「True Colors MUSICAL」リーガン・リントン インタビュー|多様な個性が持つ美しさで、人々の視点を“変換”する

ファマリー来日の立役者・鈴木京子と「True Colors CIRCUS」演出・栗栖良依がフェスティバルを通して伝えたい“多様性”

ここでは、ファマリーの企画・コーディネーターを務める鈴木京子と、5月に本フェスティバルで上演される「True Colors CIRCUS」を創作する栗栖良依のコメントを紹介。ファマリーとは10年来の付き合いがあるという鈴木、そして自身も障害のあるアーティストとして活動しながら、障害者とアートをつなげる活動を続けている栗栖、それぞれが語る“多様性”とは。

社会には多様な人がいて、それぞれが活躍できるポテンシャルを持っている

鈴木京子(「ホンク!~みにくいアヒルの子~」企画・コーディネーター)

鈴木京子

ファマリーを知ったのは、10年以上前のことです。その頃、日本では障害のある人のプロのミュージカル劇団はほとんどなくて、欧米はどうなのだろうと調べたところ、出会ったのがファマリーでした。すぐに劇団とコンタクトを取り、そのときやりとりをしていたのがリーガンです。2009年にアメリカ・デンバー パフォーミング アーツセンターで上演された「Man of La Mancha(ラ・マンチャの男)」を観劇し、その素晴らしさに驚きました。そこからリーガンをはじめ、ファマリーのメンバーと交流するようになり、私たちは日米間でさまざまなプロジェクトを協働してきました。リーガンの「人は誰でも可能性を持っている」という考え方は、出会った当初から変わっていません。「多様性を受容し、演劇を通じて世界を変える」というファマリーの根底にあるものも、ずっと変わりがないように感じます。

今回、ファマリーを本フェスティバルに招聘したのは、彼らの上演を通して「自分の可能性を信じさえすれば、障害の有無に関係なく“プロの役者・表現者”としてクオリティの高い舞台を創造し、活躍できる」ことを発信できると思ったからです。本作「ホンク!~みにくいアヒルの子~」は、子どもから大人まで楽しめるファミリー・ミュージカル。これから社会で活躍していく子どもたちに、社会には多様な個性を持つ人がいて、それぞれが活躍できるポテンシャルを持っていることを知ってほしいですね。

「障害があるからできない」のではなく、できなくしている・生きづらくしているのは社会のほう。なので、社会が内包する“障害”とは何かを考え、その“障害”をなくそうとする意識を障害のあるなしに関わらず全員で持つことが、本フェスティバルが掲げる“超ダイバーシティ”につながるのではないでしょうか。これまで“障害”や“多様性”について意識してこなかった人や、マイノリティと知り合う機会のなかった人たちが、このフェスティバルを通じて多くの出会いを得、たくさんの気づきと想像力、新しい価値観を見いだすことができれば、少しずつかもしれませんが、社会は変わっていけると思います。

鈴木京子(スズキキョウコ)
2001年から国際障害者交流センター ビッグ・アイの事業企画に携わり、2011年に事業プロデューサーに就任。障害のある人が、舞台芸術に表現者や鑑賞者として参加できる舞台の企画・制作を行っている。「True Colors Festival」では、「ホンク!~みにくいアヒルの子~」の企画・コーディネートを務める。著書に「インクルーシブシアターを目指して『障害者差別解消法』で劇場はどうかわるか」(ビレッジプレス)。

目指したいのは、自分のことを、そして誰かのことも、好きだと言える社会

栗栖良依(「スローレーベル」ディレクター、「True Colors CIRCUS」クリエイティブプロデューサー)

栗栖良依

今回の参加は、シンガポールで2018年に開催された、「アジア太平洋障害者芸術 True Colours Festival」のアウトドアステージで日本発の作品をプロデュースしたことがきっかけです。「True Colors Festival」は、国籍や分野など、多様なバックグラウンドを持つ個人や団体と友情を築くことができるのが魅力だと思っています。参加を通して、1人でも多くの方と交流していきたいですね。今後のプログラムの中で気になっている演目は、5月に開催予定の「True Colors FASHION」。PARCOという渋谷を代表するファッションビルを丸ごとジャックして行われる企画なのですが、ファッションに敏感な層に向けて、どれだけ“ダイバーシティ”というメッセージを刺してきてくれるか、楽しみであり期待しています。

