プロ野球選手を夢見る高校球児の物語を、少ないセリフでつづった映画「郷(ごう)」。同作が2026年1月2日に鹿児島・鹿児島ミッテ10で封切られたのち、1月9日より東京・新宿ピカデリーほか全国で順次公開されるとわかった。
構想から完成まで約10年をかけた同作は、怒号が飛び交うグラウンドで懸命に練習する岳(がく)による93分の青春叙事詩。野球部内で起こる人間社会の理不尽さや残酷な現実に苦しむ彼は、優しく励ましの言葉を掛ける担任・霧島に心を救われ、幼なじみ・隆(りゅう)との再会によって昔の記憶をよみがえらせていく。やがて岳は、隆もまた同じように悩みや苦しみを抱えながら生きていたことを知るのだった。
監督を務めたのは、北京電影学院の監督学科を卒業した伊地知拓郎。語りを
あわせて「侍タイムスリッパー」の監督・
「郷」の配給はマイウェイムービーズ、ポルトレが担当。ムビチケ・全国共通特別前売り券が税込1500円で販売されている。
伊地知拓郎 コメント
「郷」は、一人の人生を通して、誰にでも起こりうる何気ない日常を描いています。
人生には思い通りにならないことが起き、予期せぬ困難と闘いながら私たちは今を生きている。
しかし、子どものころはどうだったか? 「郷」のテーマは、「幸福の追求」。
その制作モチベーションの源には、日本人の精神的幸福度の低さ、若者の自殺率の高さという
統計的事実と、海外生活での実体験から危機感を抱いたことにあります。自分に何ができるのか──
映画を一つの手段として、潜在意識に届けることができれば、人々の心を救えるかもしれないという可能性を見出し、「郷」が生まれました。私自身も苦しかった時期があったからです。
物語は社会的幸福度と自然的幸福度を対比しながら、誰もが日常の中で感じることができる自然的幸福の回路を見つけ出し、忘れかけていた感情や潜在意識を呼び起こす“知的冒険心の探究”なのです。そして、観客自身の感情や深層心理と素直に向き合える時間となり、少しでも心が救われることを願っています。
小川夏果 コメント
留学先の北京電影学院で監督と出会い、心が洗われるような作品の美しさ、ユニークな音作り、映画作りへの誠実な姿勢に心を奪われました。学生時代、事故に遭いPTSDになった経験から、命の尊さを伝える使命を持ちました。それが映画作りに繋がっています。本作のテーマは「人々の精神的幸福度を上げること」。
苦しみを抱える人々の心を解放できるよう、多くの人に「郷」を届けられるよう願っています。
鹿児島先行公開の意義
「郷」を撮影するために鹿児島へ来たとき、鹿児島の美しさに魅了されました。
撮影が1年半続く中で、鹿児島への移住を決断。鹿児島を舞台にした哀愁や郷愁が溢れる「郷」を鹿児島県民にいち早く届けたい── 一人でも多くの方の心に響くことを願っています。
教育的意義(文部科学省選定)
(選定日:2024年2月/科目:生き方、人生設計)全国の中学/高校を対象に心の健康や生き方を考える「郷」(3つの“ごう”)学習プログラムを作り、教育現場で活用が進んでいます。子どもたちの心の成長に貢献できるような取り組みを今後も広めていきます。
安田淳一 コメント
野球に打ち込む高校生の夢と挫折、そして少年時代を過ごした故郷への郷愁。
極端に少ないセリフ、人間の視野に近い画角、浮遊感のある映像、壮大なオーケストラ音楽。
ドキュメンタリーの質感で控えめに提示される情報は、鑑賞者自らが「物語」を紡ぐことを求められる。その結果、映画の主人公の少年時代の記憶が、見るもの自身のそれと入れ替わる。
スクリーンの映像を、自ら物語として構成しようとする過程で生じる自己投影。
映画が「他人の物語」への共感により感動を生じさせる装置とするならば、
「郷」の独特の語り口は、「他人の物語」を「鑑賞者の物語」へ転じる事に成功している。
泉澤祐希の映画作品
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映画ナタリー @eiga_natalie
セリフを極力排した93分、高校球児の青春を紡ぐ「郷」公開 泉澤祐希が語り担当(監督コメントあり)
「侍タイムスリッパー」の監督・安田淳一も推薦
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#郷 https://t.co/0FuwkTdLXK