「ジャポニスム2018:響きあう魂」 PR
2019年2月26日
フランスと日本の160年にわたる長い関係の中で、幅広い意味での“文化的蓄積”がかなりあるということを、今回の「ジャポニスム2018:響きあう魂」で改めて実感しました。私がフランスに留学したのは1983年ですが、当時すでに柔道や空手、合気道など100万人以上の武道家がいて、80年代後半にはフランスのテレビが民営化されたことにより、「ドラゴンボールZ」や「キン肉マン」「北斗の拳」「セーラームーン」「ポケットモンスター」などのアニメが入ってきました。さらに日本食や日本映画のファンも多く、電車に乗ればフランス語訳された村上春樹の小説を読んでいる人がたくさんいて、現代アートの面では10年に村上隆さんがベルサイユ宮殿で展覧会をされました。そういったフランスでの日本文化受容に対する層の厚さと、「ジャポニスム2018:響きあう魂」がフランスの中心地であるパリで開催されたこともあって、フランス人には非常に入りやすいプロジェクトだったと思いますね。
動員という点では、1月下旬までの時点で展示だけで100万人以上、エッフェル塔のライトアップを観た人が約40万人、さらに個人や自治体などによる参加企画で約105万人を動員しており、最終的には合計で300万人を超えるのではないでしょうか。15年のミラノ国際博覧会で日本館の動員が約280万人だったそうですから、それに匹敵する、あるいはそれを超える動員と言えます。
私は18年8月末から11月頭までフランスに出張しており、その期間はちょうど舞台公演なども多い時期だったので実際にいくつかの舞台作品を観ました。雅楽や文楽、歌舞伎など日本の伝統芸能はどれも連日満員で反応がとてもよかったですね。野田秀樹さんの「贋作 桜の森の満開の下」については言葉のウィットや展開の早さが伝わるかな?と思いましたが、布で見せる展開など演出力が優れているうえ、実力派俳優が出演されたこともあり、感動したと言ってくださる方が多かったです。また今回、フランス側の共催団体と協議する中で、フェスティバル・ドートンヌ・パリや劇場から、岩井秀人さんやタニノクロウさんなどいろいろな方の名前が挙げられたことで“現代演劇シリーズ”にはさまざまなアーティストがそろいました。大多数の公演がほぼ満席状態でしたが、個人的には木ノ下歌舞伎にえらく感動しましたね。古典の「勧進帳」を生かしながら、あそこまで換骨奪胎してしまうなんて。カーテンコールが5、6回起こっていましたよ。それから、岩井秀人さんの「ワレワレのモロモロ ジュヌビリエ編」。フランスでは今、黄色いベスト運動に象徴されるように、格差社会や移民問題に対する不満が爆発する動きが起きていますが、近隣に移民が多く住むジュヌビリエ劇場はまさにそういった場所にある、“文化の社会包摂”に取り組んでいる劇場です。そこに岩井さんが長期滞在し、出会ったプロとアマチュアのフランス人俳優たちの体験を語らせて作品を立ち上げた。現在のフランス社会が抱える問題を、異邦人である岩井さんが浮き彫りにした。そのことに驚かされました。
「ジャポニスム2018」による波及効果についてはまだはっきりした検証はできていませんが、フランスから日本を訪れる観光客数がすでに伸びています。フランス人が海外旅行の計画を立てるのは半年とか1年前だから、「ジャポニスム2018」の影響がより顕著になるのは今年夏以降かもしれません。ただ、当初の狙いだった、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたインバウンドへの促進には貢献できているのではないかと思います。
今後、「ジャポニスム2018」のようにまた海外で日本文化を多角的に打ち出すプロジェクトがあれば、今回は若干数が少なかった、音楽方面の魅力をもっと打ち出せるかなと。また落語とか、囲碁や将棋なども可能性がありますよね。今後は米国と東南アジアでもこのプロジェクトが展開される予定です。その足がかりとして、今回の「ジャポニスム2018」が成功裏に終わりつつあり、私としてはよかったなとホッとしています(笑)。
