水泳部に所属する高校2年生の女子・美波のひと夏の冒険を描く「子供はわかってあげない」。同作は当初2020年に公開される予定だったものの、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、約1年の延期を経て封切られた。上白石は映画を鑑賞したばかりの観客に向かって「私にとって大切な作品をこうして公開することができてうれしいです。本当にありがとうございます」と一礼。さらに「昨日は興奮して、原作のマンガと映画の台本をウルウルしながら読み返してしまいました。本当にこの映画の公開を心待ちにしてたんだなという気持ちとこの映画が私にとってこんなにも大切で、心の大きいところを占めてたんだなというのを感じました」と熱い思いを語った。
続いて話題は屋上での美波ともじくんの告白シーンに。舞台挨拶の登壇直前にこっそりと劇場の後ろからこのシーンを鑑賞していたという上白石は、撮影時のことを振り返り「初めて原作を読んだときから震えるほど素晴らしいシーンで、自分が演じることが決まって台本でそのシーンを読んだときは、胸がいっぱいになって、台本をスッと閉じて深呼吸をしてしまうくらいでした。恥ずかしくて大笑いした後に、泣いてしまうというお芝居を自分ができると思っていなくて、『無理なんじゃないか?』と思って現場に行ったけど、もじくんを見ていると泣けてくるような高揚感がありました」と明かす。細田も上白石らとともにこのシーンを劇場で観ており、その感想を「少しの恥ずかしさもありつつ、『温かいな』と一番に感じました。このシーンを観るだけで、撮影風景がよみがえってくるくらい、核になっているシーンだなと感じました」としみじみ話した。
2年前の撮影時には自身も高校生だった細田は、さらに「子供はわかってあげない」に出演した経験の大きさについてコメント。「今よりもまだまだ技術的にも精神的にも足りていないときにこの作品に出会って、沖田監督をはじめ、素敵なキャストの皆さんに出会い、特に美波ちゃんを演じた上白石さんの精神的な強さに一番影響を受けて感化されました。海に入ったり日に当たったり、毎日撮影があって疲れているはずだけど、そういう顔を見せずに現場でいつもキラキラしていて、自分もこうならなきゃと勉強になったし、自分の足りないところが見つかりました。精神的な面でこれからも自分の土台になるだろう作品になりました」と述べる。そんな細田の言葉に上白石は照れつつ「私はずっともじくんを演じる佳央太くんに支えられていました。あの美波を引き出してくれたのは、もじくんの懐の深さだと思っています」と感謝の思いを口にした。
千葉は沖田監督の過去作「モヒカン故郷に帰る」にも出演しており、同作のプロモーション活動が「子供はわかってあげない」への出演にもつながっているという裏話を披露。「『モヒカン故郷に帰る』の宣伝キャンペーンが終わって、みんなでホテルの部屋で飲んだ時、みんな、けっこう酔っぱらってたんですが、沖田さんが僕に『俺についてこい! 任せておけ』みたいなことを言ったんです(笑)。そうしたら、またこうして呼んでくださって、有言実行の男だなと思いました(笑)」と楽しそうに話した。ところが沖田監督はこのときのことについて「酔っぱらってまったく覚えていない(笑)」とのことで、「次の日、周りの人たちにすごい目で見られました。『昨日、千葉くんにすごいこと言ってたよ』って……」と苦笑。また作品に込めた思いについては「田島先生の原作がそもそも面白くて、上下巻でちょうどいい長さなので、このままやったら単に“映像化”になってしまう。原作のユーモアや懐の深い優しいところをなんとか映画に持ち込めないか? “映像化”ではなく“映画化”したい、田島先生の世界観を映画に持っていきたいなと思いを込めて作りました」と明かす。
さらにサプライズとして、田島からのイラスト付きの手紙が披露される場面も。田島の「全国公開、おめでとうございます。撮影のとき、沖田かんとくが笑いながら撮っていたのがおもしろかったなーとなつかしく思い出します。演者の皆さんにお会いする時、いつも挙動不審ですみません。やさしく対応してくださり、ありがとうございます。一生の思い出です」というメッセージに、キャスト一同と沖田監督は感激の様子を見せる。細田は「今は全部メールで、手紙なんてなかなかもらわないので余計にうれしいです」と笑顔、上白石も「この作品の生みの親である田島先生にこんな素敵なことを言っていただけて、素敵な絵まで……」と喜びをかみしめていた。
最後に上白石は「皆さんにとってもこの映画が大切な作品になってくれればうれしいです。ほんのりと活気を与える作品になっていると思うので、大切な人と観てほしいです。『教え合う』というのもこの映画の大切なテーマなので、皆さんもこの映画のことを教え合って、いい循環が生まれたらいいなと思っています」と呼びかける。沖田監督は「夏休みみたいに、長いような、短いような……そんな映画だと思います。いろいろと思うようにいかない夏ですが、少しでもこの映画で夏気分を味わっていただけたらと思います。誰かの夏におすすめしてください」と語り、舞台挨拶は幕を閉じた。
なおコミックナタリーでは原作者である田島と、沖田監督による対談を公開。映画を「宝物みたいな存在になりました」と語る田島と、田島作品の魅力を「独特の軽やかさ」と話す沖田監督。お互いにリスペクトし合う2人の掛け合いをご覧あれ。関連記事
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