“俳優・松坂桃李が妄想した映画のフライヤーを作る”という雑誌連載をまとめたビジュアルブック「妄想・松坂桃李」。その中から3作品を映像化する番組「月刊 松坂桃李」がWOWOWで展開中だ。
現在、松居大悟が監督を務める10月号「横★須★賀 探偵事務所」が配信中。本日11月17日には、沖田修一が監督を務める11月号「ダンディ・ボーイ。」の放送・配信がスタートした。齊藤工が監督を務める12月号「何もきこえない。」は12月14日より放送・配信される。
映画ナタリーでは、「月刊 松坂桃李」の原案・主演を担う松坂桃李にインタビュー。打ち合わせの中盤までドッキリだと思っていたという企画の始まりから、完成した映像を観たときの感動まで、その胸中を語ってもらった。
取材・文 / 尾崎南撮影 / 清水純一
「月刊 松坂桃李」PR映像が公開中
打ち合わせの後半で、「これは本当のやつか」
──本番組では、“松坂さんが妄想した映画のフライヤーを作る”という雑誌連載をまとめたビジュアルブック「妄想・松坂桃李」の中から、3作品が映像化されます。最初にお話を聞いたときは、どんなお気持ちでしたか?
とてもびっくりしました。まさか本当に実現して、映画ナタリーさんの取材を受けることになるとは……(笑)。WOWOWさんが「妄想・松坂桃李」「妄想・松坂桃李2」を持ってきてくださって、実写化しませんかとご提案いただいたのですが、打ち合わせの中盤くらいまではずっとドッキリだと思っていました。最後のほうになって、「これは本当のやつか」って思い始めて。
──松坂さんとしては、予想外の展開だったのですね。
そうですね。もし可能なのであれば、ぜひやらせてくださいという気持ちでしたが、もちろん不安要素もありました。僕は妄想でプロットを作りましたが、実際に撮るとなるとセリフも必要だし、台本も用意しなければいけない。でも、打ち合わせを重ねるごとにどんどん話が進んでいって、驚きの連続でしたね。最後の最後まで、ずっと驚いていました。
──ファンの方からは「実写化してほしかったからうれしい」という声もありましたね。
その反響がうれしくて! 「待ってました」という声もあって、待ってたの!?とそこにも驚きがありました(笑)。
ひな鳥が大きな翼を広げて飛んでいったような感動
──「妄想・松坂桃李」にはたくさんの“妄想映画”が収められていますが、映像化した3作品は、松坂さんがセレクトされたのでしょうか?
まずはいくつか現実的に映像化できそうなものをWOWOWさんがピックアップしてくださいました。そのラインナップの中から僕が選んでいます。「横★須★賀 探偵事務所」を選んだのは、個人的に探偵ものに興味があったから。映像から汗や匂いが香ってくるような作品は「孤狼の血」以来だったので、やってみたいという思いがありました。「ダンディ・ボーイ。」は、自分の妄想の中でもお気に入りというか。緑色のジャージを着てお芝居をすることってあまりないと思うので、チャレンジしてみたかったんです。作品のカラーが異なる3作品にしたいという気持ちがあったので、テイストが違う「何もきこえない。」もセレクトさせていただきました。
──「横★須★賀 探偵事務所」は松居大悟さん、「ダンディ・ボーイ。」は沖田修一さん、「何もきこえない。」は齊藤工さんが監督を務めています。
WOWOWさんと「この作品を撮ってもらうなら誰がいいですかね?」と相談しながら名前を挙げさせていただきました。皆さんずっとご一緒したかった方々で、快く引き受けてくださいました。松居さんも、沖田さんも、齊藤さんも、よくこの企画を受けてくれたなって(笑)。皆さんが面白がって三者三様の色を付けて撮ってくれて、とてもありがたかったです。
──松坂さんは3作品すべての主演も務めていますが、自分の妄想が原案の作品に出演するというのは、どんな気持ちでしたか?
役作りの負荷がないというのが、ほかの作品と全然違いました。自分で考えて寝かせてある状態なので、いちから考え直す必要がないんです。どちらかと言うと“思い出す”のほうが近いかもしれないです。だいぶ前に妄想したものなので、当時の自分がどういう考え方をしていたのか答え合わせをするイメージです。
──できあがった作品をご覧になって、いかがでしたか?
まさに“巣立った”感じです! ひな鳥が大きな翼を広げて飛んでいったような感動がありました。二次元だったものが立体になって、声を出して動き出すような……。
原案を汲み取ってくれたのは、本当にありがたかった
──松坂さんの感動が伝わってきました。ここからは作品ごとのお話も聞いていきたいと思います。「横★須★賀 探偵事務所」で松居大悟さんとの初タッグはいかがでしたか?
松居さんと一緒に作品作りができて、本当によかったです。松居さんの熱量に引っ張っていただきました。脚本を手紙とするならば、その手紙のやり取りが打ち合わせのようでした。脚本を受け取って、自分の解釈を現場で披露する形で進めていきましたね。
──原案は松坂さんご自身なわけですが、松居さんの脚本と原案のイメージにズレが生じることはなかったんでしょうか?
それがまったくなかったんです。僕の原案はプロットしかないのに、松居さんはポイントをちゃんと拾っていた。こちらの原案を汲み取ってくれたのは、本当にありがたかったです。キャストも豪華で……。スタッフさんに「見上愛さん、永瀬正敏さんにちゃんと説明しましたか? 大丈夫ですか?」って何度も確認しました。こんなふざけ倒した企画に出てくれるなんて、信じられないです。「横★須★賀 探偵事務所」はアクションシーンも見どころなので、ぜひ観てほしいです。
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撮れば撮るほど「あれも撮りたい。これも撮りたい」