2019年2月27日更新
フランスと日本の160年にわたる長い関係の中で、幅広い意味での“文化的蓄積”がかなりあるということを、今回の「ジャポニスム2018:響きあう魂」で改めて実感しました。私がフランスに留学したのは1983年ですが、当時すでに柔道や空手、合気道など100万人以上の武道家がいて、80年代後半にはフランスのテレビが民営化されたことにより、「ドラゴンボールZ」や「キン肉マン」「北斗の拳」「セーラームーン」「ポケットモンスター」などのアニメが入ってきました。さらに日本食や日本映画のファンも多く、電車に乗ればフランス語訳された村上春樹の小説を読んでいる人がたくさんいて、現代アートの面では10年に村上隆さんがベルサイユ宮殿で展覧会をされました。そういったフランスでの日本文化受容に対する層の厚さと、「ジャポニスム2018:響きあう魂」がフランスの中心地であるパリで開催されたこともあって、フランス人には非常に入りやすいプロジェクトだったと思いますね。
動員という点では、1月下旬までの時点で展示だけで100万人以上、エッフェル塔のライトアップを観た人が約40万人、さらに個人や自治体などによる参加企画で約105万人を動員しており、最終的には合計で300万人を超えるのではないでしょうか。15年のミラノ国際博覧会で日本館の動員が約280万人だったそうですから、それに匹敵する、あるいはそれを超える動員と言えます。
私は18年8月末から11月頭までフランスに出張しており、その期間はちょうど舞台公演なども多い時期だったので実際にいくつかの舞台作品を観ました。雅楽や文楽、歌舞伎など日本の伝統芸能はどれも連日満員で反応がとてもよかったですね。野田秀樹さんの「贋作 桜の森の満開の下」については言葉のウィットや展開の早さが伝わるかな?と思いましたが、布で見せる展開など演出力が優れているうえ、実力派俳優が出演されたこともあり、感動したと言ってくださる方が多かったです。また今回、フランス側の共催団体と協議する中で、フェスティバル・ドートンヌ・パリや劇場から、岩井秀人さんやタニノクロウさんなどいろいろな方の名前が挙げられたことで“現代演劇シリーズ”にはさまざまなアーティストがそろいました。大多数の公演がほぼ満席状態でしたが、個人的には木ノ下歌舞伎にえらく感動しましたね。古典の「勧進帳」を生かしながら、あそこまで換骨奪胎してしまうなんて。カーテンコールが5、6回起こっていましたよ。それから、岩井秀人さんの「ワレワレのモロモロ ジュヌビリエ編」。フランスでは今、黄色いベスト運動に象徴されるように、格差社会や移民問題に対する不満が爆発する動きが起きていますが、近隣に移民が多く住むジュヌビリエ劇場はまさにそういった場所にある、“文化の社会包摂”に取り組んでいる劇場です。そこに岩井さんが長期滞在し、出会ったプロとアマチュアのフランス人俳優たちの体験を語らせて作品を立ち上げた。現在のフランス社会が抱える問題を、異邦人である岩井さんが浮き彫りにした。そのことに驚かされました。
「ジャポニスム2018」による波及効果についてはまだはっきりした検証はできていませんが、フランスから日本を訪れる観光客数がすでに伸びています。フランス人が海外旅行の計画を立てるのは半年とか1年前だから、「ジャポニスム2018」の影響がより顕著になるのは今年夏以降かもしれません。ただ、当初の狙いだった、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたインバウンドへの促進には貢献できているのではないかと思います。
今後、「ジャポニスム2018」のようにまた海外で日本文化を多角的に打ち出すプロジェクトがあれば、今回は若干数が少なかった、音楽方面の魅力をもっと打ち出せるかなと。また落語とか、囲碁や将棋なども可能性がありますよね。今後は米国と東南アジアでもこのプロジェクトが展開される予定です。その足がかりとして、今回の「ジャポニスム2018」が成功裏に終わりつつあり、私としてはよかったなとホッとしています(笑)。