浩文。
  • 漫画賞応募作品の作者プロフィールを見て驚く新井浩文。

続いて新井が訪れたのは、マンガ家志望者たちのマンガ賞応募作品の保管場所。将来の大先生の作品が紛れているかもしれないと目を輝かす新井は、すぐさま原稿に手を伸ばすが……。

片山 これはちょっとマニアックなゾーンで、漫画賞の応募作品です。手塚、赤塚二大賞とか、トレジャー新人漫画賞とか。

新井 要はまだ、世に出てない?

片山 そうです。

新井 えっ、読んでみたい!

片山 どうぞ。描いた人もまさか新井さんに見られるなんて思ってなかったでしょうね。

新井 (原稿をめくって)……これでできあがり?

片山 そうです(笑)。でも本当にこういう感じなんですよ。

新井 うちも映画でぴあフィルムフェスティバルの審査員やったことがあるんですけど、同じ感じですね。でもレベル高いのもありますよね?

片山 もちろん、あります! 明らかにレベルが違うのもありますし、今はレベルが低いけどこれから伸びそうだなっていうものも。5年、10年くらいのスパンで、10代でこれだったら将来絶対伸びるって子は、すぐ「これから一緒にやろう」って電話しますね。

新井 でもこれ描いたの、19歳だよ……。10代でこの出来って、すごいんじゃないの。

片山 でも矢吹(健太朗)先生なんかは10代でけっこう連載抱えてたんで。

新井 すげえなあ……。

片山 若い男の子は伸びしろがあるんで、下手でも若い子だったらけっこうすぐ電話しちゃいます。

Contents Index

作品解説&キャラクター紹介
大根仁×佐藤健×神木隆之介
小畑健×大根仁
番外編 佐藤健×神木隆之介 “持ち込み”体験記
山口一郎(サカナクション)×大根仁
新井浩文、ジャンプ編集部へ

About the Movie

「バクマン。」

「バクマン。」2015年10月3日より全国東宝系にて公開

スタッフ

監督・脚本:大根仁
原作:大場つぐみ、小畑健
主題歌:サカナクション「新宝島」

キャスト

真城最高:佐藤健
高木秋人:神木隆之介
新妻エイジ:染谷将太
亜豆美保:小松菜奈
福田真太:桐谷健太
平丸一也:新井浩文
中井巧朗:皆川猿時
服部哲:山田孝之
川口たろう:宮藤官九郎
佐々木編集長:リリー・フランキー

Profile

新井浩文(アライヒロフミ)

1979年1月18日、青森県生まれ。2003年、映画界デビューともなった初主演作「青い春」(2002年)で高崎映画祭の最優秀新人男優賞を受賞した。以来「ゲルマニウムの夜」や「BOX 袴田事件 命とは」など多数の映画に出演。2014年には第88回アカデミー賞外国語映画賞部門日本代表に選ばれた「百円の恋」をはじめ、7本もの出演作が公開された。「モテキ」や「ど根性ガエル」といったテレビドラマでも存在感を放っている。新井がナビゲーターを務め、親しい俳優や監督と全国各地の酒場を巡るテレビ番組「美しき酒呑みたち」もBSフジにて放送中。

映画「バクマン。」×au スペシャルサイト
auスマートパス会員限定 毎週月曜日はauマンデイで映画が1100円!