「オオカミの家」監督、ナチスドイツの影を探った新作「ハイパーボリア人」を語る

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「ひろしまアニメーションシーズン2024(HAS)」が本日8月14日に広島・JMSアステールプラザほかで開幕。オープニング作品として、「オオカミの家」を手がけたデュオ、クリストバル・レオンホアキン・コシーニャによる新作長編「ハイパーボリア人」が上映され、コシーニャが登壇した。

「ハイパーボリア人」上映後に登壇したホアキン・コシーニャ(左)、山村浩二(右)。

「ハイパーボリア人」上映後に登壇したホアキン・コシーニャ(左)、山村浩二(右)。

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HASは、2022年に始まったひろしま国際平和文化祭のメディア芸術部門の事業として、環太平洋・アジア地域を中心に全世界のアニメーションを紹介する国際映画祭。世界4大アニメーション映画祭の1つとして知られ、2020年に終了した広島国際アニメーションフェスティバルが新たな装いで生まれ変わった形だ。

山村浩二

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会場にはまず、本映画祭のアーティスティック・ディレクターを務める山村浩二が登壇。彼は「『ハイパーボリア人』は、ライブアクション、コマ撮り、人形劇などいろいろな要素が詰まった作品で、実在したチリのミゲル・セラーノという人物がキーワードになっています。(カール・グスタフ・)ユングやヘルマン・ヘッセなどとも交流があった、博識ですがやや特別な思想を持った人です。彼の話題をベースに、実在する人物やフィクションをミックスさせた独特な世界を楽しんでいただけるかと思います」と解説した。

「ハイパーボリア人」場面カット

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「ハイパーボリア人」は第77回カンヌ映画祭の監督週間で上映されており、本日が日本プレミアとなった。本作では、1人の女優の“演技”を通し、チリの暗部に潜むナチスドイツの影を探る。レオンとコシーニャもグロテスクな人形として出演した。

ホアキン・コシーニャ

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上映後、観客の拍手に迎えられながら登場したコシーニャは、本作のアイデアについて「セラーノはナチ新派の極右の外交官で、チリの文学の世界では比較的よく知られた人物。彼がいたこと自体が奇妙なことなので、チリの政治や歴史に向き合うときはそれに匹敵する奇妙さで挑まなければいけないなと思って作りました」と語る。続けて「ナチスにまつわる作品だけど、個人的には“決断する”ことや“ものを作る”ということの困難にまつわる作品だと思う。女優1人と作ると決めていたので、監督の俳優の関係とはなんなのか、といったことも学びながら作りました」と説明した。アニメーション作品の制作の大変さに触れ「実写映画のほうが速くできるのでは?と考えた」と述べるコシーニャだが、実際には脚本ができるまで6年以上の年月を要したという。

左からホアキン・コシーニャ、山村浩二。

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山村は「一見、すごくラフに撮影しているようにも見えますが、どれぐらい周到に準備しているのですか?」と質問。コシーニャは「撮影の何週間か前からワークショップを開いていろんな人に入ってもらい、人形の90%ぐらいはその人たちが作ってくれたものです。スケジュールを組んで『この順番で撮影しよう』というよりは、簡単なルールやシステムだけ作って、そこに入ってきてくれた人とコラボができればと思っていました。なので、その仕組み作りの準備はありましたが、やりながら即興的にいろんな人と作っていった作品です」と明かした。

ホアキン・コシーニャ

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また本作に影響を与えたものに関して、コシーニャは「僕とレオンは、映画というものが誕生した頃のテクノロジーに興味があります」と話し始め、「新たな技術やジャンルなどが生まれた瞬間にはまだルールがない。『こうやるんだ』と確立される前が面白いと思っていて、あのウォルト・ディズニーでさえ実験しないといけなくなるんですよね。創成期に実験していたメディア自体を扱った作品などに影響を受けています」と説明した。

最後にコシーニャは、レオンからの音声メッセージを観客に届けた。レオンの「広島の皆さん、こんにちは。何年か前に日本に行ったことがあって、本当に大好きで、今回は行けずに残念です。映画、楽しんでください」というコメントのあと、コシーニャが日本語で「ありがとう」と伝え、イベントは終了した。

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