映画ナタリー PowerPush - ナタリー×「龍三と七人の子分たち」

ジジいいね!北野武監督インタビュー

歳とっても趣味のように映画を撮っていたいよね

──悲劇と喜劇は背中合わせということですね。

お笑いってすごく悪魔的だから、たとえ葬式であっても足痺れてひっくり返ってるおじさん見れば笑っちまうんだよ。さっきも言ったけど、緊張する場面には必ずお笑いの悪魔が近付くから。逆に言えば、お笑いのシチュエーションに、さあ笑わせるぞと忍び込むのはシラける。漫才の舞台で最初に笑わせようとして入れたギャグがウケなかったときのシラけ方ったら……たまんなくて冷や汗が出てくるよ。まあそういうことを考えると、喜怒哀楽っていうのは思った通り描けないもの。こっちの意図通りになかなか行かないから面白いんだよね。

──北野監督は数学好きで知られています。今回の映画に当てはまる方程式みたいなものがあったら教えてください。

フィボナッチ数列を説明する北野武監督。

フィボナッチ数列だろうね。まあ知ってんだろうけど、うさぎを2匹持ってきて、1カ月後に1匹生まれるとして、1、1、2、3、5、8、13、21って上がっていって(しばらくフィボナッチ数列の説明が続く)、それを「黄金分割」って言うんだけど、バスのシーンまではとにかく1つひとつ足してきて、最後にバスに乗って車で追っかけてみれば、それが「黄金比」だと自分は言い張ってる。まあただの屁理屈だね(笑)。

──……なるほど。ご教示ありがとうございました。ところで、北野監督はまだこの龍三たちの年齢には達してないと思うんですけど……。

ああ、もうちょっとだね。

──こういう元気なジジイになりたいという思いはあるんでしょうか?

これはフィクションだから。でも藤さんや今回出てもらった出演者たちと話すと、本当に素敵な人たちなんだよ。いろんなことを知ってる。藤さんの趣味の焼き物なんて大したもんだよ。だから、ああいう感じにはなりたいと思うね。それと、ふと落語を勉強しないといけないなあと思うことがある。自分は基礎がないから、今時間があれば落語ばっかし聞いてんだけど、やっぱり積み重ねた芸はすごいなと思う。今の人よりも昔の人のほうがうまいってことが平気であるしね。歌舞伎や能と同じ古典芸能ということなんだろうね。まあ、本当は歳とっても趣味のように映画を撮っていたいのと、趣味のようにタレントをやっていたいなとは思うよね。

──趣味と言わず、10年後、20年後もたくさん映画を撮っていてください。

10年後は生きてねえと思うけどね。この状態だと5年がいいところだ(笑)。

演出する北野武監督。

「龍三と七人の子分たち」 2015年4月25日 全国公開

「龍三と七人の子分たち」

70歳の高橋龍三(藤竜也)は、「鬼の龍三」と呼ばれおそれられていた元ヤクザの組長。ある日、オレオレ詐欺に引っかかったことをきっかけに、元暴走族で構成される「京浜連合」と因縁めいた関係になる。詐欺や悪徳商法を繰り返す「京浜連合」にお灸を据えるため、博打好きの兄弟分「若頭のマサ」(近藤正臣)や寸借詐欺で生活する「はばかりのモキチ」(中尾彬)、戦争に行ったこともないのに今でも軍服に身を包む「神風のヤス」(小野寺昭)、ほかにも「早撃ちのマック」「ステッキのイチゾウ」「五寸釘のヒデ」「カミソリのタカ」という異名を持つ仲間たちと「一龍会」を結成。次々に「京浜連合」の活動を妨害していくが……。

スタッフ

監督・脚本・編集:北野武
音楽:鈴木慶一

キャスト

龍三親分:藤竜也
若頭のマサ:近藤正臣
はばかりのモキチ:中尾彬
神風のヤス:小野寺昭
早撃ちのマック:品川徹
ステッキのイチゾウ:樋浦勉
五寸釘のヒデ:伊藤幸純
カミソリのタカ:吉澤健
京浜連合ボス・西:安田顕
京浜連合・北条:矢島健一
京浜連合・徳永:下條アトム
龍三の息子・龍平:勝村政信
キャバクラのママ:萬田久子
マル暴の刑事・村上:ビートたけし

毎週更新!カウントダウン・インタビュー

「龍三と七人の子分たち」オフィシャルサイトにて掲載中
芸人 松村邦洋
モデル 今井華
タレント 武井壮
ナタリー×「龍三と七人の子分たち」
EXILE / 三代目 J Soul Brothers NAOTO
芸人 大久保佳代子
マンガ家 清野とおる
Dream / E-girls Aya
監督 北野武
北野武(キタノタケシ)

1947年1月18日、東京都生まれ。1989年、「その男、凶暴につき」で監督デビュー。以降「3-4x10月」「ソナチネ」「みんな~やってるか!」などの作品を世に送り出し、7作目の長編「HANA-BI」が、第54回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。日本映画としては39年ぶりの快挙となった。その後も、日英合作の「BROTHER」、第60回ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞した「座頭市」、映画への思いを描いた「監督・ばんざい」などコンスタントに作品を発表。近年では、“全員悪人”のバイオレンスエンタテインメント「アウトレイジ」「アウトレイジ ビヨンド」を手がけ、話題を呼んだ。「龍三と七人の子分たち」は、17作目の監督作品となる。