映画ナタリー Power Push - 「バクマン。」
新井浩文、ジャンプ編集部へ“聖地巡礼” +スタッフ・キャストの“思い出のジャンプマンガ”セレクション
好きなマンガのセリフを、内緒で映画の中に入れてる
──編集部見学、いかがでしたか?
撮影で1回来てるんですけど、そのときは誰もいなかったので、こうやって生の現場を見れてすごくよかったです。昔のジャンプとかもそうなんですけど、いわゆるまだ世に出てない原稿を見せてもらうとちょっと……ビビるね。見ちゃいけないんじゃないかって。さっき1個とんでもない事実を知っちゃったので……。
──「火ノ丸相撲」の続きの展開ですよね。
そう。一番上にあったから、今週のやつかなと思って手に取ったら、「ハッ! 来週発売の号じゃん!」って気付いて。
──ジャンプは何歳の頃から読まれてるんですか?
小2です。きっかけは覚えてないですね。でもその頃は読み飛ばしてる連載もあって、好きなマンガしか読んでなくて。中高くらいから1冊全部を読み始めたんです。「ジョジョ(の奇妙な冒険)」とか「ドラゴンボール」とか、王道は全部読んでましたね、「SLAM DUNK」もそうですし。うちらが小6から中学に上がるときに、「SLAM DUNK」の影響でバスケが鬼流行って、中学校でみんなバスケ部に入ったんですよ。そんな世代です。
──今までで一番ハマったジャンプマンガはなんですか?
「ジョジョ」が一番好き!
──見学されてるときも「ジョジョ」トークで目の色が変わってましたよね。好きなのは「ジョジョ」の何部ですか?
全部。ジャンプ読み始めた時期的に、3部から入ったんですよ。そこでどハマりして、さかのぼって1部から買い始めて。どの部もすべてがいいんですよ。一般的に人気があるのは“スタンド”になってからの3部だと思うんですけど、“波紋”のときも設定、セリフのチョイス、絵、あと有名だけど、擬音が最高で。「ジョジョ」の場合、うちは味方より敵のほうが好きなキャラが多くて。ディオとか、2部に出てくる炎のエシディシっていうキャラが好きなんです。これ全然関係ない話なんですけど、うち、好きな歌の歌詞とか、好きなマンガのセリフとかキャラの仕草を、たまーに内緒で映画の中に入れてるんですよ。
──え、そうなんですか!
過去に気付いた人はほとんどいないんですけど(笑)。最近だと、「百円の恋」って映画の中で、「ジョジョ」のある場面のコピーをしてるんですよ。誰にも言ってないんですけど、1人だけ山本浩司さんっていう先輩の俳優さんが気付いて。班長さん(山本のアダ名)が、「あそこ、『ジョジョ』のあれだよね、一瞬でわかったよ」って言うくらい、好きな人には一瞬でバレるんですけどね。「ジョジョ」の中にはそういう、マネしたいとか、いずれここで使ってやろうとか思う名場面が多いですね。映画じゃないけど、「ど根性ガエル」っていうドラマの撮影で、松山(ケンイチ)くんが「新井さん、あのシーン、エシディシでやってくださいよ」って言ってきて。エシディシは腕切られたときに、怒るんじゃなくて号泣するんですよ、「HEEEEYYYY、あァァァんまりだァァァァ」って。だからカメラテストのときに1回演ったんですけど、監督が「えっ? 新井くん、何それ?」って(笑)。本番ではできなかったですね。
──(笑)。自分が影響を受けたものを演技に差し込むというやり方は、いつ頃思い付いたんですか?
思い付いたっていうより、デビューしてから今も変わらず、結局演技っていうのは体験してきたことか想像の範疇でやるわけですよ。例えば映画の中で人を刺します、でも実際は刺したことないですっていうとき、刺したらこうなるんじゃないかって想像するわけじゃないですか。でも見たことないものを想像できないんですよ、人間って。
──なるほど。フィクションのストックが演技の引き出しになっていると。じゃあジャンプマンガもすごく肥やしになってるわけですね。
はい。そういうのが多々ありますね。
──「ジョジョ」の中に、いずれ演技で使おうと思ってストックしてる名場面とかってあります?
