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「True Colors MUSICAL」リーガン・リントン インタビュー|多様な個性が持つ美しさで、人々の視点を“変換”する

枠組みの中で、自由を伸ばしていく

──今回、主人公を演じるアダム・ラッセル・ジョンソンさんは、本作でファマリー作品への出演は9本目となる、脳性まひの車椅子利用者です。総勢12名のキャストの中には、ぶどう膜欠損による全盲の女性、高校生の頃から演技を始めた自閉症の男性、外傷性脳損傷を患った元教諭の男性、多発性硬化症の女性など、先天性・後天性を含めさまざまな障害者アーティストがいます。世界観を作り上げるときに、そのような障害の重さや違いは支障になりますか。

ストーリーテリングイベントに登壇したリーガン・リントン。

私たちの考え方に、“フリーダム・インストラクチャー(枠組みの中の自由)”というのがあります。きちんと整理整頓された枠組みが台本であるとしたら、それを読んだうえでの解釈には、ある程度の自由が与えられるというものです。例えば“虹”を表現してくださいとお願いしたときに、“虹”という単語の聞こえ方、見え方、感じ方は人それぞれ違います。表現方法についても、歌や踊り、形態模写などさまざま。その違いを大切に、伸ばしていきたいんです。そうは言っても作品にはストーリーがありますから、シーンが何を表しているか、根幹を成す部分についてはしっかりと対話して共通理解を持ってもらい、きちんとした舞台を立ち上げます。

──具体的には、どんなところに俳優の自由さが表れますか。

例えばブロードウェイで一糸乱れぬラインダンスやロケットダンスが魅力の作品は多々ありますよね。ファマリーの作品にダンスシーンや群舞があったら、例えば視覚障害者のアーティストならまず身体に触れて、脚を上げる高さを覚えてもらうんです。まあ、結果的にちょっとずつ違うものができあがるのですが、それが個別の表現の美しさであるということを理解してもらうのがファマリーの考え方です。

周囲の目が障害者アーティストたちの自信を育てる

──リントンさんは過去に来日経験もありますが、日本の障害者アーティストを取り巻く状況にはどのような印象を持ちましたか。

13年前に初めて文化交流大使として東京、鎌倉を訪れました。そのあと、ビッグ・アイ(国際障害者交流センター)で「ファンタスティックス!」を上演。一昨年はワークショップ・プログラム「サマースクール」(日本財団DIVERSITY IN THE ARTS主催)でもビッグ・アイを訪れ、これまで3度日本に来ています。

──ビッグ・アイは、厚生労働省が障害者の“完全参加と平等”を実現するために置いたシンボル的な機関ですよね。

劇団ファマリー「ホンク!~みにくいアヒルの子~」デンバー公演より。©Michael Ensminger

そう。国際交流活動や、芸術・文化活動の場を提供して障害者たちの社会参加を促しているんですが、本当に素晴らしい団体です。当時、日本における障害者、特にパフォーマーについては自信が足りないなということを感じました。アメリカにはビッグ・アイのような機関はありません。だから日本には特別な土壌があるんだと感動したし、日本の障害者たちにはもっと自分たちを信じてほしいなと思った記憶があります。

──自信を持つ……そのためには具体的にどうしたら良いのでしょう。

自分の経験談でしか言えませんが、コミュニティーがあることが大切だと思います。私はファマリーで自分と同じような状況の人と一緒に何かをしたり、学んだりする中で、お互いをサポートするという体験をしました。また、障害のあるなしにかかわらず周囲の反応があることがどれほどの助けになるかを実感したんです。最初の一歩としては、勇気を持ってそういう場に入っていく、なければ自分で作る! そのくらいが良いのではないでしょうか。

──そのような経験を重ねた結果が、車椅子利用者の俳優でありながらファマリーを率いる芸術監督だったのですね。

私が世界で初めての車椅子利用の芸術監督かどうかはわかりませんが、私の姿を見て“夢はかなう”という確信を持ってもらえれば、自分の仕事を果たしたと言えるのではないかと思っています。ファマリーにしても、先ほどのキャプションシステムは、試行錯誤を経て今やファマリーのスタンダードな対話方法になっていますし、衣装やセットの見せ方など、経験から学んだことを生かした演劇が今はできている。前に進むことが大切なのだと思います。

人間は同じ反物で作られていない!

──日本では近年、“ダイバーシティ”という単語を耳にすることが増えました。リントンさんはダイバーシティという意識を社会はどう捉えていると感じますか。

劇団ファマリー「ホンク!~みにくいアヒルの子~」デンバー公演より。©Michael Ensminger

ウフフ(笑)。アメリカでも“ダイバーシティ”や“インクルージョン(含む)”といった言葉が一般化してきています。同じような流れなので、うれしくてニヤニヤしてしちゃった。英語には“We are all not cut from the same cloth(人間は同じ反物で作られていない)”という慣用句があって、もともと違う部分があるのが人であるという意味です。アメリカでは特に、個人が確立されていることに価値を置いています。でも私は、やはり個人ではできないこともあると思う。個人であることを理解して尊重し、そのうえで頼り合って1つのものを作り上げることが、生きていくということだと思うんです。

──なるほど。今回、ファマリーが招聘された「True Colors Festival」は、“超ダイバーシティ”を掲げていますが、フェスティバル参加にあたり「ホンク!~みにくいアヒルの子~」がどんな役割を担えればいいと思いますか。

このフェスティバルの何が素晴らしいかと言うと、本当に多種多様なアートが1カ所に集まることなんです。いろいろなタイプの芸術に触れて、それを自分の中に取り入れてほしいですね。その中でも「ホンク!~みにくいアヒルの子~」は、伝統的なミュージカル作品のユニークなブランドとして「みにくいアヒルの子」の新しい解釈を提示できればいいなと思います。この作品を観た人が障害者のことで何かを学んだり、自分のこれまで知らなかった姿に気づいたり、“変換”という言葉に思いを巡らせてもらえれば。先ほど、日本の障害者アーティストは自信がなさそうだったと話しましたが、この作品が彼らに少しの勇気を与え、コミュニティーを感じさせられるものになれたらうれしいです。

──さまざまなジャンルの作品を通して、自分自身のTrue Colorを見付けられたら素敵ですね。

その通り! それが芸術の美しいところで、作品をきっかけに知らなかった自分が自分の体内で生き始める。そうやって物事に対していろいろなアプローチを持つ人たちと一緒にいる、生きていることの素晴らしさを教えてくれるんです。

劇団ファマリー「ホンク!~みにくいアヒルの子~」デンバー公演より。©Michael Ensminger