「田辺・弁慶映画祭セレクション2025」の1作品として、「
第18回田辺・弁慶映画祭で最高賞の弁慶グランプリのほか、観客賞、キネマイスター賞、フィルミネーション賞、わいず倶楽部賞を獲得した本作。理性を持ち合わせたゾンビの家族を軸に、SNSが普及した時代の現代人がユーモラスに描かれる。今まで人目につかないよう、家の中から一切出ることなく静かに暮らしていたゾンビ一家。だが外を知らない娘のために、人間と共存していきたいと父親は考えていた。ある日、家の前で起こった事故の被害者に娘が噛みついてしまったことをきっかけに、父親はこのままゾンビ感染者を増やしていこうと試みる。SNS上ではゾンビは物珍しく、多様性の時代だと一時は持てはやされるが、ゾンビ一家の炎上をきっかけに世論が変わっていく。
監督を務めたのは前作「ホモ・アミークス」がPFFアワード2023や第17回田辺・弁慶映画祭で入選し、第15回下北沢映画祭でグランプリを獲得した
馬渕ありさ(監督・脚本・撮影・編集)コメント
ここ10年ほどで、SNSと常に隣り合わせな生活になったことで、人が潜在的に持っている攻撃性を目にしやすくなったのではないかと感じています。
毎日誰かしらがネット上で叩かれ炎上している中で、顔も見えない人々がじわじわと数を増して対象を追い詰めていく様子を今回ゾンビ映画の中で表現したいと思い、本来大勢で追い詰める側の”ゾンビ”という種族が少数派で、多数派である人間に追い詰められるという構図で制作しました。
直接顔を合わせることなく、一瞬で簡単に文字だけで攻撃できるのが当たり前になった社会で今一度自分たちを客観視して、滑稽に表現できていればと思います。
犬童一心(映画監督)コメント
忘れちゃいないか、ゾンビも人間だぜ。馬渕ありさワールドは、なんだこれは!と、見たことのないおかしな世界に笑っていても気づけばザラリとしたリアルな舌触りが残る。それが魅力。ほんとはきっと、監督は笑顔の向こうですっごく怒ってる。そして、こんなひどい世界は無理せずサッサと逃げ出せ!と言ってもらえてホッとする。さて、次はどんな世界を見せてくれるのか、すっごく楽しみ。
沖田修一(映画監督)コメント
真面目なんだか不真面目なんだか、笑っていいんだか、どうなんだか。そんな映画が好きですが、馬渕さんの映画はまさにそれです。好き放題やってるんで、観ると、負けてられないなと元気が出ます。これからも気持ち悪くて、楽しい映画を。
武富健治(マンガ家)コメント
自主製作ならではのインパクトや味わいはしっかり出しつつ、そうした作品にありがちな閉鎖的な臭みを抑えて、マニアならずとも鑑賞できる開いた表現で丁寧に作り上げているところがむしろ新鮮で、魅力的。
深いテーマをうまく物語に織り込んだ大胆な内容に対して、表現には演技指導やフィルムカットのタイミングなど、きめの細かい抑制があり、馬渕監督には、広い対象に独自の世界観を届けられる作家的な手腕を感じる。
t-cinema(トモ) @tcinema8
ゾンビ一家を軸に多様性の時代描く「噛む家族」公開、犬童一心らの応援コメントも https://t.co/H5PLn7Cimm