あります、あります。「ここだ!」っていうときに、いずれ出すかもしれません。
──それはあらかじめ教えてもらうことはできないですよね……?
それはないです! だって、言ったらできないじゃない! 仮にこのインタビュー読んで、映画で実際にやってるのを観た人がいたら「うわ! こいつ、やりおった!」って思われるからね(笑)。
基本的にマンガは全部、映画化の可能性を考えてる
──「バクマン。」原作マンガの連載もリアルタイムで読まれていたと思いますが、完成披露のときに新井さんは、「『バクマン。』の映画は、マンガとは別物です!」と断言されてましたよね。
うん。具体的には、映画には出てこない主要キャラがいるじゃないですか。(高木)香耶ちゃんとか、蒼樹紅もそうだし。あと、亜豆(美保)の設定が一番違う。うちは2稿か3稿くらいから脚本を読んでて、大根(仁)さんにも「最高のことをずっと待ってるのが亜豆だから、そこを崩したら原作ファンは誰も納得いかないよ!」って散々言ったんですけど、あの人も「これがいいんだ」って頑として譲らず。まあ結果として映画は面白いし、すごく素敵な作品だっていう自信もある。でも、原作ファンが一番驚くのは、やっぱり亜豆のキャラ設定じゃないですかね。
──映画ならではの素晴らしい点はどんなところですか?
やっぱり今回初めて大根さんが使った、プロジェクションマッピング。絵を描くという作業をCGバトルにしちゃうっていうのも完全に大根さんの発想勝ちじゃないですか。それは映画でしかできないことだし、大根さんの力だと思いますね。
──「バクマン。」原作マンガをジャンプで読まれていたときは、映画化される可能性について考えていました?
基本、マンガは全部考えてます! 「ああ、これも映画になるんだろうな」って。今の映画業界を否定したいわけではないんですけど、基本的にオリジナル映画って作りにくいじゃないですか、やっぱり人気のある原作ありきで。でも原作が面白かろうが、原作ファンが全員映画を観ると思ったら大間違いなんですよ! うちは、映画にお客さんが入るか入らないかっていうのは、映画自身の力だと思ってるんで。でも実際マンガを映画化するパターンは多いし、うちはマンガがものすごく好きだから必然的に「あ、これ映像化したらこうなるんだろうな」っていうのは考えますね。
──それは配役も考えたりするんですか? 主役をやるならこの俳優さんがいい、ですとか。
配役は考えないですけど、「これだったら自分も出たいな」とかは思いますね。「バクマン。」は、「演るんだったら絶対平丸!」と思ってました。一番好きなキャラなんで。公表されたときに、けっこう「イメージと違う」って書かれたんですけど、余裕で演れる自信あったから「まあ観てから書きなさいよ」って思ってました(笑)。
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Contents Index
About the Movie
「バクマン。」2015年10月3日より全国東宝系にて公開
スタッフ
監督・脚本:大根仁
原作:大場つぐみ、小畑健
主題歌:サカナクション「新宝島」
キャスト
真城最高:佐藤健
高木秋人:神木隆之介
新妻エイジ:染谷将太
亜豆美保:小松菜奈
福田真太:桐谷健太
平丸一也:新井浩文
中井巧朗:皆川猿時
服部哲:山田孝之
川口たろう:宮藤官九郎
佐々木編集長:リリー・フランキー
Profile
新井浩文(アライヒロフミ)
1979年1月18日、青森県生まれ。2003年、映画界デビューともなった初主演作「青い春」(2002年)で高崎映画祭の最優秀新人男優賞を受賞した。以来「ゲルマニウムの夜」や「BOX 袴田事件 命とは」など多数の映画に出演。2014年には第88回アカデミー賞外国語映画賞部門日本代表に選ばれた「百円の恋」をはじめ、7本もの出演作が公開された。「モテキ」や「ど根性ガエル」といったテレビドラマでも存在感を放っている。新井がナビゲーターを務め、親しい俳優や監督と全国各地の酒場を巡るテレビ番組「美しき酒呑みたち」もBSフジにて放送中。