「
第74回ヴェネツィア国際映画祭でキャストのカメル・エル=バシャが男優賞を獲得した本作。アデル・カラム演じるキリスト教徒のレバノン人・トニーと、エル=バシャ扮するパレスチナ人・ヤーセルの口論が裁判沙汰となり、国家を揺るがす騒乱へと発展していく。19年ぶりに日本を訪れたドゥエイリは「もともと大都市が好きでロス、メキシコシティ、ベイルート、パリに住んできましたが、東京にも住みたいと思うくらい心惹かれています」と来日を喜んだ。
「レバノンは国内に深刻な対立を抱える国ですが、この映画では社会に対する希望が描かれているのが印象的でした」と本作の感想を伝える木村。ドゥエイリは「そういった感想を持っていただけて光栄ですが、現在のレバノンはまだまだ問題が山積しているんです」と返し、「個人的には、映画は社会に解決策を示すことができないと思っています。監督として僕らが唯一できるのは、観客の皆さんを映画の旅にいざなうこと」と自身の考えを述べる。さらに「しかし、僕はレバノンのベイルートにとても思い入れがあり、自分が必要とされていると感じています。なので、今後もレバノンに何度も帰るのでしょうね」と思いを語った。
法廷を舞台とする本作について「法律家が魅力的に描かれているのはうれしい」と話す木村は、「これはレバノンの本物の法廷で撮影されたんですか?」と質問を投げかける。「本物の裁判所です。レバノンでは職員たちの休暇の際に裁判所が空くので、そのときに撮影しました」と答えたドゥエイリは「撮影のため内壁に木製のパネルを貼ったのですが、皆さんが休暇から戻ってきたら、なんと『気に入ったのでこのままにしてください』と言われたんです」とエピソードを披露。これに木村は「日本の法廷では考えられないですね! 絶対怒られると思います(笑)。こういった温かい法廷があるというのは素晴らしいですね」と驚いた様子を見せた。
続いて木村が劇中に登場する女性の裁判官について尋ねると、ドゥエイリは「実際にレバノンには女性の判事が数人います。撮影のためにリサーチをしていたとき、ある裁判を傍聴したんですが、その際の判事が女性でした。それがとても自分の中で腑に落ちたので、設定に反映させたんです」と明かす。また「脚本家と脚本を書いているときに、レバノンの女性をポジティブに描きたいと話したんです。そういうわけで、主人公の妻たちも強くて美しいキャラクターにしました」と作品の裏側を語った。
「判決、ふたつの希望」は8月31日より東京・TOHOシネマズ シャンテほか全国にて順次ロードショー。
関連記事
ジアド・ドゥエイリの映画作品
リンク
- 「判決、ふたつの希望」公式サイト
- 「判決、ふたつの希望」予告編
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
木村草太 @SotaKimura
「判決、ふたつの希望」監督来日、レバノン法廷での温かい撮影エピソード明かす - 映画ナタリー https://t.co/SbjR5THAnb