「東京芸術祭 2022」静岡・豊橋・タイ・京都で生まれた注目作をアーティストのメッセージと共に (2/2)

FTレーベル「An Imperial Sake Cup and I ー恩賜の盃と私」

タイの歴史学者チャーンウィット・カセートシリによるレクチャーパフォーマンス。レクチャーパフォーマンスとは、演出家や映像作家などが舞台に立ち、作品について直接観客に語りかけるもので、本作ではカセートシリが1964年に当時の皇太子(のちの平成の明仁天皇)夫妻から賜った酒盃を軸に、自身の個人史と、タイと日本の関係性について語る。

「An Imperial Sake Cup and I」初演より。(Photo:Santiphap Inkong-ngam)

「An Imperial Sake Cup and I」初演より。(Photo:Santiphap Inkong-ngam)

「An Imperial Sake Cup and I」初演より。(Photo:Santiphap Inkong-ngam)

「An Imperial Sake Cup and I」初演より。(Photo:Santiphap Inkong-ngam)

「初演は盛況で、観客のほとんどが若い人でした」
チャーンウィット・カセートシリ

──本作は2020年にチェンマイで初演されました。初演時、印象的だったことがあれば教えてください。

いわゆるレクチャーパフォーマンスをするのは、このときが初めてでした。普段は、伝統的な方法で、私のクラスの生徒たちに教えているだけなのです。しかし、チェンマイのMAIIAM現代美術館で行った初演は、それとは違っていました。私はかなり緊張して、何度も失敗してしまいました。でも、観客の皆さんはとても親切で、気に入ってくれたようです。
それと、私のチーム、つまりエグゼクティブプロデューサーのグリディヤ・ガウェウォンや彼女の仲間たちが、とても優秀だったことです。
公演は盛況で、多いときには100人以上の観客が集まりました。そのほとんどが若い人たちでした。

チャーンウィット・カセートシリ

チャーンウィット・カセートシリ

──今回の「東京芸術祭 2022」での上演で変わる部分、あるいは特に意識していることや期待していることがあれば教えてください。

あまり大きな変化はないと思います。言葉選びやナレーションを改善するくらいでしょうか。もっと簡潔になり、少し短くなる予定です。

──「An Imperial Sake Cup and I -恩賜の盃と私」を楽しむうえで、ヒントになるようなキーワードがあれば教えてください。

平成の明仁天皇、上皇后両陛下は退位されましたね。
末長くお元気で。
またお目にかかりたいです。
Kimi Ga Yo

プロフィール

チャーンウィット・カセートシリ

1941年生まれ。タイの歴史学者。

公演情報

FTレーベル「An Imperial Sake Cup and I ー恩賜の盃と私」

「An Imperial Sake Cup and I -恩賜の盃と私」チラシ

2022年10月28日(金)~30日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト

構成・出演:チャーンウィット・カセートシリ
演出:ティーラワット・ムンウィライ(カゲ)、ノンタワット・ナムベンジャポン

FTレーベル akakilike「捌く–Sabaku」

「捌く」は2017年に初演され、2018年に再演もされているakakilikeの代表作の1つ(参照:倉田翠のakakilikeが、「捌く」で男性10人のソロダンス)。初演時は“みんな一緒で、どうやってソロになるか。男性10人のソロダンス作品。”というキャッチコピーが付けられ、出演者の身体のありようだけで“人がいる”ということをリアルに表現しようとした。今回上演されるのは、コロナ禍で2度中止になっていた新バージョンとなる。

「捌く」2017年初演より。(Photo by Kai Maetani)

「捌く」2017年初演より。(Photo by Kai Maetani)

「捌く」2017年初演より。(Photo by Kai Maetani)

「捌く」2017年初演より。(Photo by Kai Maetani)

「作品の蓄積、分厚さを見せられたら」
倉田翠

──本作は2017年に初演され、上演が重ねられてきました。これまでの上演や稽古で、印象的だったことがあれば教えてください。

2017年京都、2018年東京で上演された「捌く」は、乗り打ち1日3ステージという、かなり過酷なスケジュールで行われていました。
すごい勢いで仕込み、ゲネプロも入れると1日4回「捌く」をやり、一瞬でバラす。その後作品中に使用している牛肉をさばいてみんなで食べる。どこからともなく集まってきて、始まったと思ったらもう解散、まるで夏の台風みたいな作品だったなと思い出します。

倉田翠

倉田翠

──今回は、東京芸術劇場 シアターウエストで上演されます。今回の上演で変わる部分、あるいは特に意識していることを教えてください。

2020年に上演される予定だった「捌く」のために、メンバーを新たに追加しています。
新しいメンバーは、稽古はひたすらしてきましたが「捌く」の本番の舞台にまだ一度も立っていません。ただ、3年間過酷な「捌く」の中に立たされてきた蓄積は確実にあります。その分厚さを見せられたらと思っています。

──「捌く–Sabaku」を楽しむうえでヒントになるようなキーワードがあれば教えてください。

「捌く」では、同時多発的に、いろいろなことが起こっています。見逃してしまう時間も多々あるかと思います。一点に集中して見るか、全体を捉えて見るか、見方によってかなり印象が変わる作品かと思います。
また、「みんな一緒で、どうやってソロになるか」
このことをずっとやってきています。簡単に1人になんてなれない、自分はこの場所にどう存在できるのか、お客様も自分だったらどう居るかな?などと考えて観てもらうのも楽しいかもしれません。

プロフィール

倉田翠(クラタミドリ)

1987年、三重県生まれ。演出家、振付家、ダンサー。akakilike主宰。

公演情報

FTレーベル akakilike「捌く–Sabaku」

「捌く-Sabaku」チラシ

2022年10月29日(土)・30日(日)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト

演出・構成:倉田翠
出演:今村達紀、石原菜々子、大石英史、黒田健太、竹ち代毬也、田辺泰信、狭間要一、平澤直幸、前田耕平、森本圭治、諸江翔大朗、山本和馬、よしたく / 寺田みさこ