本作は、オウム真理教の広報副部長・荒木浩とオウム信者たちにカメラを向け、日本中を震撼させたオウム事件の真相に迫ったドキュメンタリー「A」の続編。後継団体アレフ形成の舞台裏、日本各地に散らばり活動を続ける元信者たちの葛藤、地元住民による排斥運動などを通して、事件のその後を映し出していく。2001年山形国際ドキュメンタリー映画祭にて市民賞と特別賞を受賞した「A2」本編に、公開時カットとなったシーンが追加され、完全版として上映される。
「A2 完全版」の公開にあたり、森は「『A2』公開直前、アメリカで同時多発テロが起きた。僕の視点からは、オウムによる日本の変化が、世界に拡散したと感じた。それから15年が過ぎた。集団化は止まらない。むしろ加速している。その原点を知ってほしい」とコメントを寄せている。
A2 完全版
2016年6月18日(土)~24日(金)、7月9日(土)~15日(金)東京都 ユーロスペース
上映時間 21:00~23:12
料金:一般 1500円 / 学生 1300円 / シニア、会員 1200円
※「FAKE」半券提示による当日割引あり
森達也 コメント
「僕は最近のこの国が少し怖いです」
手にした一枚の年賀状の裏面には、印字された謹賀新年の横にボールペンでこの一文が書かれていた。差出人は、その後に公開した「A2」に登場する民族派右翼のメンバーだ。
この少し前、彼ら民族派右翼の思想的支柱でもある幹部の自宅に安岡卓治と呼ばれて、三人でキッチンで酒を飲んだ。飲み始めたときは緊張していたけれど、やがて酔いが回り、この時期に台頭し始めていた新しい歴史教科書を作る会について「極端な右傾化が始まっていて懸念します」と僕は言った。少しだけ目を細めるようにしてから、彼は静かに言った。
「あれは右翼じゃない。ファシズムだよ。とても危険だと俺も思うよ」
「A」そして「A2」を撮りながら、この国の急激な変化を肌で感じていた。それを言葉にすれば「集団化」だ。危機意識を高揚させた集団は連帯を求め、同調圧力を強める。異物を探して標的にする。共通の敵を探したくなる。(同じ動きをするために)号令を求める。つまり強いリーダーだ。
「A2」公開直前、アメリカで同時多発テロが起きた。僕の視点からは、オウムによる日本社会の変化が、世界に拡散したと感じた。
それから15年が過ぎた。集団化は止まらない。むしろ加速している。その原点を知ってほしい。気がつけば僕たちは、これほどに遠くに来てしまっている。
森達也の映画作品
関連商品
リンク
- ユーロスペース
※記事公開から5年以上経過しているため、セキュリティ考慮の上、リンクをオフにしています。
てれびのスキマ/戸部田 誠 @u5u
“「A2」本編に、公開時カットとなったシーンが追加され、完全版として上映”/森達也がオウム事件の本質探る、新カット加えた「A2 完全版」上映決定 - 映画ナタリー https://t.co/8dYyG9Wcu6