「怪物」「雑魚どもよ、大志を抱け!」がTAMA映画賞の最優秀賞に、是枝裕和は今後語る
2023年11月25日 22:58
8 映画ナタリー編集部
第15回TAMA映画賞の授賞式が本日11月25日に東京・パルテノン多摩で開催。最優秀作品賞を受賞した「怪物」の監督・是枝裕和、「雑魚どもよ、大志を抱け!」の監督・足立紳らが出席した。
前年10月から当年9月に一般劇場で公開された作品および監督、キャスト、スタッフを対象に、市民ボランティアの実行委員が選考を行うTAMA映画賞。映画ナタリーでは最優秀男優賞、最優秀女優賞、最優秀新進男優賞、最優秀新進女優賞の受賞者たちのレポートも掲載している。
是枝が監督し、坂元裕二が脚本を執筆した「怪物」では、ある郊外の学校で起きた子供同士の喧嘩が社会やメディアを巻き込んで大事になっていくさまが描かれる。同作は、第76回カンヌ国際映画祭でクィアパルム賞とコンペティション部門の脚本賞を獲得した。キャストの黒川想矢、柊木陽太と一緒に登壇した是枝は「作品は監督のものではなく、キャスト・スタッフ全員の力が集まってできるもの。今隣にいる2人に出会えたことが一番大きかったなと思います」とコメント。黒川は「すごく皆さんが優しかったです。監督がOKと言うまで何回も何回も演技するのが楽しくて、OKって言われたくないなって(笑)」と言い、柊木は「僕がお芝居しやすいように、スタッフさんも監督も気さくに話しかけてくださってすごくうれしかったです」と現場を振り返る。そして是枝は「今日珍しく緊張してるのは、大先輩がいるからです。阪本順治さんとはさっき挨拶しましたが、会うと緊張する方たちがいるんですよ。その方たちに負けないようずっと現役でがんばっていきたいです」と意気込んだ。
足立が執筆した小説「弱虫日記」を自身で映画化した「雑魚どもよ、大志を抱け!」。キャストたちと一緒にステージへ上がった足立は「キャストたちが作品を楽しんでくれていたらうれしいですね。彼らにこういう場に連れてきてもらったと思っています。本当にありがとう」と感謝を伝えた。キャストの田代輝は「監督の優しさと、池川侑希弥くんの明るさに助けられました」、白石葵一は「このキャストに選んでいただいたことは一生の宝物です」、松藤史恩は「生まれて初めてファンレターをいただいてうれしかったです」と述懐。岩田奏は「あの当時だったから表現できたものがあったと思います」、蒼井旬は「これからも“雑魚ども”なりに大志を抱いて、みんなでがんばっていきたいです」、坂元愛登は「この作品を通して、たくさんの方々で1つの作品を作り上げることの楽しさを感じることができました」とコメントする。そして最後にはキャスト陣から足立へメッセージ入り色紙がプレゼントされた。
最優秀新進監督賞は「山女」の福永壮志、「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」の金子由里奈が獲得。山田杏奈が主演した「山女」では、18世紀後半の東北に生きる少女が描かれた。「遠野物語」から着想を得て同作を作った福永は「長く海外にいて、帰って来て初めて撮った作品です。この賞で自分の新たな進路へ背中を押してもらえました」「撮影監督と『言葉ではなく映像で畏怖を感じる自然を撮ろう』と考えました。そのビジョンと皆さんの才能のおかげで具現化できたと思っています」と述べ、「社会で陽の当たらないようなマイノリティの主人公をこれからも継続して描いていきたいです」と語った。
ぬいぐるみとしゃべる人が集まるサークルを舞台にした「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」を手がけた金子は「原作者をはじめ、スタッフ、キャスト、観てくれた方々、私に映画を撮る勇気を与え続けてくれる多くの映画に感謝します」と挨拶する。「ぬいぐるみ視点のカットが生まれた訳は?」というMCの問いには「この世界には、人だけでなく物や場所にも視座があると思っています。そういったところに少しでも人の意識が向いたら、心にゆとりが生まれると考えて。また物語のキーパーソンである白城ゆいを見つめる視点が必要だったので取り入れました」と話し、「いろんな人や幽霊、植物、記憶の居場所となるような映画を作りたいので、お声掛けください」とアピールした。
特別賞は「リバー、流れないでよ」の上田誠、山口淳太をはじめとするヨーロッパ企画およびスタッフ・キャスト一同のもとへ。原案・脚本を担った上田、キャストの藤谷理子、永野宗典がステージに上がった。上田は「映画も劇団活動の一環として考えています。自分たちならではの映画が作れないかと模索してきて、京都の貴船を舞台に、2分間の長回しを36回繰り返すという思い切った手法で作ることになりました」「演劇においては役者さんに当て書きをしているのですが、今回は"場所"に当て書きしました。貴船の地形に合わせて物語を作っていったんです」と制作経緯を述べる。台本を読んだときを回想した永野は「トリッキーで変態的な作品だな、一般受けしないだろうと正直感じました。ところが公開から半年が経っても上映が続いていて、これは奇跡です」と喜びをにじませ、藤谷は「本当に2分の尺で撮影していたので時間がオーバーしたりショートしたりで撮り直しすることも多々ありました。映像チェックをするときは祈るような気持ちで、OKが出ると毎回クランクアップのように喜んでいたことが印象に残っています」と笑顔を見せた。
同じく特別賞は長編アニメーション「君たちはどう生きるか」を手がけた宮崎駿およびスタッフ・キャスト一同に贈られた。スタジオジブリ執行役員の野中晋輔は、最初に宮崎からの手紙を出して「歴史ある映画祭で特別賞をいただき、大変光栄に思います」「僕もずいぶん歳を取って長い時間仕事に集中することができなくなっているのに、映画を完成させ、公開できたのは支えてくれた多くのスタッフとキャストの皆さんのおかげだと思います。心から感謝申し上げます」と読み上げる。作品について尋ねられると「スタッフは毎日ひたすら作り続けました。1枚1枚全部手描きでやっていて、それを積み重ねるしかなく、目の前の仕事を1つずつ繰り返してここまで来たという感じだと思います。宮崎監督にとって『君たちはどう生きるか』はまだ終わってません。ただ、ヒットしたことに関しては安堵していて、お客さんに非常に感謝しています」と会場へ語りかけた。
そのほかの受賞結果は下記の通り。
※宮崎駿の崎は立つ崎(たつさき)が正式表記
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Hayao Miyazaki y Studio Ghibli han recibido un Premio Especial en la 15.ª edición de los TAMA Film Awards por su trabajo en 'El niño y la garza'. El premio lo ha recogido Shinsuke Nonaka en nombre del maestro.
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