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OSK日本歌劇団「レビュー春のおどり」新トップスター・桐生麻耶インタビュー / 桐生&楊琳&舞美りら座談会|舞台に立つという点で、私の中に変化はない

2018年8月1日、OSK日本歌劇団の新トップスターに桐生麻耶が就任することが発表された。1922年に松竹楽劇部として誕生したOSKは、スピード感あふれるパワフルな日舞と洋舞を得意とする、大阪出身の歌劇団。その頂点に立ち、50名超のメンバーを統率する桐生は、歌や芝居、ダンスの技術はもちろん、王子と言うよりアニキと呼びたくなるような懐の深さを持った、スケールの大きな男役だ。桐生の劇団に対する強い思いと、その思いを共に支える、楊琳と舞美りらに、新生OSKの魅力を語ってもらった。

取材・文 / 熊井玲 撮影 / 川野結李歌

桐生麻耶インタビュー

出演者全員のエネルギーが出せるように

──2014年から4年にわたりOSK日本歌劇団を率いてきた高世麻央さんが、昨年卒業されました。高世さんをもっとも近くで支えてきた桐生さんは、そのときにもうトップ就任の心の準備はできていたのでしょうか?

桐生麻耶

実はあんまりそうでもなくて。会社の方に呼ばれたときに「辞めてください」と言われるか「トップになってください」と言われるか、どちらかだなと、なんとなく思っていたんです。それが後者だったので、「わかりました」とお引き受けした感じです。トップになったことで、私の発言や行動がOSKのそれとして見られるということを、常に意識しないといけないな、と思うようにはなりました。ただ舞台に立つという点では、私の中で一切変化はないです。トップとしての覚悟がどうっていうことより、劇団全体のことが気になる。「レビュー春のおどり」に関して言えば、41人の出演者がいますから、その子たち全員のエネルギーがなるべくいい形で出せるように、稽古から積み上げていきたいと、今はそのことばかり気になっています。

──OSKの歴代トップスターを振り返ると、実にさまざまなタイプの方がいらっしゃいました。本作のチラシには“唯一無二の男役”というキャッチコピーで桐生さんがご紹介されていますが、桐生さんにとってOSKのトップスターとはどのようなイメージですか?

2タイプいると思うんです。那月峻さん、桜花昇ぼるさん、高世さんは王道のトップスターさんだったと思うんですけど、大貴誠さんは職人というか、“魅せる”ことに長けている(と言って立ち上がり両手を広げ、男役っぽいポーズを取ってみせる)……あ、立っちゃった!(笑) でもこうやって「額縁の中にいる私を見て」っていうタイプのトップさんと、額縁から飛び出すタイプのトップさんがいるなと思っていて、私はどちらかと言うと飛び出すほうかなと。そういうイメージはできています。

──わかりやすいです(笑)。トップさんとしての訓辞と言いますか、改めて皆さんに何かお話されたりはしましたか?

しました。ただ具体的に「こうしなさい」っていうことではなくて、「舞台人として生きたほうがいい」ということを伝えました。(学年を意識することが)当然の習慣になっているので、自分たちの立場について考えることはもちろんあると思うけれど、「今、自分がどういう立場に置かれているか」という問題は自分自身の問題だから、それは自分の時間の中で考えればいいこと。お稽古場に来たら、自分は作品にとって何ができるのかを考えるほうにシフトチェンジしてほしい……そういったことは常に伝えていますね。よく言うことですが、お客様の前に立ったら学年の上下はまったく関係ないですし、全員が本当の笑顔でいられるほうがいいですから、それぞれが喜怒哀楽をなるべく出しやすくなるようにしたい。すべては舞台を観に来てくださったお客様のために、なくしていい遠慮や気遣いはなくしていこうと思っています、小さなことですけど。

──でもそういう自由な空気を作り、維持するのは大変なことですよね。上に立つ人の、懐の広さによると言いますか……。

桐生麻耶

本当にそうですね! トップの人によって劇団の空気が変わるっていうことは、私も体感してきました。なので、私も自分の思いを押し付けることにならないように、なるべくみんなに理解してもらえるような言葉や行動を取ろうと心がけていて。やっぱりみんな舞台がしたくてOSKに入ってきたわけですから、そこさえ自分が見失わなければ、すぐにではなくても数年後にでも、私の言葉が届く日が来るんじゃないかなって焦らずに考えています。私はそのためにトップというお役をいただいたんじゃないかと。ものを作り上げるつらさはあっていいと思うんですけど、人としての不自由さはいらないなと思うんですよね。だって、普段の生活で生きづらさを感じている方たちが、舞台を観てしばし夢を見るわけですから、そこに現実が見えてはいけないと思うんです。

