2014年の“ゴーストライター騒動”で話題になった佐村河内守のドキュメンタリー「FAKE」が、6月4日に劇場公開されることが決定した。
ゴーストライター騒動とは、聴覚障害を持ちながら「交響曲第1番《HIROSHIMA》」などを発表したことで知られていた佐村河内に関して、彼の作品は音楽家・新垣隆がゴーストライターとして作曲したものであると暴露された一連の出来事。新垣は会見にて、佐村河内が楽譜を書けないことや、実は耳が聞こえており通常の会話でやり取りしていたこと、18年間にわたり彼のゴーストライターを務めてきたことなどを語った。一方の佐村河内は主要楽曲が自身だけの作曲ではないことを認め、後の会見で謝罪。しかし新垣に対しては名誉毀損で訴える可能性があると公表し、その後はメディア出演を断り続けている。
監督は、オウム真理教の内部に迫る「A」「A2」以来15年ぶりに単独でメガホンを取った
今回の発表にあたり、森は「映画で大切なことは普遍性。単なるゴーストライター騒動をテーマにしているつもりはもちろんない」とコメント。さらに「視点や解釈は無数にある。一つではない。もちろん僕の視点と解釈は存在するけれど、最終的には観たあなたのもの。自由でよい。でもひとつだけ思ってほしい。様々な解釈と視点があるからこそ、この世界は自由で豊かで素晴らしいのだと」とメッセージを寄せている。
「FAKE」は東京・ユーロスペースにて公開されたのち、全国順次ロードショー。
森達也 コメント
肩書きの一つは映画監督だけど、4人の監督の共作である「311」を別にすれば、「A2」以来だから、「FAKE」は15年ぶりの新作映画ということになる。
もちろんこの期間、テーマなら下山事件に東京電力、被写体なら中森明菜や今上天皇など、撮りかけたテーマや被写体が皆無だったわけじゃない。何度か試行した。でも結局は持続できなかった。数年前くらいからは、もう二度と映画を撮ることはないかもしれないなと内心は思っていた。
でも今年、やっと形にすることができた。映画で大切なことは普遍性。単なるゴーストライター騒動をテーマにしているつもりはもちろんない。誰が彼を造形したのか。誰が嘘をついているのか。自分は嘘をついたことはないのか。真実とは何か。虚偽とは何か。この二つは明確に二分できるのか。メディアは何を伝えるべきなのか。何を知るべきなのか。そもそも森達也は信じられるのか。
…視点や解釈は無数にある。一つではない。もちろん僕の視点と解釈は存在するけれど、最終的には観たあなたのもの。自由でよい。でもひとつだけ思ってほしい。
様々な解釈と視点があるからこそ、この世界は自由で豊かで素晴らしいのだと。
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