「True Colors CIRCUS」では、私はクリエイティブプロデューサーとして、オーディションで選抜した市民パフォーマー約70名と共に野外サーカス作品を創作します。既存の“サーカス”という常識を超えた作品を作ることで、観客それぞれの“当たり前”という息苦しさの壁を壊すことが、公演を通しての目標です。私の思う“多様性のある社会”は、1人ひとりが自分のことを好きだと言える社会。そして、誰かのことも好きだと言える社会。日本社会は今、そこから始めなくてはならないと感じています。現在、サーカスの基礎トレーニングのフェーズが終わり、いよいよ年明けからクリエーションに入っています。まだまだ準備段階ですが、パフォーマーたちの姿を見て、すでに「面白い作品になりそうだ!」という根拠のない手応えが自分の中にあります。ぜひ、楽しみにしていてください!

栗栖良依(クリスヨシエ)
1977年東京都生まれ。パラクリエイティブプロデューサー / ディレクター。NPO法人スローレーベル代表。東京造形大学を卒業後、イタリアのドムスアカデミーに留学し、ビジネスデザインの修士号を取得する。2010年、骨肉腫を発症し、右下肢機能全廃。2011年に国内外で活躍するアーティストと障害者をつなげた市民参加型ものづくり「スローレーベル」を設立。「ヨコハマ・パラトリエンナーレ」の総合ディレクターを務め、2016年リオ・パラリンピック閉会式「旗引継ぎ式」ではステージアドバイザーとして、2018年からは東京2020開会式・閉会式 総合プランニングチームクリエイティブディレクターとして、キャスティングや構成演出などに携わるなど、障害者、アーティスト、市民、専門家をつないで障害の有無に限らず創造的な生活のできる社会作りに尽力している。第65回横浜文化賞「文化・芸術奨励賞」、タイムアウト東京 LOVE TOKYO AWARDS 2016 face of tokyo受賞。

「True Colors Festival」プログラムラインナップ

障害・性・世代・言語・国籍など、あらゆる多様性を包括する「True Colors Festival」では、2019年9月にスタートしてから、参加者の常識を打ち破る企画が行われ続けている。ここでは、7月の閉幕に向けて一層盛り上がりを見せている本フェスティバルの、これから観ることができるプログラムのラインナップを紹介する。

「True Colors Festival」プログラムラインナップ
「True Colors DIALOGUE ママリアン・ダイビング・リフレックス / ダレン・オドネル『私がこれまでに体験したセックスのすべて』」

2020年3月5日(木)~8日(日)
東京都 スパイラルホール

「True Colors DIALOGUE ママリアン・ダイビング・リフレックス / ダレン・オドネル『私がこれまでに体験したセックスのすべて』」©Katsumi Omori

カナダのアーティスト集団であるママリアン・ダイビング・リフレックス / ダレン・オドネルが、65歳以上の出演者へのセックスに関するインタビューやワークショップをもとに立ち上げる作品。2010年にカナダ・トロントで初演されてから、ドイツ、スイス、アメリカなど各国で創作されてきた本作が、今回日本版として登場する。ママリアン・ダイビング・リフレックスが、公募で集まった日本人の参加者と作り上げた作品に注目しよう。

「True Colors SIGN デフ・ウェスト・シアター『オルフェ』」

2020年4月24日(金)~26日(日)
東京都 シアタートラム

「True Colors SIGN デフ・ウェスト・シアター『オルフェ』」©Josh Renaud

1991年に聴覚障害者を中心に設立されたカンパニー、デフ・ウェスト・シアターの16年ぶりの来日公演。ジャン・コクトーの戯曲「オルフェ」をもとにした新作を発表する。

原作:ジャン・コクトー
演出:ディーナ・セレノウ
美術:ジェームズ・マルーフ
出演:デフ・ウェスト・シアター

「True Colors MIX」

2020年4月

「True Colors FASHION」

2020年5月

「True Colors CIRCUS」

2020年5月

演出:栗栖良依

「True Colors THEATER」

2020年6月

「True Colors CONCERT」

2020年7月18日(土)・19日(日)
東京都 東京ガーデンシアター