トップが目標ではなかった

──トップスターとしてすでに達観した目線をお持ちの桐生さんに改めて伺うのは憚られますが、桐生さんも歌劇やスターに憧れてOSKに入団されたと思います。ご自身としては、トップスターに就任されたことで達成感を感じている部分はあるのでしょうか?

弁慶を演じる桐生麻耶。提供:松竹株式会社

これは言っていいのかわかりませんが、私はトップになることが夢ではなくて、ただお芝居がしたくてOSKに入ったんです。でもOSKでお芝居のセリフをもらうためにはトップに近付いていくしかない……と思い、歌をすごくがんばればセリフにたどり着けるんじゃないかと考えたと言いますか(笑)。だから結果として今こういう形になって、「ありがとうございます」という思いはあるんですけど、ずっとそこだけを目指してきたわけではないんです。それよりは、私が舞台に立つことで誰か1人でも「OSKを観に来てよかった。OSKっていい劇団だね」と思ってくれたらうれしい。そういう思いでやってきたので、歴代のトップスターさんとは、ちょっとスタンスが違うのかもしれません(笑)。

──桐生さんらしい発言だと思います。昨年「春のおどり」で取材させていただいたときは、撮影の間もあえて三枚目のような役割を演じて、下級生の方々を笑顔にしてくださいました。そのときの印象とは今日、少し違う感じがします。

世間で言うトップスターって神々しい存在だと思うので、私の場合、そこは特別意識してそうならないといけないなって思っているんです(笑)。でも舞台で意識し続けると面白くなくなってしまう気がするので、ギリギリのラインで攻められたらなと思っています。例えば今回、第1部の日舞「春爛漫桐生祝祭」でちょっとしたお笑いっぽいシーンがあるんです。私も出たかったんですけど、「さすがにトップスターとしてはあかんやろ」という話になって(笑)。そういう“調整”はありつつも、これからもいろんなテイストのシーンをお見せできたらと思います。

──楽しみにしております(笑)。そして今年はOSK日本歌劇団の創立97周年。いよいよ100周年が目前となってきましたが、その点について意識されていることはありますか?

「巴里のアメリカ人」より。提供:OSK日本歌劇団

私たちは本当に、多くの方に助けていただいているんですよね……。だからこそ私たちは自分たちの芸を磨き、お客様に楽しんでいただけるように、満足していただけるようにって自分たちの芸を“捧げる”。自分で選んだ仕事ですけれど、ちょっと仕事とは違うチャンネルになってきてるなって思います。

──そんな桐生さんの背中を、41人の出演者たちが追いかけるわけですね。新生OSKを舞台で早く観たいです。

そうですね。出演者1人ひとりにとっても勝負のときだと思いますし、それぞれとしっかり向き合って臨みたいと思います。

OSK日本歌劇団「レビュー春のおどり」
2019年3月28日(木)~31日(日)
東京都 新橋演舞場
2019年4月13日(土)~21日(日)
大阪府 大阪松竹座
第1部「春爛漫桐生祝祭」

作・演出・振付:山村友五郎

第2部「STORM of APPLAUSE」

作・演出・振付:平澤智

出演:桐生麻耶、楊琳、虹架路万、舞美りら、愛瀬光、白藤麗華、遥花ここ、華月奏、翼和希、千咲えみ、城月れい ほか

桐生麻耶(キリュウアサヤ)
5月11日生まれ、栃木県出身。175cmの長身と繊細な演技、ダイナミックな歌とダンスが目を引く男役スター。1995年に日本歌劇学校に入学、97年にOSK日本歌劇団に入団する。03年に劇団解散の危機に見舞われた際は、OSK存続の会メンバーとして自らも街頭で署名活動を行った。近年の主な主演作に「カンタレラ2016~愛と裏切りの毒薬~」(16年)、「巴里のアメリカ人」(18年)「第39回たけふレビュー~GERSHWIN NIGHT~」(18年)など。18年8月にトップスターに就任。